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院長コラムで院長を知ろう!矯正歯科専門医 河合悟が思うこと。

格差社会が生み出す闇バイト院長コラム

2023/06/01 社会問題

ゴールデンウィーク開けの 5月8日、東京・銀座のロレックス専門店に複数の覆面の男が押し入り、バールでショーケースを割って時計を強奪する様子がテレビニュースに流れました。白昼堂々、それも日本一の繁華街東京銀座での大胆な強盗に、ギャング映画の撮影?と偶然出くわした買い物客は思いそうな状況に大いに驚かされました。それに加えて続報でマンショに逃げ込んだ犯人が10代の若者だったことに、もう一段の大きな驚きと虚しさを覚えました。

 その後もニュースやワイドショウで事件の背景が続々と報じられ、オレオレ詐欺や今年1月、東京都狛江市の住宅で老人が5人組のグループに襲われ殺害された事件との関連、類似性が明らかになってきました。どの事件も高額報酬をちらつかせて違法行為を行う、言うならば犯罪者のリクルーターの餌食になった若者の犯行いわゆる闇バイト可能性が高いようです。

 東京都狛江市の強盗殺人事件の闇バイト代は100万円と報じられましたが、10代の若者が100万円でその後の人生を捨てる?売ってしまう?のが、現在の日本社会の現実です。ワイドショウではコメンテーターがしたり顔で、闇バイトによる犯罪防止には闇バイトに応募して実際の犯罪に手を染める末端の犯罪者対策よりもSMS上での闇バイト情報の拡散の取り締まりや闇バイト犯罪集団の中枢への対策強化が重要と訴えています。結局の所、単に闇バイト犯罪組織の撲滅出来れば、オレオレ詐欺や強盗事件がなくなるかのようにと言うのがマスコミの論調です。しかし、闇バイト撲滅の具体策を低維持することもなく、撲滅は「言うは易し、行うは難し」で実際には、どうしようもないと言っているように私には聞こえます。

 昨今増加している若者の詐欺や強盗等の犯罪防止にマスコミが重視する闇バイト組織の中枢への対策が有効だとは私には思えません。違法行為に手を染めてもお金を手に入れたいと思う人がいる以上、その人達が増えてい行けば行く程、悪党は手を変え品を変え犯罪予備軍とも言える遵法意識の低い人達を集め、利用して犯罪を実行していくはずです。ですから犯罪抑制には、犯罪組織に利用され犯罪に手を染める人を減らす事が最重要で、犯罪抑止の王道でしょう。それには銀座の強盗犯の様な10代の若者が犯罪に手を染めてしまう原因を探り、その人達の気持ちを理解して対策を講じる必要があります。

  犯罪に手を染めた若者達の年頃はようやく社会に出たばかりか、あるいは社会に出る寸前で、これからの長い人生努力次第で大きな希望、未来が開けているのに何故犯罪に手を染め、100万円そこそこでこれからの長い人生を捨ててしまうのか?それは未来に、自分の人生の将来に希望を見いだせないことに尽きると思います。

 私が若かった昭和の時代は学歴による多少の違いはあるせよ、社会に出て真面目にコツコツ努力すれば車や家を手に入れられ、今よりも豊かな暮らしが出来る明るい未来が開けていると若者が思うのが普通でした。それが1990年のバブル崩壊からの30年あまり日本経済は低成長で、平均所得は下がり続けています。昭和の時代所得は年々上昇していましたから子供も知らず知らずの内に収入は増えていくと感じ取っていたので明るい未来を思い描くことができました。しかし平成の失われた30年は所得も伸びず、いつまで経っても変わらない家庭の経済状況を目の当たりにした子供達は、未来も今と変わらない、自分の将来も今のままと見切ってしまい、未来に希望を持てなくなったのです。

 その最たるものが近年よく話題に上る「親ガチャ」でしょう。生まれた家庭環境によって、子供の未来は決まってしまう。努力では未来は変えられないという、若者の悲痛な叫びが「親ガチャ」です。そしてこの「親ガチャ」と言う言葉が世に出ると前後して闇バイトが出現しました。未来への希望をなくした若者が、現状を打破する手段として選んでしまったのが闇バイトであり、その希望のない若者を巧みに利用するのが闇バイト組織です。平成以降の低成長で格差が拡大し、固定化した閉塞した日本社会が生み出してしまったのが闇バイトでしょう。闇バイトに手を染める若者を責めるのは簡単ですが、闇バイト作り出した日本社会の問題を解決しなければ、手法を変えて犯罪組織は犯行を繰り返すことでしょう。

 闇バイトは格差が激しい発展途上国のスラム街で一切れのパンを手に入れるために、子供達が窃盗犯となる構図と同じです。先進国になったと思っていた日本社会の若者の多くは、スラムで育った子供達と同じ思いをしていると言う何とも寂しい現実を大人達は直視する必要があると思います。闇バイト犯罪集団に狙われやすい高齢者が実は闇バイト実行犯の若者を養成してしまっていたと言う事かもしれないのです。若者が未来に希望を持てる社会の実現することが安全安心社会の実現の要です。

 2016年8月に「格差が人類を滅ぼす」のコラムを書きました。当時貧困に苦しむイスラム教徒達がバングラデシュやフランスで大規模なテロを行い多くの犠牲者を出し手大きなニュースになっていました。テロの原因はやはり経済格差でしたが、外国で起こった宗教対立も絡むテロだったことで日本人にとっては遠い国の話のように感じていたのかも知れません。しかし、今その経済加来の問題が日本社会を不安に陥れているという同じ構図です。私はそのコラムで経済格差の是正こそが社会の安定の鍵として、それには金融資本主義に制限を加える必要があると記しましたが、その後も格差は拡大、固定化してしまいその結果、闇バイトが生まれました。

 また、具体的な金融資本主義に制限を加える方法として、2021年11月のコラム 「金融所得税50%で幸福度アップ」で不労所得を社会に還元することで格差を是正する事を記しましたが、今こそこれを実現して、持てる者から持たない者へ、蓄財をしている高齢者から貧しい若者へ富を再分配するときです。犯罪が蔓延する社会になってしまっては、富める者も安心して暮らせません。富める者は社会の安定、安心な暮らしのコストとして金融所得課税の強化を受け入れる、いや自ら申し出る覚悟が必要です。犯罪者は、富め者、持っている者を狙っていることを忘れてはいけません。

 世界一治安が良いと言われた日本ですが、今その安全安心な日本社会は崩壊の瀬戸際を迎えています。次の世代の若者達に安全安心な社会を引き継ぐ為に経たしも含めた昭和、平成を生き抜いた大人達が覚悟を決めるときだと思います。

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