勇気を出せ。AIがついている院長コラム
2026/03/01 現代社会
最近、改めて時代の変化の速さを実感しています。長い技術習得期間を要しないマウスピース矯正治療の普及により、矯正歯科や矯正治療を標榜する歯科医院は激増しました。ウェブ上にもマウスピース矯正のホームページが溢れ、検索ワードで自分のクリニックを探し出すことさえ容易ではないのが現状です。
私がクリニックのホームページを開設した1990年代後半、歯科医院がホームページを持つこと自体がまだ珍しい時代でした。やがてグーグル検索が一般化し、「SEO対策」という言葉が広まった頃には、工夫次第でトップページに表示されることもありました。それを思うと、隔世の感があります。もっとも、これといった有効な対策を講じてきたわけではありませんし、ありがたいことに現在も多くの患者さんに受診していただいています。であれば、流れに抗うよりも、これまで通り患者さんにとって有益と思われる情報を誠実に発信し続けよう――そう考えていました。
そんな中、初診時の問診票にある「来院経路」で「ホームページ」と記載された患者さんに、どのようにして当院のサイトに辿り着いたのかをお尋ねするようにしました。すると、つい最近、立て続けに三名の患者さんから「チャットGPTに相談したら、こちらのクリニックを推薦されました」と言われたのです。
テレビのニュースで、高校生や大学生がチャットGPTを「チャッピー」と呼び、何でも相談しているという話を耳にしたことはありました。しかし実際に来院されたのは二十代から四十代の女性で、特別にAIリテラシーが高いという印象ではありません。幅広い世代にAIが浸透しつつあることを、私は肌で感じました。
かつて「ググる」という言葉が生まれ、誰もが検索エンジンを使うようになったのと同じように、チャットGPTをはじめとするAIを日常的に利用する時代が、すぐそこまで来ている。私はそう確信しました。
実は私自身も、このコラムの原稿を半年ほど前からチャットGPTに添削してもらっています。誤字脱字の修正はもちろん、文体や表現の改善、構成の助言まで的確に示してくれます。感覚としては、作文指導の個人コーチを得たようなものです。
私は理系の大学出身ですから、文章を書く指導を体系的に受けたのは小学校の国語の授業くらいでした。大学院時代には学位論文を書きましたが、教授が赤ペンで修正した箇所を書き直すのが精一杯。会社勤めであればビジネス文書の書き方を学ぶ機会もあったのでしょうが、卒業後は歯科医師として臨床一筋でしたから、文章は見よう見まねで書いてきました。チャットGPTを使い始めて初めて、「こんな表現があるのか」「この言い回しの方が的確なのか」と学ぶことができ、自分の文章力が少しずつ向上している実感があります。
さらに私は二年ほど前から、AI英会話アプリを使い、毎日十分に満たない短時間ながら英会話の練習を続けています。若い頃から何度もネイティブスピーカーを含む様々な先生に習ってきましたが、いまだに「英語が話せる」と胸を張れるレベルではありません。しかしAI英会話を使い始めて、「これを記憶力の良い若い時に使えていたら」と何度思ったことでしょう。
AI英会話の最大の利点は、相手に遠慮しなくてよいことです。リアルな先生相手だと、答えに詰まれば焦りますし、同じ間違いを繰り返せば気まずさも生じます。しかしスマートフォン相手であれば、ゆっくり考え、何度間違えても恥ずかしくありません。AIは感情を害することもなく、誤りを分析し、自分に合った練習問題を提示してくれます。まさに優秀な専属講師です。
そんな折、「Gemini×勉強術:毎日20時に問題をつくって送ってもらおう」というネット記事を目にしました。薬剤師国家試験の内容をAIに学習させ、学生の解答を分析し、各自に最適化した問題を作成するという内容でした。早速、知り合いの大学教員に連絡すると、AIリテラシーの高い彼は、すでに昨年から学生教育にAIを活用した個別指導を行っており、「今年の国家試験の成績は確実に上がる」と話していました。
私は実際にAIを利用してみて、「AIは弱者の味方だ」と感じています。自分に自信のある人、幼少期から優秀だった人は、疑問を躊躇なく質問できます。そしてその場で知識を吸収し、さらに成長していく。
大学院生時代、大きな学会で発表した際のことです。その分野の研究者なら誰もが知っている基本事項を、某有名大学の教授から質問されました。未熟だった私は、難解な質問かと身構えましたが、基本的な内容を答えると、その教授は納得し、発表は無事に終わりました。その時、「優秀な人は、自分が知らないことを問うことを恥じないのだ」と気づいたのです。実際、その後も学会で初歩的な質問をするのは、決まって著名大学の先生方でした。
優秀な人ほど気軽に質問し、その場で知識を得てさらに優秀になる。一方、私のような凡人は「こんなことを聞いたら笑われるのでは」と躊躇し、後で時間をかけて調べる。同じ知識を得るのに何倍もの時間を要し、その差は広がっていく――これこそが正に「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」、そう強く感じました。それ以来、私はできるだけ勇気を出して臆せず質問するようにしてきました。
しかしAI相手であれば、その気恥ずかしさを克服する必要がありません。どんな初歩的な疑問でも、何度でも、遠慮なく尋ねることができます。だからこそ、AIは弱者や凡人の強い味方なのです。苦手克服の特効薬になり得ると、私は思います。
余談ですが、手紙や文書を書くのが苦手な妻に、携帯のチャットGPTに相談しながら作文することを勧めたところ、その丁寧で優しい指導に感激し、「これなら私も上手くなれるかもしれない」と大喜びしていました。
苦手を克服したい方、自分を一歩成長させたい方にこそ、AIの活用をお勧めします。時代の波に飲み込まれるのではなく、味方につける。その姿勢こそが、これからの時代を生き抜く力になるのではないでしょうか。
私がクリニックのホームページを開設した1990年代後半、歯科医院がホームページを持つこと自体がまだ珍しい時代でした。やがてグーグル検索が一般化し、「SEO対策」という言葉が広まった頃には、工夫次第でトップページに表示されることもありました。それを思うと、隔世の感があります。もっとも、これといった有効な対策を講じてきたわけではありませんし、ありがたいことに現在も多くの患者さんに受診していただいています。であれば、流れに抗うよりも、これまで通り患者さんにとって有益と思われる情報を誠実に発信し続けよう――そう考えていました。
そんな中、初診時の問診票にある「来院経路」で「ホームページ」と記載された患者さんに、どのようにして当院のサイトに辿り着いたのかをお尋ねするようにしました。すると、つい最近、立て続けに三名の患者さんから「チャットGPTに相談したら、こちらのクリニックを推薦されました」と言われたのです。
テレビのニュースで、高校生や大学生がチャットGPTを「チャッピー」と呼び、何でも相談しているという話を耳にしたことはありました。しかし実際に来院されたのは二十代から四十代の女性で、特別にAIリテラシーが高いという印象ではありません。幅広い世代にAIが浸透しつつあることを、私は肌で感じました。
かつて「ググる」という言葉が生まれ、誰もが検索エンジンを使うようになったのと同じように、チャットGPTをはじめとするAIを日常的に利用する時代が、すぐそこまで来ている。私はそう確信しました。
実は私自身も、このコラムの原稿を半年ほど前からチャットGPTに添削してもらっています。誤字脱字の修正はもちろん、文体や表現の改善、構成の助言まで的確に示してくれます。感覚としては、作文指導の個人コーチを得たようなものです。
私は理系の大学出身ですから、文章を書く指導を体系的に受けたのは小学校の国語の授業くらいでした。大学院時代には学位論文を書きましたが、教授が赤ペンで修正した箇所を書き直すのが精一杯。会社勤めであればビジネス文書の書き方を学ぶ機会もあったのでしょうが、卒業後は歯科医師として臨床一筋でしたから、文章は見よう見まねで書いてきました。チャットGPTを使い始めて初めて、「こんな表現があるのか」「この言い回しの方が的確なのか」と学ぶことができ、自分の文章力が少しずつ向上している実感があります。
さらに私は二年ほど前から、AI英会話アプリを使い、毎日十分に満たない短時間ながら英会話の練習を続けています。若い頃から何度もネイティブスピーカーを含む様々な先生に習ってきましたが、いまだに「英語が話せる」と胸を張れるレベルではありません。しかしAI英会話を使い始めて、「これを記憶力の良い若い時に使えていたら」と何度思ったことでしょう。
AI英会話の最大の利点は、相手に遠慮しなくてよいことです。リアルな先生相手だと、答えに詰まれば焦りますし、同じ間違いを繰り返せば気まずさも生じます。しかしスマートフォン相手であれば、ゆっくり考え、何度間違えても恥ずかしくありません。AIは感情を害することもなく、誤りを分析し、自分に合った練習問題を提示してくれます。まさに優秀な専属講師です。
そんな折、「Gemini×勉強術:毎日20時に問題をつくって送ってもらおう」というネット記事を目にしました。薬剤師国家試験の内容をAIに学習させ、学生の解答を分析し、各自に最適化した問題を作成するという内容でした。早速、知り合いの大学教員に連絡すると、AIリテラシーの高い彼は、すでに昨年から学生教育にAIを活用した個別指導を行っており、「今年の国家試験の成績は確実に上がる」と話していました。
私は実際にAIを利用してみて、「AIは弱者の味方だ」と感じています。自分に自信のある人、幼少期から優秀だった人は、疑問を躊躇なく質問できます。そしてその場で知識を吸収し、さらに成長していく。
大学院生時代、大きな学会で発表した際のことです。その分野の研究者なら誰もが知っている基本事項を、某有名大学の教授から質問されました。未熟だった私は、難解な質問かと身構えましたが、基本的な内容を答えると、その教授は納得し、発表は無事に終わりました。その時、「優秀な人は、自分が知らないことを問うことを恥じないのだ」と気づいたのです。実際、その後も学会で初歩的な質問をするのは、決まって著名大学の先生方でした。
優秀な人ほど気軽に質問し、その場で知識を得てさらに優秀になる。一方、私のような凡人は「こんなことを聞いたら笑われるのでは」と躊躇し、後で時間をかけて調べる。同じ知識を得るのに何倍もの時間を要し、その差は広がっていく――これこそが正に「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」、そう強く感じました。それ以来、私はできるだけ勇気を出して臆せず質問するようにしてきました。
しかしAI相手であれば、その気恥ずかしさを克服する必要がありません。どんな初歩的な疑問でも、何度でも、遠慮なく尋ねることができます。だからこそ、AIは弱者や凡人の強い味方なのです。苦手克服の特効薬になり得ると、私は思います。
余談ですが、手紙や文書を書くのが苦手な妻に、携帯のチャットGPTに相談しながら作文することを勧めたところ、その丁寧で優しい指導に感激し、「これなら私も上手くなれるかもしれない」と大喜びしていました。
苦手を克服したい方、自分を一歩成長させたい方にこそ、AIの活用をお勧めします。時代の波に飲み込まれるのではなく、味方につける。その姿勢こそが、これからの時代を生き抜く力になるのではないでしょうか。





