命を守る矯正歯科院長コラム
2013/02/01
外科的矯正治療を受ける患者さんと言えば、従来は下顎が大きく成長した受け口、骨格的下顎前突症がほとんどでした。しかし最近、樋口矯正歯科クリニックで外科的矯正治療を受ける患者さんの中では、下顎後退を伴った上顎前突(出っ歯、下顎後退症)の割合が増えてきています。下顎後退症の患者さんの症状は、出っ歯や口唇の閉鎖不全の他に睡眠時無呼吸症候群の症状を伴うことが多いのが特徴です。
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)とは睡眠中に10秒以上の呼吸が停止、つまり無呼吸が5回以上繰り返される病気です。主に、いびきや昼間の眠気、熟睡感がない、起床時の頭痛などの症状があります。下顎後退症で睡眠時無呼吸症候群になっていいる患者さんの多くは、猫背で姿勢が悪く、睡眠時は横向きやうつ伏せで眠ります。
これらの症状は、下顎が小さく後方に位置していることで、下顎に付いている舌も後方に位置して、その為気道が細くなっていることで起こります。下顎後退症の患者さんは背筋を伸ばして顎を引くと言う正しい姿勢をとると気道が狭くなり、息苦しく感じるので、気道を開くため前屈みになり、顎を突き出す様にする事で気道を広げ呼吸をし易くしている訳です。良く姿勢が悪いと注意される子供さんが、実は生きるために、呼吸するために「悪い姿勢」をしているのかも知れません。また、同じように上向きで寝られないのも、上を向いて寝ることで起きている時以上に舌が後ろに下がり気道を圧迫して呼吸がし難くなるので、それを防ぐため気道を確保するためにうつ伏せや、横向きで寝ているのかも知れません。呼吸は生きていくために必要不可欠なことですから、知らぬ間にそれを守るために姿勢が悪くなったり、上を向いて寝られなくなったりしている訳です。
睡眠時無呼吸症候群の原因には、太ることによる首周りの脂肪の沈着、扁桃肥大、アデノイド、等がありますが、現代人の傾向としてよく指摘されている顎の退化傾向つまり下顎が小さくなっていく傾向も重要な原因ですから、睡眠時無呼吸症候群は現代人の病気であり、今後も増加していく傾向をたどると思われます。
睡眠時無呼吸症候群の症状治療方法としては、CPAP(Continuous Positive airway Pressure:経鼻的持続陽圧呼吸療法)と言う、鼻から専用のマスクを介して空気を送り気道を広げる療法が最も一般的です。また、マウスピースで下顎を前に出した位置で上下の歯を固定して、下顎が後ろへ下がるのを防ぐ方法もあります。
しかし、これらの方法は根本的な治療法とは言えません。下顎骨が小さくて、気道が狭窄している場合の根本的な治療方法は、形態異常が有る下顎骨を外科的矯正治療で正常な状態に近づけるのが最善です。外科的矯正治療で下顎骨を前方に移動する事で舌や舌骨が前方に引っ張られ気道が広がり、その結果睡眠時無呼吸症候群は劇的に改善します。しかしながら現在の所、睡眠時無呼吸症候群の治療方法として外科的矯正治療は健康保険で認められていません。下顎後退症で咬合の異常の治療として、外科的矯正治療を行ったところ、睡眠時無呼吸症候群の症状が改善されると言う2次的効果にすぎないのです。ですから、実際に歯科医師が外科的矯正治療で睡眠時無呼吸症候群を治療できるにも関わらず、歯科医師は睡眠時無呼吸症候群を診断する事が出来ません。そして、睡眠時無呼吸症候群の治療方法として、外科的矯正治療が健康保険で適応されていないのが現状です。
私は矯正歯科医になって約25年ですが、多くの下顎後退症を伴う上顎前突の患者さんを矯正治療だけで改善してきました。しかし、その改善は咬み合わせの改善であり、下顎が小さい、顎が下がっていると言う骨格的な要因を改善した訳ではありませんでした。若い頃に私が矯正治療して、咬合が正しくなったものの、骨格的な異常が残ったままの患者さんが、年齢が上がり、だんだんと太り、首のまわりに脂肪が付き、おまけに筋力が衰え呼吸する力も衰えてきた時、睡眠時無呼吸症候群の症状を発症するのではないと心配になってきます。
医療は日進月歩で進歩し続けています。今日、今の時点で正しかった治療方法が、明日も正しいとは限らないのです。そうした変化に取り残されないためには、最新の医学情報に精通するのと同時に、実際の臨床の現場で今の治療方法が最善か、もっとよい治療方法が有るのでは無いかと、謙虚な気持ちで自分自身の診療を客観的に見つめる必要です。
睡眠時無呼吸症候群の患者さんの外科的矯正治療からも分かるように歯科医が扱う「口」は、食べるだけでなく呼吸するにも大きく関係しています。私は、生きる基本、「食べる、呼吸する」事を守る、つまり命を守る矯正歯科医として日々研鑽に励む覚悟です。
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)とは睡眠中に10秒以上の呼吸が停止、つまり無呼吸が5回以上繰り返される病気です。主に、いびきや昼間の眠気、熟睡感がない、起床時の頭痛などの症状があります。下顎後退症で睡眠時無呼吸症候群になっていいる患者さんの多くは、猫背で姿勢が悪く、睡眠時は横向きやうつ伏せで眠ります。
これらの症状は、下顎が小さく後方に位置していることで、下顎に付いている舌も後方に位置して、その為気道が細くなっていることで起こります。下顎後退症の患者さんは背筋を伸ばして顎を引くと言う正しい姿勢をとると気道が狭くなり、息苦しく感じるので、気道を開くため前屈みになり、顎を突き出す様にする事で気道を広げ呼吸をし易くしている訳です。良く姿勢が悪いと注意される子供さんが、実は生きるために、呼吸するために「悪い姿勢」をしているのかも知れません。また、同じように上向きで寝られないのも、上を向いて寝ることで起きている時以上に舌が後ろに下がり気道を圧迫して呼吸がし難くなるので、それを防ぐため気道を確保するためにうつ伏せや、横向きで寝ているのかも知れません。呼吸は生きていくために必要不可欠なことですから、知らぬ間にそれを守るために姿勢が悪くなったり、上を向いて寝られなくなったりしている訳です。
睡眠時無呼吸症候群の原因には、太ることによる首周りの脂肪の沈着、扁桃肥大、アデノイド、等がありますが、現代人の傾向としてよく指摘されている顎の退化傾向つまり下顎が小さくなっていく傾向も重要な原因ですから、睡眠時無呼吸症候群は現代人の病気であり、今後も増加していく傾向をたどると思われます。
睡眠時無呼吸症候群の症状治療方法としては、CPAP(Continuous Positive airway Pressure:経鼻的持続陽圧呼吸療法)と言う、鼻から専用のマスクを介して空気を送り気道を広げる療法が最も一般的です。また、マウスピースで下顎を前に出した位置で上下の歯を固定して、下顎が後ろへ下がるのを防ぐ方法もあります。
しかし、これらの方法は根本的な治療法とは言えません。下顎骨が小さくて、気道が狭窄している場合の根本的な治療方法は、形態異常が有る下顎骨を外科的矯正治療で正常な状態に近づけるのが最善です。外科的矯正治療で下顎骨を前方に移動する事で舌や舌骨が前方に引っ張られ気道が広がり、その結果睡眠時無呼吸症候群は劇的に改善します。しかしながら現在の所、睡眠時無呼吸症候群の治療方法として外科的矯正治療は健康保険で認められていません。下顎後退症で咬合の異常の治療として、外科的矯正治療を行ったところ、睡眠時無呼吸症候群の症状が改善されると言う2次的効果にすぎないのです。ですから、実際に歯科医師が外科的矯正治療で睡眠時無呼吸症候群を治療できるにも関わらず、歯科医師は睡眠時無呼吸症候群を診断する事が出来ません。そして、睡眠時無呼吸症候群の治療方法として、外科的矯正治療が健康保険で適応されていないのが現状です。
私は矯正歯科医になって約25年ですが、多くの下顎後退症を伴う上顎前突の患者さんを矯正治療だけで改善してきました。しかし、その改善は咬み合わせの改善であり、下顎が小さい、顎が下がっていると言う骨格的な要因を改善した訳ではありませんでした。若い頃に私が矯正治療して、咬合が正しくなったものの、骨格的な異常が残ったままの患者さんが、年齢が上がり、だんだんと太り、首のまわりに脂肪が付き、おまけに筋力が衰え呼吸する力も衰えてきた時、睡眠時無呼吸症候群の症状を発症するのではないと心配になってきます。
医療は日進月歩で進歩し続けています。今日、今の時点で正しかった治療方法が、明日も正しいとは限らないのです。そうした変化に取り残されないためには、最新の医学情報に精通するのと同時に、実際の臨床の現場で今の治療方法が最善か、もっとよい治療方法が有るのでは無いかと、謙虚な気持ちで自分自身の診療を客観的に見つめる必要です。
睡眠時無呼吸症候群の患者さんの外科的矯正治療からも分かるように歯科医が扱う「口」は、食べるだけでなく呼吸するにも大きく関係しています。私は、生きる基本、「食べる、呼吸する」事を守る、つまり命を守る矯正歯科医として日々研鑽に励む覚悟です。