総裁選の茶番より不労所得課税を院長コラム
2025/10/01 政治・経済
石破首相が自民党内の内紛によって、在任1年に満たず退陣へと追い込まれ、現在は自民党総裁選の真っただ中です。昨年の総裁選でも見た顔ぶれが並び、候補者の主張も似たり寄ったり。総論を語るばかりで、公約実現の具体的な道筋を示す候補は皆無です。全国で街頭演説やテレビ討論が行われていますが、自民党総裁選に投票権のない一般国民にとっては直接関係のない話ですから、盛り上がらないのも当然でしょう。所詮は自民党内の権力闘争だと冷めた目で見ている人が多いのではないでしょうか。
総裁選の後は国会での首班指名となり、新首相が選ばれることになります。しかし、衆参両院で少数与党となった自民党総裁が首相になれる保証はありません。一方で野党も、最近の選挙で議席を増やし勢いに乗っている政党でさえ、「俺が俺が」と主導権争いばかりで、野党結集は難しそうです。結局は、自民党の餌に食いついた小政党が利用され、自民党政権が存続する――いつか来た道をたどるのではないでしょうか。
そんな自民党総裁選や首班指名のさなか、私が今こそ実行してほしいと思う政策があります。それは2021年11月のコラム「金融所得税50%で幸福度アップ」にも書いた不労所得への課税強化です。金融所得に加え、不動産譲渡益や不動産賃貸所得への課税を強め、資産を持つ富裕層が働かずに得る所得から税金を徴収し、その財源を汗して働く労働者の支援に充てるべきだと考えます。
現在、金融所得課税は配当所得と株式譲渡所得に対して源泉分離課税20%が課されています。しかし、所得税の最高税率は45%(課税所得4,000万円超)ですから、高額所得者にとっては働くよりも資金運用をした方が税率が低く、まさに金持ち優遇税制の典型です。私は金融所得課税を少なくとも所得税の最高税率を超える水準、つまり50%に引き上げるべきだと考えます。働かず寝ている間に入ってくるお金の半分を社会に還元してもらう――それに異論はありますか、と言いたいのです。
企業に対しても同様です。現在、法人税の最高税率は23.2%ですが、内部留保から得られる金融所得には50%の課税を適用すべきです。銀行などの金融業においても、手数料収入以外の投資による金融資産からの所得には同様に50%課税を行うべきでしょう。
これだけでも相当な税収増が見込めますが、金融所得課税だけを強化すれば、資産家は当然不動産投資に向かいます。そこで、不動産譲渡益や賃貸所得についても50%課税を適用し、資産の種類を問わず「資産所得の半分を社会に還元する」制度を整えるべきです。
こうした増税に対しては、「庶民の資産形成を阻害する」との批判が必ず出ます。しかし、そのために国は庶民を守る制度を用意しています。今はやりのNISAやiDeCoを使えば庶民の少額での株式投資も無税ですし、障害を持った方などの社会的弱者に対しては、「障害者等の少額貯蓄非課税制度(マル優)」を使えば 350万円迄の銀行、郵貯の預金は非課税 です。一般労働者への影響はほとんどありません。
昨年来の衆参選挙では物価高対策として消費税減税が議論されていますが、減税反対派は常に「財源がない」と言います。資産課税を強化すれば、財源問題は容易に解決できるはずです。
例えば、食料品の消費税をゼロにすると年間5兆円の税収減となります。一方、2023年の配当所得課税額は約5.6兆円、株式譲渡益課税額は約0.8兆円で、合わせて6.4兆円です。これを50%(現在の2.5倍)に引き上げれば約16兆円、10兆円近い税収増です。食料品の消費税免税は容易に可能となり、不動産や企業の資産所得課税を組み合わせれば、財政に余裕が生まれ、社会保険料の減額も夢ではありません。
企業への増税が景気悪化を招くとの懸念もあるでしょう。しかし、内部留保への課税強化は、企業が資金をため込むのではなく事業投資に回すインセンティブとなり、むしろ企業の生産性や業績向上につながるはずです。
アベノミクスの時代、日本は超低金利が当たり前でしたが、コロナ禍明けの経済活性化でようやく金利が上昇し始めました。株価は史上最高値を更新し、不動産価格も全国的に上昇。東京では中古マンションが1億円超えという話題も出ています。しかし冷静に見れば、これらはすべて「持てる者」、すなわち富裕層や資産家だけの恩恵です。
資産を持たない庶民にとっては、金利も株高も不動産高騰も無縁の世界。不動産価格の上昇はやがて家賃値上げにつながり、生活はますます苦しくなります。このまま放置すれば格差は広がるばかりです。だからこそ、資産価値が高まる今こそ、「持てる者」から「持たざる者」への分配を実行すべきだと思います。
4年前の自民党総裁選で岸田元首相は「成長と分配」を掲げ、金融所得課税の強化を約束しました。しかし首相就任後、その言葉を耳にすることは一度もありませんでした。政治家や財界人は多くの資産を持つ「持つ者」です。結局、自分に不利な政策を自ら進めることはない――それが現実なのでしょう。
それでも私は言わずにはいられません。公正な社会の実現には格差是正が不可欠です。そのために今できることは、資産所得への課税強化だと考えます。私利私欲を捨てた政治家の登場を、今も夢見ています。
総裁選の後は国会での首班指名となり、新首相が選ばれることになります。しかし、衆参両院で少数与党となった自民党総裁が首相になれる保証はありません。一方で野党も、最近の選挙で議席を増やし勢いに乗っている政党でさえ、「俺が俺が」と主導権争いばかりで、野党結集は難しそうです。結局は、自民党の餌に食いついた小政党が利用され、自民党政権が存続する――いつか来た道をたどるのではないでしょうか。
そんな自民党総裁選や首班指名のさなか、私が今こそ実行してほしいと思う政策があります。それは2021年11月のコラム「金融所得税50%で幸福度アップ」にも書いた不労所得への課税強化です。金融所得に加え、不動産譲渡益や不動産賃貸所得への課税を強め、資産を持つ富裕層が働かずに得る所得から税金を徴収し、その財源を汗して働く労働者の支援に充てるべきだと考えます。
現在、金融所得課税は配当所得と株式譲渡所得に対して源泉分離課税20%が課されています。しかし、所得税の最高税率は45%(課税所得4,000万円超)ですから、高額所得者にとっては働くよりも資金運用をした方が税率が低く、まさに金持ち優遇税制の典型です。私は金融所得課税を少なくとも所得税の最高税率を超える水準、つまり50%に引き上げるべきだと考えます。働かず寝ている間に入ってくるお金の半分を社会に還元してもらう――それに異論はありますか、と言いたいのです。
企業に対しても同様です。現在、法人税の最高税率は23.2%ですが、内部留保から得られる金融所得には50%の課税を適用すべきです。銀行などの金融業においても、手数料収入以外の投資による金融資産からの所得には同様に50%課税を行うべきでしょう。
これだけでも相当な税収増が見込めますが、金融所得課税だけを強化すれば、資産家は当然不動産投資に向かいます。そこで、不動産譲渡益や賃貸所得についても50%課税を適用し、資産の種類を問わず「資産所得の半分を社会に還元する」制度を整えるべきです。
こうした増税に対しては、「庶民の資産形成を阻害する」との批判が必ず出ます。しかし、そのために国は庶民を守る制度を用意しています。今はやりのNISAやiDeCoを使えば庶民の少額での株式投資も無税ですし、障害を持った方などの社会的弱者に対しては、「障害者等の少額貯蓄非課税制度(マル優)」を使えば 350万円迄の銀行、郵貯の預金は非課税 です。一般労働者への影響はほとんどありません。
昨年来の衆参選挙では物価高対策として消費税減税が議論されていますが、減税反対派は常に「財源がない」と言います。資産課税を強化すれば、財源問題は容易に解決できるはずです。
例えば、食料品の消費税をゼロにすると年間5兆円の税収減となります。一方、2023年の配当所得課税額は約5.6兆円、株式譲渡益課税額は約0.8兆円で、合わせて6.4兆円です。これを50%(現在の2.5倍)に引き上げれば約16兆円、10兆円近い税収増です。食料品の消費税免税は容易に可能となり、不動産や企業の資産所得課税を組み合わせれば、財政に余裕が生まれ、社会保険料の減額も夢ではありません。
企業への増税が景気悪化を招くとの懸念もあるでしょう。しかし、内部留保への課税強化は、企業が資金をため込むのではなく事業投資に回すインセンティブとなり、むしろ企業の生産性や業績向上につながるはずです。
アベノミクスの時代、日本は超低金利が当たり前でしたが、コロナ禍明けの経済活性化でようやく金利が上昇し始めました。株価は史上最高値を更新し、不動産価格も全国的に上昇。東京では中古マンションが1億円超えという話題も出ています。しかし冷静に見れば、これらはすべて「持てる者」、すなわち富裕層や資産家だけの恩恵です。
資産を持たない庶民にとっては、金利も株高も不動産高騰も無縁の世界。不動産価格の上昇はやがて家賃値上げにつながり、生活はますます苦しくなります。このまま放置すれば格差は広がるばかりです。だからこそ、資産価値が高まる今こそ、「持てる者」から「持たざる者」への分配を実行すべきだと思います。
4年前の自民党総裁選で岸田元首相は「成長と分配」を掲げ、金融所得課税の強化を約束しました。しかし首相就任後、その言葉を耳にすることは一度もありませんでした。政治家や財界人は多くの資産を持つ「持つ者」です。結局、自分に不利な政策を自ら進めることはない――それが現実なのでしょう。
それでも私は言わずにはいられません。公正な社会の実現には格差是正が不可欠です。そのために今できることは、資産所得への課税強化だと考えます。私利私欲を捨てた政治家の登場を、今も夢見ています。