あけましておめでとうございます。院長コラム
2026/01/01 ご挨拶
私は毎年、新年にあたり、その一年の社会情勢、歯科界、歯科矯正界、そして樋口矯正歯科クリニックの歩みを振り返るコラムを書いてきました。
振り返れば、この新年コラムを書き始めたのは2002年の年末であり、気がつけば23年間にわたり、自分なりの視点で時代を記録してきたことになります。
この間、社会情勢について書く内容の多くは、不景気、経済不振といった暗い話題でした。日本経済はバブル崩壊以降「失われた30年」と呼ばれる長い停滞期に入り、その影響は私たちの日常生活や医療の現場にも色濃く及んできました。
ところが2024年以降、株式市場は大きく様相を変えました。
日経平均株価は2024年2月に、1989年末のバブル絶頂期の最高値である38,915円を超え、その後も上昇を続け、2025年11月には40,000円どころか50,000円を超える水準に達しました。
30年以上前の株高の時代を思い起こすと、社会全体にお金が行き渡り、多くの人が豊かさを実感していた記憶があります。しかし、今回の株高は、当時とは明らかに性質が異なっています。
現在、ニュースで目にするのは、好景気に沸く人々の姿ではなく、物価高の中で少しでも安い食料品や生活必需品を探し回る庶民の姿です。
企業業績や株価が過去最高水準にある一方で、所得の伸びは物価上昇に追いつかず、多くの人々が生活の苦しさを感じています。まるで日本の中に、二つの異なる世界が生まれてしまったかのようです。
この背景には、「失われた30年」からの脱却を目指して実行された、未曾有の金融緩和政策があります。いわゆるアベノミクスによって市場に大量の資金が供給され、その資金は株式や不動産へと向かいました。また、金利低下に伴う大幅な円安は、原油や食料品など輸入品価格の上昇を招き、結果として物価高をもたらしました。
アベノミクスの中核にあった経済理論の一つが「トリクルダウン」です。富裕層が豊かになれば、その恩恵がいずれ庶民にも行き渡るという考え方ですが、現在ではこの理論を支持する経済学者は少数派となっています。
実際、政策の継続によって株価や不動産価格は上昇し、資産を持つ層はさらに豊かになる一方で、多くの人々は物価高に苦しむ一年となりました。
こうした状況を考える中で、私はある雑誌で「野獣資本主義」という言葉を知りました。これは、西ドイツの元首相でドイツ社会民主党出身のヘルムート・シュミットが用いたとされる言葉で、過度な競争や利益追求、自己責任の強調といった、資本主義の行き過ぎた側面を表しています。
近年のアメリカ、そして日本の状況を見ていると、この「野獣資本主義」が勢いを増し、豊かな者はより豊かに、そうでない者はより厳しい立場に追い込まれているように感じます。
実際、厚生労働省が公表した「所得再分配調査」によれば、所得格差を示すジニ係数は微増し、統計開始以来、最大水準となりました。数字は、私たちが日々感じている格差の拡大を裏付けています。
本来、こうした資本主義の弊害から市民を守るために、所得再分配や社会保障、公的扶助を充実させることこそが政治の役割であるはずです。新しい年には、その本来の役割が果たされることを願わずにはいられません。
さて、2026年の年頭にあたり、樋口矯正歯科クリニックの2025年を振り返ります。
昨年の新患数は一昨年よりも59名も減少して352名で、開院以来の総新患数は15,983名となりました(下部 関連ファイル>年度別新患者数実績(2000~2025年)参照) 。マウスピース矯正の流行で「矯正歯科」を標榜する医科医院が激増したことも新患数減少の要因の一つですが、それよりも近年はインターネット環境の変化やSNSの台頭により、医療機関の情報発信方法の変化にも要因があるようです。検索順位の変動や広告規制の問題など、クリニック単独でのインターネット広告への対応の難しさを感じる場面も増えてきました。
そのような厳しい経営環境の中でも患者さんや周囲の先生方に支えられ、治療を開始する患者さんの数は減少することなく2025年もクリニックは大忙しの一年でした。
また、昨年一年間で顎変形症(手術を必要とするような著しい顎骨の大きさの不調和がある症例)に対する外科的矯正治療を行った患者さんは64名となり、累計では922名に達しました。
特に下顎後退症は、見た目の問題だけでなく、呼吸機能障害を引き起こし、生命に関わるリスクを伴う重篤な疾患です。私はこの下顎後退症に対する外科的矯正治療を、「命を救う矯正治療」と呼んでいます。
この治療については、一昨年にアメリカの学会で発表し、昨年は東京で講演を行いました。多くの評価をいただいた一方で、この治療分野の歴史がまだ浅く、矯正歯科医・口腔外科医の双方にさらなる理解と技術の普及が必要であることを、あらためて強く感じました。
樋口矯正歯科クリニックは、単なる歯並びの改善や見た目の美しさを目的とした「美容矯正」とは一線を画し、
「食べる」「飲み込む」「息をする」といった口腔機能の改善と維持を通じて、人が生きる力を支える「医療としての矯正」を追求しています。
本年も「患者さんのことを家族のように考え、健康の維持・増進に貢献する」というクリニックの理念を胸に、スタッフ一同、地道に、誠実に歩みを進めていきたいと思います。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
振り返れば、この新年コラムを書き始めたのは2002年の年末であり、気がつけば23年間にわたり、自分なりの視点で時代を記録してきたことになります。
この間、社会情勢について書く内容の多くは、不景気、経済不振といった暗い話題でした。日本経済はバブル崩壊以降「失われた30年」と呼ばれる長い停滞期に入り、その影響は私たちの日常生活や医療の現場にも色濃く及んできました。
ところが2024年以降、株式市場は大きく様相を変えました。
日経平均株価は2024年2月に、1989年末のバブル絶頂期の最高値である38,915円を超え、その後も上昇を続け、2025年11月には40,000円どころか50,000円を超える水準に達しました。
30年以上前の株高の時代を思い起こすと、社会全体にお金が行き渡り、多くの人が豊かさを実感していた記憶があります。しかし、今回の株高は、当時とは明らかに性質が異なっています。
現在、ニュースで目にするのは、好景気に沸く人々の姿ではなく、物価高の中で少しでも安い食料品や生活必需品を探し回る庶民の姿です。
企業業績や株価が過去最高水準にある一方で、所得の伸びは物価上昇に追いつかず、多くの人々が生活の苦しさを感じています。まるで日本の中に、二つの異なる世界が生まれてしまったかのようです。
この背景には、「失われた30年」からの脱却を目指して実行された、未曾有の金融緩和政策があります。いわゆるアベノミクスによって市場に大量の資金が供給され、その資金は株式や不動産へと向かいました。また、金利低下に伴う大幅な円安は、原油や食料品など輸入品価格の上昇を招き、結果として物価高をもたらしました。
アベノミクスの中核にあった経済理論の一つが「トリクルダウン」です。富裕層が豊かになれば、その恩恵がいずれ庶民にも行き渡るという考え方ですが、現在ではこの理論を支持する経済学者は少数派となっています。
実際、政策の継続によって株価や不動産価格は上昇し、資産を持つ層はさらに豊かになる一方で、多くの人々は物価高に苦しむ一年となりました。
こうした状況を考える中で、私はある雑誌で「野獣資本主義」という言葉を知りました。これは、西ドイツの元首相でドイツ社会民主党出身のヘルムート・シュミットが用いたとされる言葉で、過度な競争や利益追求、自己責任の強調といった、資本主義の行き過ぎた側面を表しています。
近年のアメリカ、そして日本の状況を見ていると、この「野獣資本主義」が勢いを増し、豊かな者はより豊かに、そうでない者はより厳しい立場に追い込まれているように感じます。
実際、厚生労働省が公表した「所得再分配調査」によれば、所得格差を示すジニ係数は微増し、統計開始以来、最大水準となりました。数字は、私たちが日々感じている格差の拡大を裏付けています。
本来、こうした資本主義の弊害から市民を守るために、所得再分配や社会保障、公的扶助を充実させることこそが政治の役割であるはずです。新しい年には、その本来の役割が果たされることを願わずにはいられません。
さて、2026年の年頭にあたり、樋口矯正歯科クリニックの2025年を振り返ります。
昨年の新患数は一昨年よりも59名も減少して352名で、開院以来の総新患数は15,983名となりました(下部 関連ファイル>年度別新患者数実績(2000~2025年)参照) 。マウスピース矯正の流行で「矯正歯科」を標榜する医科医院が激増したことも新患数減少の要因の一つですが、それよりも近年はインターネット環境の変化やSNSの台頭により、医療機関の情報発信方法の変化にも要因があるようです。検索順位の変動や広告規制の問題など、クリニック単独でのインターネット広告への対応の難しさを感じる場面も増えてきました。
そのような厳しい経営環境の中でも患者さんや周囲の先生方に支えられ、治療を開始する患者さんの数は減少することなく2025年もクリニックは大忙しの一年でした。
また、昨年一年間で顎変形症(手術を必要とするような著しい顎骨の大きさの不調和がある症例)に対する外科的矯正治療を行った患者さんは64名となり、累計では922名に達しました。
特に下顎後退症は、見た目の問題だけでなく、呼吸機能障害を引き起こし、生命に関わるリスクを伴う重篤な疾患です。私はこの下顎後退症に対する外科的矯正治療を、「命を救う矯正治療」と呼んでいます。
この治療については、一昨年にアメリカの学会で発表し、昨年は東京で講演を行いました。多くの評価をいただいた一方で、この治療分野の歴史がまだ浅く、矯正歯科医・口腔外科医の双方にさらなる理解と技術の普及が必要であることを、あらためて強く感じました。
樋口矯正歯科クリニックは、単なる歯並びの改善や見た目の美しさを目的とした「美容矯正」とは一線を画し、
「食べる」「飲み込む」「息をする」といった口腔機能の改善と維持を通じて、人が生きる力を支える「医療としての矯正」を追求しています。
本年も「患者さんのことを家族のように考え、健康の維持・増進に貢献する」というクリニックの理念を胸に、スタッフ一同、地道に、誠実に歩みを進めていきたいと思います。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。





