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院長コラムで院長を知ろう!矯正歯科専門医 河合悟が思うこと。

卒業文集は人生の未来予想図院長コラム

2025/09/01 社会問題

先月7月28日、イチロー選手が日本人として初めてアメリカ野球殿堂入りを果たし、その表彰式典での英語スピーチが大きく報じられました。19分にも及ぶスピーチでしたから、テレビでは全文を紹介することはできず、妻の弓子さんへの感謝や、野茂英雄さんへの敬意、そして「プロフェッショナルであること」に関する部分が中心的に取り上げられていたように思います。

ネット上でもイチロー選手のスピーチは絶賛されていましたので、私も全文を読んでみました。その中で特に心を打たれたのは次の言葉です。

「子供の頃、私の夢はプロ野球選手になることでした。小学6年生のとき、その夢について作文を書いたこともあります。でも今、その作文を書き直せるなら、『夢(Dream)』という言葉の代わりに『目標(Goal)』という言葉を使いたいと思います。」

このくだりを読んだとき、私は2019年12月のコラム「夢を見つけたか」の最後に書いた文章を思い出しました。――「夢がない、見つからないというなら、小学校の卒業文集を見直してみては如何でしょうか。そこにあなたの未来が記されていると思います。」 イチロー選手がまさにそのことを体現してくれたのだ、と感激したのです。

私が「卒業文集にこそ夢がある」と考えるのは、小学生の頃は周囲の大人たち――親や先生方が「将来の夢は何?」「夢に向かって頑張りなさい」と期待をかけ、応援してくれるからです。その言葉に励まされて、子ども自身も自分の未来を信じ、希望を持ち、夢を描きます。

しかし中学生になると状況は一変します。先生や親は「もっと現実を見なさい」「子供じみた夢を持ってどうするの」と言い出し、成績を基準に子ども自身に自己評価を強います。偶然、精神的な発達が早く自主的に勉学に励んだり、あるいは本当にIQが高かったりする子供は自己肯定感を高め、成績も伸びていくでしょう。けれども多くの子どもは自分を低く見積もるようになり、「どうせ自分は何をやってもダメだ」と夢を失い、努力することさえ諦めてしまうのです。表面的には「世の中を知って成長した」と評価されますが、実際には世間の常識に縛られて本来の自分を失う「衰退の過程」なのかもしれません。

人生には幾つもの岐路があります。そのたびに思い出してほしいのは、世俗に染まる前の素直な心で描いた小学生の頃の夢です。世間の評価に振り回されず、自分の夢、心に従って努力を積み重ねれば、必ず道は開けます。だからこそ、人生の岐路に立ったときはぜひ卒業文集を思い出してほしいのです。

ところで、先日ソニー生命が全国の中高生を対象に行った「将来についての意識調査」では、なりたい職業の第一位が男子中学生・高校生で「公務員」、女子中学生でも第二位が「公務員」という結果でした。また「将来の夢」に関する回答では、男女ともに1位が「安定した毎日を送る」(男子45.3%、女子54.5%)でした。安定志向から公務員が人気になるのは理解できますが、実際の仕事内容を十分に知らないまま「安定」を理由に選んでいるとすれば、そこには危うさを感じます。

民間が努力し成果を上げることで国は豊かになり、税収も増え、その上で公務員制度も成り立っています。この基本を忘れ、自分だけが安定を求めて公務員という立場に逃げ込む風潮が広がるなら、日本の未来は暗いと言わざるを得ません。国を支えるのは、夢を追い、努力を重ねて社会をリードする若者たちだからです。

だからこそ、子どもたちにはぜひ夢を持ち、夢に向かって努力し続けてほしいのです。イチロー選手はスピーチの中で「小さなことを積み重ねていけば、達成できることに限界はありません」と語りました。メジャー挑戦の際、多くの人が「小柄な日本人選手には無理だ」と疑ったときも、イチロー選手は「準備に対する自分の信念を貫けば、周囲の疑念も、自分自身の中の疑いも乗り越えられると信じていました」と述べています。

日本の将来を担う若者たちには、小学校の卒業文集に書いた夢――あるいはイチロー選手の言葉で言えば「目標」に向かって、「努力は人を裏切らない」という思いを胸に小さな努力を積み重ねていってほしいと思います。そしてそのためには、私たち大人が子どもに「現実を見ろ」と押しつけるのではなく、子どもの可能性を信じ、「頑張れば大丈夫」と声をかけ続け、夢の実現を応援することが大切です。

最後に気がかりなのは、先生方の負担軽減を理由に卒業文集の制作をやめる学校が増えていることです。ですが、卒業文集こそが人生の羅針盤であり、子どもたちが未来を描く大切な機会だと私は考えています。その存続を強く願ってやみません。

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