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院長コラムで院長を知ろう!矯正歯科専門医 河合悟が思うこと。

健康の維持、増進のための矯正歯科院長コラム

2016/10/01 医療・健康

樋口矯正歯科クリニックでは、ホームページの最新情報でも紹介致しましたように9月に二つの新しい取り組みを始めました。一つは睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査機器の貸し出し、もう一つは鼻洗浄「サイナスリンス」の導入です。どちらも一見歯並びや矯正歯科とは関係なく、何で矯正歯科でと思われるかも知れませんし、実際矯正歯科で睡眠時無呼吸症候群の検査を行ったり鼻洗浄を行うように指導している医院は私の知る限りありません。

 睡眠時無呼吸症候群については、2013年2月のホームページの「命を守る矯正歯科」に詳しく書いたように、下顎後退による呼吸機能の改善には外科的矯正治療が有効なことは分かっていました。しかし、歯科では睡眠時無呼吸症候群の検査を健康保険で行う事ができず、内科や無呼吸外来を受診して、一泊入院で検査を受ける必要がありました。その為、従来まで樋口矯正歯科クリニックでは、「いびき」や「昼間のねむけ」等の問診による情報を診断の参考にしてきました。もちろん強く無呼吸症候群が疑われる場合には、無呼吸外来の受診を指示してきましたが、多くの患者さんに睡眠時無呼吸症候群の検査を受けに行って頂くのは難しいのが実情でした。そこで今回、健康保険を適用することは出来ませんが、検査機械を貸し出し自宅で検査ができる態勢を整えたことで、より多くの患者さんに睡眠時無呼吸症候群の検査を受けていただけると思っています。

 今回導入した検査機器では寝ている姿勢で(上向き、横向き、うつ伏等)による呼吸状態を判別することが出来ますから、外科的矯正手術やマウスピースによる無呼吸の改善だけでなく、寝る姿勢を指導することで無呼吸の改善を計ることも可能だと思います。

 鼻洗浄については鼻づまりを改善するつまり鼻の機能を改善することが、歯並びつまり形態を改善する事に繋がる事から導入しました。出っ歯や開咬は唇を閉じないことで前歯が外側が押さえられる力がなくなり、前方に出ていくことで起こります。つまり口呼吸をやめて鼻で呼吸し唇を閉じることが出っ歯や開咬を改善するためには重要です。

 しかし口呼吸の人の多くは鼻づまりで鼻呼吸ができません。口呼吸があると咽頭(のどの奥)の粘膜がいつも乾燥状態となり、粘膜は乾燥すると細菌感染を起こしやすくなりますから、口呼吸の人は咽頭の粘膜に軽い慢性の炎症があります。この軽い炎症が咽頭と鼻の粘膜は繋がっていますから、鼻の粘膜へ波及して鼻づまりを起こします。口呼吸→咽頭粘膜の乾燥→咽頭粘膜の炎症→鼻の粘膜の炎症→鼻づまり→口呼吸と言う悪循環が出来上がり、どこかを断ち切らないと改善はありません。

 矯正歯科ではまず、歯並びを改善して前歯を後方に異動して、唇を閉じやすくする事で口呼吸を防ごうとしてきましたが、口呼吸で唇の力が弱いままでは歯並びの改善も遅いし、改善後の安定も得にくいのが実情でした。しかし、寝る前に今回導入した「サイナスリンス」で鼻洗浄を来ない鼻づまりを解消して、その上で矯正装置やマスキングテープを使って口呼吸ができない状態にして寝る事で、自然と鼻呼吸の習慣を着ける事ができるようになります。

 矯正歯科治療の目的が歯並びという見かけつまり形態の改善だけを目的としているのであれば、睡眠時無呼吸症候群の検査も鼻洗浄も必要ありません。しかし、私は矯正治療の目的を不正咬合という形態異常を正常にすることで口の機能つまり食べる、飲み込む、息をすると言う「機能を向上させる事」を真の目的と考えていますから、この二つの新しい取り組みを開始することに致しました。

 一般的に歯科医の仕事と言えば誰もが虫歯の治療や入れ歯の作製と認識され、矯正歯科治療を含めて、結局歯や歯並びと言った「物」を治す、作ると言ったイメージで、内科や外科のように生命体を治療するのとはちょっと違うように思われている気がします。

 虫歯の治療や入れ歯の作製は、ある意味患者さんの生体の反応に関係なく、歯科医の技術、努力で治療を進めることが出来ますが、矯正歯科治療は歯に力を加えることで生体の反応を利用して歯を移動させますから、歯科医の技術、努力だけでは治療を進めることは出来ません。内科の治療は、薬を飲むことで生体が反応して治療が進むのと同じ事です。

 同時に内科の治療では、患者さんの生活習慣の改善等の努力、協力が治療結果を左右するのと同じように、矯正歯科の治療結果を大きく左右するのも患者さんの努力、協力です。 矯正歯科治療で患者さんに協力してもらわないといけないことの一つが、口や舌等の機能の正常化のための努力です。正常な機能の習得や回復(いわゆるリハビリ)は、物理的に行う事は出来ませんから、患者さんの努力に委ねられることなります。そして、患者さんの協力が得られない場合には、折角苦労して正常になった歯並びや咬み合わせが再び乱れて行ってしまします。

 私の矯正治療の経験から正常な形態と正常な機能は相互不可分であり、形態異常が有れば正常な機能を営むことが出来ず、正常な機能が営むことが出来なければ形態が異常になると言う事をつくづく実感したのです。その結果、歯並びという形態と同じように食べる、飲み込む、息をするという口の機能を重視した矯正治療を目指すようになりました。

 また、一昨年より副院長が開始した口臭外来で「唾液の分泌を促すこと」が口臭予防の第一歩であり、唾液の分泌促進には舌の運動が重要であることを知りました。そして、舌の運動機能改善のためのトレーニング方法を探し出してもらえたので、口臭外来と同時に矯正歯科でも舌トレーニングを積極的に実践してきました。

 おまけに、この舌トレーニングは、飲み込みに重要な役割を果たす咽頭部の筋力トレーニングにもなりますから、訪問診療部の高齢者の治療の現場でも積極的に実践しています。舌トレーニングを行う事で年齢ともに衰える嚥下(飲み込み)機能が向上し、高年齢が起こしやすい誤嚥性肺炎の予防に非常に有効です。樋口矯正歯科クリニックは訪問診療部でも単なる虫歯の治療や義歯の作製でなく、口の機能の向上を目的と診療を行っています。

 歯並びと言う形態だけでなく、食べる、飲み込む、息をするという口の機能の向上を通じて全身の健康の維持増進を目指した矯正歯科を一層追究していきたいと思っています。

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