『こつこつ』は本当に時代遅れなのか?院長コラム
2026/04/01 現代社会
先日、ネットニュースを見ていた際に、「日本企業の美徳『こつこつ』は思考停止と同じである――アジアで日本製のプレゼンスが低下した根本原因」というタイトルの記事が目に留まりました。日頃から私は、一つのことを「こつこつ」と真面目に追求する姿勢こそが、人生や仕事の成功の秘訣であると考えています。そのため、まさに正反対の主張を掲げるこのタイトルに強い違和感を覚え、思わず記事を読み進めました。
記事の内容は、現代のようにモノが溢れる社会では、従来のように製品を「こつこつ」と改良し続けることで生まれる技術革新よりも、「効率」や「生産性」を重視すべきだというものでした。品質や機能の差別化が難しくなった現在、最小の投資で最大の利益を上げることを優先しなければ、グローバル競争には勝てない。また、「こつこつ」と努力する価値観は、目の前のことに集中しすぎるあまり、大局的な戦略や目的の設定を妨げるという指摘でした。
しかし私は、この主張には大きな違和感を覚えました。目の前の取り組みが社会に必要とされているかどうかを考えることは当然であり、それは「こつこつ」という姿勢の問題ではなく、戦略の問題です。また、「グローバル競争に勝つ」という言葉も、その基準によって意味が大きく異なります。一般的にはアメリカのIT企業群が勝者と見なされるのでしょうが、それが本当に「勝ち」と言えるのか、私は疑問に思います。
もし企業の目的が単に利益の最大化であるならば、巨額の利益を上げるIT企業は確かに勝者でしょう。しかし本来、企業とは社会に役立つ製品やサービスを提供し、人々を幸せにする存在であるはずです。そしてその過程で、従業員とその家族を守り、最終的には経営者も含めて関わるすべての人が幸福になることが本来の姿ではないでしょうか。
現在「勝者」とされる企業は莫大な利益を生み出していますが、その裏で従業員が不安定な環境に置かれている現実もあります。単に利益や規模だけで「勝者」と評価することには、私は違和感を覚えます。
私は、人を幸せにする企業こそが本当の意味で価値ある存在であり、そのための経営が日本企業の進むべき方向であると考えています。そしてその基盤となるのが、やはり「こつこつ」と積み重ねる姿勢なのです。
確かに現代社会では、一定の品質の製品は比較的安価に手に入るようになりました。これは効率化と大量生産の成果であり、日本もかつて高度経済成長期にこのモデルで成功を収めました。しかし現在では、中国や東南アジア諸国がその役割を担い、日本は同じ土俵で競争することが難しくなっています。
この現状を踏まえると、日本はすでに大量生産の時代を卒業したと考えるべきではないでしょうか。これから目指すべきは、低価格・大量生産ではなく、「高品質・少量生産」です。私はこれを15年前のコラムで「グローバル・ニッチ」という言葉で表現しました。世界が豊かになる中で、本当に価値のある製品は高価格であっても評価され、求められます。購入者は限られていても、世界市場を相手にすれば十分な利益を確保できるのです。
その後の15年で、ITの進化は想像以上に進みました。金融や事務などデジタル化可能な業務は急速にITへ置き換わり、人の仕事は減少しています。一方で、建築や物流、製造、医療、接客といった「リアルな変化」を伴う仕事の重要性は、むしろ高まっています。
そこで鍵となるのが、人の技術、すなわち「匠の技」です。高品質な製品は単なる効率化からは生まれません。地道な改良と経験の積み重ねによって初めて生み出されるものです。ここにこそ、日本の強みがあります。
また近年の国際情勢も、この方向性の重要性を示しています。関税政策の変化により、大量輸出に依存したビジネスは大きなリスクを抱えることが明らかになりました。一方でイタリアのように、高付加価値製品を中心とした経済は影響を受けにくい構造を持っています。代替の効かない製品は、価格が上がっても需要が維持されるため、高い利益率を確保できるのです。
日本も今後は、この「高付加価値・高利益率」のモデルへと転換すべきです。少子高齢化により労働人口が減少する中で、従来の大量生産型モデルには限界があります。
そして、その根底にあるのが「こつこつ」とした努力です。高付加価値は一朝一夕には生まれません。継続的な改良と現場での積み重ねによってのみ実現されます。実際、日本の半導体産業も完成品では苦戦していますが、素材や装置分野では依然として世界トップクラスの競争力を維持しています。これらはすべて、「こつこつ」とした地道な改良の成果です。
利益率を生み出す源泉は現場にあります。現場を知らず、数字だけで経営を行う姿勢では、本質的な競争力は生まれません。日々ものづくりに向き合う人々こそが改善を積み重ね、新たな価値を創造していくのです。
私自身も、大学卒業以来、矯正歯科治療に特化し、「こつこつ」と治療技術の改良を続けてきました。装置も自ら工夫し、手作りすることで使いやすさとコストの両立を実現しています。規模拡大を追求しないことでリスクを抑えつつ、質の高い医療を提供し、スタッフにも満足してもらえる環境を整えることができています。
今こそ日本は、規模を追うビジネスモデルから脱却し、「こつこつ」とした積み重ねを基盤とする高付加価値・高利益率のモデルへ転換すべき時です。
その鍵を握るのは、やはり「こつこつ」という姿勢なのだと思います。
記事の内容は、現代のようにモノが溢れる社会では、従来のように製品を「こつこつ」と改良し続けることで生まれる技術革新よりも、「効率」や「生産性」を重視すべきだというものでした。品質や機能の差別化が難しくなった現在、最小の投資で最大の利益を上げることを優先しなければ、グローバル競争には勝てない。また、「こつこつ」と努力する価値観は、目の前のことに集中しすぎるあまり、大局的な戦略や目的の設定を妨げるという指摘でした。
しかし私は、この主張には大きな違和感を覚えました。目の前の取り組みが社会に必要とされているかどうかを考えることは当然であり、それは「こつこつ」という姿勢の問題ではなく、戦略の問題です。また、「グローバル競争に勝つ」という言葉も、その基準によって意味が大きく異なります。一般的にはアメリカのIT企業群が勝者と見なされるのでしょうが、それが本当に「勝ち」と言えるのか、私は疑問に思います。
もし企業の目的が単に利益の最大化であるならば、巨額の利益を上げるIT企業は確かに勝者でしょう。しかし本来、企業とは社会に役立つ製品やサービスを提供し、人々を幸せにする存在であるはずです。そしてその過程で、従業員とその家族を守り、最終的には経営者も含めて関わるすべての人が幸福になることが本来の姿ではないでしょうか。
現在「勝者」とされる企業は莫大な利益を生み出していますが、その裏で従業員が不安定な環境に置かれている現実もあります。単に利益や規模だけで「勝者」と評価することには、私は違和感を覚えます。
私は、人を幸せにする企業こそが本当の意味で価値ある存在であり、そのための経営が日本企業の進むべき方向であると考えています。そしてその基盤となるのが、やはり「こつこつ」と積み重ねる姿勢なのです。
確かに現代社会では、一定の品質の製品は比較的安価に手に入るようになりました。これは効率化と大量生産の成果であり、日本もかつて高度経済成長期にこのモデルで成功を収めました。しかし現在では、中国や東南アジア諸国がその役割を担い、日本は同じ土俵で競争することが難しくなっています。
この現状を踏まえると、日本はすでに大量生産の時代を卒業したと考えるべきではないでしょうか。これから目指すべきは、低価格・大量生産ではなく、「高品質・少量生産」です。私はこれを15年前のコラムで「グローバル・ニッチ」という言葉で表現しました。世界が豊かになる中で、本当に価値のある製品は高価格であっても評価され、求められます。購入者は限られていても、世界市場を相手にすれば十分な利益を確保できるのです。
その後の15年で、ITの進化は想像以上に進みました。金融や事務などデジタル化可能な業務は急速にITへ置き換わり、人の仕事は減少しています。一方で、建築や物流、製造、医療、接客といった「リアルな変化」を伴う仕事の重要性は、むしろ高まっています。
そこで鍵となるのが、人の技術、すなわち「匠の技」です。高品質な製品は単なる効率化からは生まれません。地道な改良と経験の積み重ねによって初めて生み出されるものです。ここにこそ、日本の強みがあります。
また近年の国際情勢も、この方向性の重要性を示しています。関税政策の変化により、大量輸出に依存したビジネスは大きなリスクを抱えることが明らかになりました。一方でイタリアのように、高付加価値製品を中心とした経済は影響を受けにくい構造を持っています。代替の効かない製品は、価格が上がっても需要が維持されるため、高い利益率を確保できるのです。
日本も今後は、この「高付加価値・高利益率」のモデルへと転換すべきです。少子高齢化により労働人口が減少する中で、従来の大量生産型モデルには限界があります。
そして、その根底にあるのが「こつこつ」とした努力です。高付加価値は一朝一夕には生まれません。継続的な改良と現場での積み重ねによってのみ実現されます。実際、日本の半導体産業も完成品では苦戦していますが、素材や装置分野では依然として世界トップクラスの競争力を維持しています。これらはすべて、「こつこつ」とした地道な改良の成果です。
利益率を生み出す源泉は現場にあります。現場を知らず、数字だけで経営を行う姿勢では、本質的な競争力は生まれません。日々ものづくりに向き合う人々こそが改善を積み重ね、新たな価値を創造していくのです。
私自身も、大学卒業以来、矯正歯科治療に特化し、「こつこつ」と治療技術の改良を続けてきました。装置も自ら工夫し、手作りすることで使いやすさとコストの両立を実現しています。規模拡大を追求しないことでリスクを抑えつつ、質の高い医療を提供し、スタッフにも満足してもらえる環境を整えることができています。
今こそ日本は、規模を追うビジネスモデルから脱却し、「こつこつ」とした積み重ねを基盤とする高付加価値・高利益率のモデルへ転換すべき時です。
その鍵を握るのは、やはり「こつこつ」という姿勢なのだと思います。





