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院長コラムで院長を知ろう!矯正歯科専門医 河合悟が思うこと。

基本軽視の歯科医療に明日はない院長コラム

2008/11/01 

 「簡単、すぐに、誰にでもできる」こんな言葉を、歯科医療関係の雑誌でしばしば見かけます。周知の通り歯科医院の経営環境は、厳しく生き残りをかけて歯科医達は、差別化を争っています。それに目をつけた歯科材料業者や治療技術の講習会を生業としたような歯科医師達が、「簡単、すぐに、誰にでもできる」と完成度の低い材料や上辺だけのテクニックを売りつけるわけです。
 矯正歯科の領域でもこのような一見新しい装置や、テクニックが蔓延しています。ストレートワイヤーテクニックに始まり、最近ではデーモンシステム、クリアアライナー 、インビサライン、ムーシールド等々数え上げればきりがありません。このような装置やテクニックを矯正歯科の基本を学んだ先生が、自分なりの経験の元に臨床で使用するならまだしも、矯正歯科を専門的に学んだこともない一般歯科や小児歯科の先生達を対称に売り込んでいるのが今の現状です。
 それでは矯正歯科を専門としている先生は基本を学んでいるかと言うとそれも、今では疑問です。現在では多くの歯科大学の矯正歯科でもワイヤーを歯科医師が曲げる必要ないストレートワイヤーテクニックで治療が行われ、矯正歯科の技術を学び始めた若い先生達が自分でワイヤーを曲げることで歯の動きをコントロールするという基本を学ぶ機会はありません。大学という教育機関に於いてさえ基本を大切にした治療が行われていないからです。大学病院で開業医が沢山の患者さんを手間をかけることなくある程度まで治療できるように考案された治療方法を採用する必要があるとはとても思えませんがそれが現実なのです。私が行っているツイードテクニックは、ブラケットを用いた全ての矯正治療の基本となる物で、1941年から現在までアリゾナ州ツーソンで毎年2回の講習会が開かれています(ちなみに、インストラクターは全てボランティアです)。私はこの講習会に矯正治療のルーツが知りたくて1987年に副院長である妻と共に参加しましたが、その当時日本人受講者は年間20~30名でした。それが、当時に比べれば経済的にも参加しやすくなったはずなのに、現在では年間数名と寂しい限りなのです。これが、基本を軽視した日本の矯正歯科の現状です。
 また、最近広く普及してきたインプラント治療についても「簡単、すぐに、誰にでもできる」とうたった講習会が大流行。一日、二日の講習会に参加すればすぐにインプラントができるようになる、そんなもんですか?だから、インプラントに関係した事故やトラブルをよく耳にする訳です。基本的な口腔外科の処置を学ばず、インプラントがそう簡単にできるとは思えません。
 さて最後に私も驚いた歯科大学での教育についての基本軽視を披露しましょう。私が学生だった頃、補綴(入れ歯を作ったり、歯にかぶせ物をしたりすることの実習は、模型上で削るところから始まり印象材で型とを採り石膏の模型を作って、金属で歯に被せるクラウン(冠)や入れ歯を一通り、最初から最後まで自分たちの手で作ってみて、その過程や勘どころを学んだものです。週1回の実習で半年かけてクラウン1個、入れ歯が一個、始めて作るクラウンや入れ歯に悪戦苦闘していました。最初から最後まで自分でする事で、補綴の基本を学んだわけです。ところが何とある私立歯科大学では、開業医と同じように、クラウンや入れ歯を作る工程途中から技工所に依頼して作ってもらうと言うのです。今の時代に歯科医が自分でクラウンや入れ歯を作っていないことは百も承知ですが、歯科大学の学生が基本を身につける上で、その作り方を一から学ぶことは非常に重要だと思います。全てを知った上でなければ、歯を削ることも、出来上がった入れ歯を調整することもきちんとできるはずはありません。上辺だけの知識、技術ではプロと言えないはずです。プロを養成する歯科大学の教育がこれでは、歯科医療に明日はないとしか思いません。
 電動工具が万能だからと言って、のこぎりで木を切れない大工さんに家を建てもらいたいですか?私はご免です。

私のクリニックでは、これからも基本を大切にスタッフ一同精進して行こうと思います。

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