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院長コラムで院長を知ろう!矯正歯科専門医 河合悟が思うこと。

医療の基本は信頼関係院長コラム

2005/08/01 

 先日、患者さんと治療に関して行き違いがありクレームを頂きました。
 その患者さんは高校生で、歯の大きさが大きく歯が生える隙間が足りないために歯並びが凸凹になっている状態で受診されました。患者さんとお母様とも相談の上、歯並びを全体に拡大することで凸凹を解消する治療方針を決定しました。そして、歯を抜かない場合矯正治療後の安定が得られにくい可能性があるとか、口元が少し前突した感じになるかも知れないなどのデメリットについても十分説明して治療を開始しました。
 患者さんが治療に余り熱心でなく通院も不定期で治療が少々長引きましたが、何とかブラケット装置を外し、歯を動かす治療を終えました。その後は新しくできあがった咬み合わせで、きちんと噛む習慣化がつくまで、保定装置という患者さん自身で取り外し可能な装置を装着することになりました。この時点で、患者さんが余り治療に熱心でないことがよく分かっていましたので、装置の必要性や、24時間装着していないとせっかく並んだ歯並びが元に戻ってしまうことを人一倍丁寧に説明しました。
 ところが、1ヶ月後の来院時には、装置の装着が不十分ですでに少し歯並びが乱れ始めていました。再度装置の重要性を説明し、装着を厳しく指示しましたが、その後も目に見えた改善はなく6ヶ月後には、再度、治療が必要と診断することになってしまいました。そこで、お母様にもお出で頂き再治療に至った経過と再治療の場合には歯を抜く必要がある事、そして治療費に関して再度装着する装置の費用として数万円が必要なことをお話ししました。
 それから、3ヶ月ほど後にお母様から電話をいたただきました。その内容は、装置を外してからわずか6ヶ月で再度治療が必要になり治療費がよけいに必要になるのは納得できないで、治療費を減額してほしいとのことでした。私は、再度治療が必要になった原因が治療の失敗ではなく、患者さんが指示に従わなかったためなので治療費の減額は出来ないと伝え、お母様はご不満の様子ながら一応納得されました。
 この電話の後、このままでは私も患者さんもそしてそのご家族も今ひとつ納得できず、気まずいまま再治療をして治療の結果が良くても、心の底から治療して良かったと思ってもらえない気がしてなりませんでした。そこで色々と考え、お互いに納得できる方法でこの問題を解決致しました。(当然ながら、私は治療費を減額したりはしていません。)
 このトラブルから、私は2つの事を再認識しました。一つは、患者さんとの信頼関係を気づくことの難しさ。治療を行う側として十二分に説明し、患者さん選択により治療法を決定したのも関わらず、こうした行き違いが起こる事の怖さを実感したわけです。
 そしてもう一つは、治療費とは何かと言うことです。治療費とは、何に対する費用なのでしょうか?医療が成功して病気が治ったと言う結果に対する費用でしょうか?もしそうなら、医師や、歯科医の大半は治療を行わなくなるでしょう?医療が人という生き物を対象とする以上、絶対に成功すると言うことはあり得ません。治療が上手く行かない可能性も必ずあるのです。治療が上手く行かなかったら、治療費を支払う必要はないのであれば、医療は成り立ちません。医療費は、結果でなくその過程についての費用のはずです。もし、ガンに冒され治療の結果が上手く行かず死に至ったとしても医療費は必要となるのです。医療従事者は、自身の経験と知識を最大限に生かし、治療に全力を挙げます。患者さんは、その医療従事者の経験と知識そして人間性を信じて身を任せ、その医療行為に対して費用を負担するのが医療費だと思います。だからこそ、医療には信頼関係が重要なのです。
 人によっては、アメリカのように契約書や、同意書を作る事で、トラブルを回避できると言いますが、人と人との信頼関係はそんな文書で築けるものではないでしょう。それで、トラブルが減るのなら、それば患者さんがその文書があるために、仕方なく納得しているだけで、心の底から治療に満足しているわけではないとしか思えません。
 私は、良好な治療結果を得るように最善の努力をすることは当然の事として、不幸にも不十分な治療結果となってしまった場合でも、患者さんにその結果を心の底から納得して受け入れた頂けるよう、治療に全力を傾けると共に患者さんと真の信頼関係を築くよう努力していこうとスタッフと共に決意を新たにしました。

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