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院長コラムで院長を知ろう!矯正歯科専門医 河合悟が思うこと。

2017年 新年のご挨拶院長コラム

2017/01/01 ご挨拶

昨年の漢字は「金」、「金」が選ばれたのは、リオオリンピックにおける日本人選手の「金」メダルラッシュや桝添前都知事の政治資金問題、築地市場の豊洲移転問題、東京オリンピックの巨額経費など政治と「金」(カネ)に絡む問題が次々と浮上したことが要因らしいです。しかし、私は「金」はちょっとピンと来ません。私の思う昨年の漢字は「驚」です。誰もがまさかと思う様なが事がいくつも起こりました。

 私もこのコラムで書きました、熊本地震イギリスのEU離脱、そしてトランプ大統領候補の当選の他にも天皇陛下の退位発言、障害者施設の19人刺殺事件、オバマ大統領の沖縄訪問など今までの常識では考えられない、過去の延長としては考えつかない驚くべき事が起こりました。

 コラムに書いた昨年の私の3大ニュース内、熊本地震は地震国日本ではどこで地震が起きても不思議はないのでしょうが、まさか熊本で大地震が起こるとは九州人は大いに驚いたことでしょう。南海トラフ大地震、東海地震等はしばしば話題になりますが、熊本で地震が起こる可能性があるという報道を見たこともありませんでした。過去に大きな地震はなくそのお陰で江戸時代に加藤清正が築いた熊本城の石垣も現在まで残っているのですから、熊本で大きな地震は起こらないと熊本市民が思うのはごく自然です。しかし熊本地震は起こり、熊本の人々は驚き、恐怖に震えました。自然災害に対する備えが必要なのは重々承知ですが、実際の所自然災害は突然予想を超える猛威を振るいますから「備えあれば憂いなし」とは行かないこと、自然の力に対して人間がいかに無力であるかを実感しました。

 これに対して、イギリスのEU離脱とトランプ大統領の登場と言う大方の人の予想を裏切る結果を引き起こしたのは、人の心の油断です。どちらの結果もそれぞれの国の多く国民の予想を裏切るものだったようで、結果が出た後にその結果を嘆き、抗議行動に出る人が沢山いることをニュースは伝えていました。しかし、その抗議行動を起こした人の多くは自分が積極的にEU残留に投票しなくても現状が変わるはずはない、自分が投票しなくても政治経験のない放言癖のトランプ候補が当選するはずはないと多くの人は思い、結果が出る前は選挙運動や投票に積極的に行動していなかったはずです。

 この二つの政治的な大きな変化は、「まさかそんな大きな変化が起こるはずがない」事も、人々が油断すれば、いとも簡単に起こるのだという教訓です。トランプ大統領は、中国に厳しい姿勢で臨むと明言しており、それを証明するかのようにこれまでの慣例を破り台湾の蔡英文総統との電話協議に踏み切りました。電話会談ぐらいと思うのが当たり前ですが、こうした小さな争いから中国と台湾そしてアメリカが戦争をする確率もゼロとは言い切れません。油断は禁物です。

 矯正歯科の分野でも昨年は驚く様な変化を目にしました。何気なくパラパラと見ていた学会雑誌に載っていた症例報告に驚かされました。治療後の写真と書いてあるのですが、私にはそれが治療前に見えたのです。写真の間違えじゃないかと思い、前のページの治療前の写真を見てみると凸凹な歯並びが。つまり凸凹な歯並びは改善していますが、前歯は前突したまま、そして唇も閉じにくい状態で治療が終わっているのです。論文には新しい矯正治療方法を使えば簡単に良好な治療結果を得たとなっていましたが、私にはとても良好な治療結果とは思えませんでした。私には従来からの矯正治療を基本に忠実に行えば、唇が自然に閉じられる正しい咬み合わせにする事が出来たのにと思えてなりませんでした。

 もう一つの驚きはある矯正歯科専門クリニックのホームページです。沢山の治療例が記載されていましたが、その多くは部分的な矯正治療で短期間に低価格で治療が終われると謳っていました。矯正治療は本来全ての歯を動かして、全体として正しい咬み合わせを作る治療です。咬み合わせの一部に異常が有ればその影響が他の所に有るのが普通です。一部分だけ治療をしても、他の部分に異常が有ればその影響でいずれ治療した部分も再び乱れてしまいます。それなのにこの矯正歯科では、多くの患者さんに部分的な矯正治療を行っているようでした。昔は矯正歯科の専門的なトレーニングを受けていない一般の歯科医が一部部分だけの矯正治療を行っていることがありましたが、矯正歯科の専門的なトレーニングを受け、専門クリニックとして開業している矯正歯科医が部分的な矯正治療を積極的に勧めているのには驚きました。

 矯正治療がより一般的なり現在では矯正歯科専門クリニックで矯正治療を受けている患者さんよりも、一般歯科や小児歯科で矯正治療の講習会を受講しただけで矯正歯科の基本的な知識、技術を習得していない先生の治療を受けている患者さんの方が多いのが現状です。こうした一般歯科や小児歯科で行われている矯正治療は患者さんの気になる部分(主訴としているところだけ)を治療することが多く、結果として短期間で、低価格で治療が終わったことになります。それに対抗するため矯正専門クリニックも短期間、低価格を目指さざる得なくなり、どんどん治療の質は低下して行ってしまったのだと思います。

 私には矯正歯科の現状が「悪貨が良貨を駆逐する」状況と思えてなりません。確かに歯科医師過剰時代で矯正歯科専門クリニックも増え過当競争なのかも知れませんが、それに怯えて治療のレベルを下げてしまったのでは、社会から「矯正治療は治らない、いい加減な治療」と見捨てられてしまうのではないかと矯正歯科の未来が心配でなりません。油断は禁物です。私は微力ではありますが、基本を見失うことなく自分自身の信じる矯正治療を行う事で、少しでも矯正歯科に対する社会の信頼を勝ち取るよう努力することが私の使命と改めて思いました。

 さて2017年の年頭に当たり、樋口矯正歯科クリニックの2016年の総括を報告させて頂きたいと思います。
 昨年は351名の新しい患者さんに受診していただくことができました。これで2015年末までの総新患数は12,408名となりました(グラフ参照)。
 また、この一年間に顎変形症(手術を必要とするような著しい顎の骨の大きさの不調和がある症例)で外科的矯正手術を施行した患者さんは過去最高の35名となり、開院以来の総数が448名となりました。外科的矯正治療を行う症例は以前は受け口が大半でしたが、現在で小下顎(顎が後ろに下がっている)が原因の上顎前突(出っ歯)症例が半数以上です。人類の進化の影響か?軟食の影響か?は分かりませんが、下顎骨が小さくなり後方に位置する患者さんが増加しているのを実感してます。

 昨年から小下顎の外科的矯正治療の診断のために睡眠時無呼吸症候群の検査機器を導入しました。小下顎症は形態的に気道が狭くなることで睡眠時無呼吸症候群を発症し易くなるのですが、従来はイビキや眠気等の問診で判断してました。検査機器の導入で睡眠時無呼吸症候群を的確に診断できるようになり、外科的矯正治療の機能的診断も行えるようになりました。

 樋口矯正歯科クリニックは単に歯並びと言う形態を改善するのではなく、「食べる」、「飲み込む」、「息をする」と言う口の機能の改善、維持向上を目指します。

 本年もクリニックの願いである"患者さんのことを家族と思い、皆様の健康の維持増進に貢献する"の気持ちを大切にスタッフ一同と地道に努力していくつもりです。
 本年も宜しくお願い致します。

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