先進国最悪の貧困率院長コラム
2023/08/01 社会問題
7月4日付の朝日新聞の記事見出し「子どもの貧困率11.5% 3年前より改善 ひとり親は半数近く困窮」が目に入り、エッ本当?貧困率が改善しているのについこの前のテレビニュースでは、フードバンク利用者が増えて配布する食材が足りないと言っていたのに。この食い違いはどう言うことと疑問に感じて少し調べてみたら、日本の貧困率が先進国最悪になっているという事実を知ることになってしまいました。政府に批判的な記事が多い朝日新聞がなぜか、日本の貧困率が先進国最悪になった事を伝えず、逆に貧困率が改善していると報じることに違和感と驚きを感じました。
それはさておき、貧困率(正しくは相対的貧困率)とは 等価可処分所得が中間値の半分未満の世帯員の割合で簡単に言えば 所得が中間の人の半分未満所得の世帯にいる人の割合と言うことです。日本では127万円未満が基準となり、2021年の最新調査で15.4%おおよそ6.5人に1人が貧困状態にある事になってしまいます。
前回調査時点の18年の貧困率からは0.3ポイント改善し、特に子どもの貧困率は2.5ポイント改善して11.5%に、ひとり親世帯は3.8ポイント改善して44.5%となっていますから、確かに朝日新聞の報道は間違っていません。貧困率改善の原因は、コロナ禍に於ける経済的支援策として配られて特別給付金等の財政支出増加が影響していると考えられます。国内だけを見ると貧困率は改善しているようにも見えますが、世界の国々と比較すると全く逆の一面が見えてきます。
経済協力開発機構(OECD)が公表する各国の貧困率の最新値でみると、15.4%の日本は米国(15.1%)、韓国(15.3%)に抜かれ先進国最悪となっているのです。何と日本よりも貧困率が高いのは、発展途上国のメキシコ、ルーマニア、コスタリカなどを残すのみと言う驚きの状態です。高度経済成長で先進国に仲間入りして国民の大半は日本が豊かな国と思っているのに、実際はOECD加盟国の内ビリから4番目の貧困率。政府も朝日新聞もこの事実から目を背けたいのか?国民に知られたくないのか?
かつて、米国は格差社会で不十分な社会保障や不安定な雇用などにより貧困率が高いと言われてきましたし、韓国も2019年に映画『パラサイト 半地下の人々』で厳しい貧困の実態が描かれ格差がひどい社会と認識されています。しかし、OECDのウェブサイトで各国の貧困率の経年変化を見ると米国、韓国は、貧困率が大きく改善傾向にある事が分かります。特に韓国は長期にわたって改善傾向が続いています。これに対して日本はそもそも貧困率の元となる国民生活基礎調査が、3年に1度しか実施されないので、政府自体が貧困率を重視していない事が分かります。
戦後の焼け野原から経済的復興を第一にひた走り、昭和40年代から50年代にかけての高度経済成長で先進国に仲間入りして、一時は世界第二位のGDPを誇る経済大国だった日本がいつの間にか先進国最悪の貧困率の国になっていたとは、何が起こったのでしょうか?戦後の全ての国民が貧しかった時代には、政治家も官僚も企業の経営者も含めて全ての国民が豊かになることを夢見て努力していました。その甲斐あって経済大国と言われる迄になったのですが、良い時は長くは続かずバブルがはじけて経済成長が止まりました。
そしてその時、社会を主導する立場で富を手にした官僚や政治家、そして経団連に名を連ねるような大企業の経営者達は、経済の先行きの不安、不況に対する恐怖で足がすくみ結局、自己の利益、権益を守る自己保身に走ってしまったのです。その結果、日本経済が世界を席巻したバブルの時代に日本企業の強さの源と褒めちぎられていた終身雇用は、目先のコスト削減のための首切りと非正規雇用の労働者の多用で、過去の遺物となってしまいました。当初はコスト削減で企業収益も改善したように見えましたが、熟練労働者の減少で本来の企業の収益力や成長力は衰え、結果として日本企業は世界から見れば競争力が弱くなり、失われた30年と言われる長い不況に見舞われることになったのです。
7月25日付けの日経新聞に「株長者」としては挙げられていたのはソフトバンクグループの孫正義会長兼社長(1位、約2兆2100億円)、キーエンスの滝崎武光名誉会長(2位、4933億円)、ニデックの永守重信会長兼最高経営責任者(CEO、3位、3386億円)をはじめとして、ほとんどは創業者で株式公開(IPO)を実施し大きな財産を手に入れています。ですから創業者と言え実は実業で手に入れた財産と言うより、投資で手に入れた財産です。株式投資による収益を得るためにはその元となる投資に元本が要りますから、結局持てる者はより豊かになり、持たない者はいつになっても貧困から脱出できない格差社会の象徴が「株長者」です。
そして大立て者となった「株長者」達が、実はバブル後の長く不況の続く日本を主導した世代です。その大立て者達は現在日本の貧困率を目にしたとき、日本社会をこんな状態してしまったことに責任そして虚しさを感じないのでしょうか?私は初めて1987年に訪れたニューヨークの5番街やサンフランシスコの繁華街の路上に空き缶を前に置いて座り込む多くの物乞いを目にして驚きました。豊かな国と思っていたアメリカで目にした格差社会の現実。このまま貧困率が上昇していけば、近い将来、銀座で天神で路上に物乞いが溢れる、あの時に見たアメリカの光景が現実になるのでは思うと私はゾッとしました。
岸田首相は、首相就任前「分配型社会」を目指すと言っていたのに、就任後は「分配」はどこへやら、「成長のための投資と改革」といつの間にか発言は大きく変わってしました。その際たる物が新NISA(少額投資非課税制度)です。収益を非課税で投資できる年間投資額を360万円に拡大して、投資を促し老後を見据えた資産形成を計ると言うのですが、そもそも投資する原資がない低所得者には何の役にも立ちません。庶民の味方を演じる為の言い訳、資産家に不利な金融資産課税強化を避ける為の目くらまし戦法でしかありません。
日本の社会を牽引する経済界の大立て者や政治家も自分一人だけの力で現在の地位を築いた訳ではないことを忘れないでほしいものです。元を辿れば、一般庶民の日々の暮らし、活動、努力の結果の分配あるいは搾取で築いた財産のはずです。それなのに先進国最悪の貧困率と言う不名誉な事実を突きつけられても、何一つ解決への行動を起こさないとは何と情けないことでしょうか。海外では貧困対策などの社会奉仕活動に巨額の寄付をする資産家の話を良く聞きますし、アメリカの「愛国的な百万長者」を名乗る超富裕層の団体は自らに格差是正のために「富裕税」の導入を求めるくらいです。しかし日本で資産家が寄付や増税で格差是正に進んで協力ししょうした話を聞いたこともありません。今からでも遅くはありません、今こそ大立て者、成功者が、経済的弱者に手を差し伸べる行動を起こしてもらいたいものです。
それと同時に、資産や権力を持たない弱者は持てる者に対抗する手段として選挙での投票を活用することが重要です。経済的勝者集団の経団連も大企業労働者集団の連合も医師や歯科医や薬剤師もそれぞれの団体から政治献金を行い、自己利益の拡大に政治を利用しようとしています。しかし、何の後ろ盾もない庶民、経済弱者も選挙の1票だけは、株長者や大立て者と対等に持ち、使えますから、これが弱者の唯一の対抗手段。その事を忘れず、投票所に足を運び一票を投じる事が貧困脱出の第一歩だと思います。
それはさておき、貧困率(正しくは相対的貧困率)とは 等価可処分所得が中間値の半分未満の世帯員の割合で簡単に言えば 所得が中間の人の半分未満所得の世帯にいる人の割合と言うことです。日本では127万円未満が基準となり、2021年の最新調査で15.4%おおよそ6.5人に1人が貧困状態にある事になってしまいます。
前回調査時点の18年の貧困率からは0.3ポイント改善し、特に子どもの貧困率は2.5ポイント改善して11.5%に、ひとり親世帯は3.8ポイント改善して44.5%となっていますから、確かに朝日新聞の報道は間違っていません。貧困率改善の原因は、コロナ禍に於ける経済的支援策として配られて特別給付金等の財政支出増加が影響していると考えられます。国内だけを見ると貧困率は改善しているようにも見えますが、世界の国々と比較すると全く逆の一面が見えてきます。
経済協力開発機構(OECD)が公表する各国の貧困率の最新値でみると、15.4%の日本は米国(15.1%)、韓国(15.3%)に抜かれ先進国最悪となっているのです。何と日本よりも貧困率が高いのは、発展途上国のメキシコ、ルーマニア、コスタリカなどを残すのみと言う驚きの状態です。高度経済成長で先進国に仲間入りして国民の大半は日本が豊かな国と思っているのに、実際はOECD加盟国の内ビリから4番目の貧困率。政府も朝日新聞もこの事実から目を背けたいのか?国民に知られたくないのか?
かつて、米国は格差社会で不十分な社会保障や不安定な雇用などにより貧困率が高いと言われてきましたし、韓国も2019年に映画『パラサイト 半地下の人々』で厳しい貧困の実態が描かれ格差がひどい社会と認識されています。しかし、OECDのウェブサイトで各国の貧困率の経年変化を見ると米国、韓国は、貧困率が大きく改善傾向にある事が分かります。特に韓国は長期にわたって改善傾向が続いています。これに対して日本はそもそも貧困率の元となる国民生活基礎調査が、3年に1度しか実施されないので、政府自体が貧困率を重視していない事が分かります。
戦後の焼け野原から経済的復興を第一にひた走り、昭和40年代から50年代にかけての高度経済成長で先進国に仲間入りして、一時は世界第二位のGDPを誇る経済大国だった日本がいつの間にか先進国最悪の貧困率の国になっていたとは、何が起こったのでしょうか?戦後の全ての国民が貧しかった時代には、政治家も官僚も企業の経営者も含めて全ての国民が豊かになることを夢見て努力していました。その甲斐あって経済大国と言われる迄になったのですが、良い時は長くは続かずバブルがはじけて経済成長が止まりました。
そしてその時、社会を主導する立場で富を手にした官僚や政治家、そして経団連に名を連ねるような大企業の経営者達は、経済の先行きの不安、不況に対する恐怖で足がすくみ結局、自己の利益、権益を守る自己保身に走ってしまったのです。その結果、日本経済が世界を席巻したバブルの時代に日本企業の強さの源と褒めちぎられていた終身雇用は、目先のコスト削減のための首切りと非正規雇用の労働者の多用で、過去の遺物となってしまいました。当初はコスト削減で企業収益も改善したように見えましたが、熟練労働者の減少で本来の企業の収益力や成長力は衰え、結果として日本企業は世界から見れば競争力が弱くなり、失われた30年と言われる長い不況に見舞われることになったのです。
7月25日付けの日経新聞に「株長者」としては挙げられていたのはソフトバンクグループの孫正義会長兼社長(1位、約2兆2100億円)、キーエンスの滝崎武光名誉会長(2位、4933億円)、ニデックの永守重信会長兼最高経営責任者(CEO、3位、3386億円)をはじめとして、ほとんどは創業者で株式公開(IPO)を実施し大きな財産を手に入れています。ですから創業者と言え実は実業で手に入れた財産と言うより、投資で手に入れた財産です。株式投資による収益を得るためにはその元となる投資に元本が要りますから、結局持てる者はより豊かになり、持たない者はいつになっても貧困から脱出できない格差社会の象徴が「株長者」です。
そして大立て者となった「株長者」達が、実はバブル後の長く不況の続く日本を主導した世代です。その大立て者達は現在日本の貧困率を目にしたとき、日本社会をこんな状態してしまったことに責任そして虚しさを感じないのでしょうか?私は初めて1987年に訪れたニューヨークの5番街やサンフランシスコの繁華街の路上に空き缶を前に置いて座り込む多くの物乞いを目にして驚きました。豊かな国と思っていたアメリカで目にした格差社会の現実。このまま貧困率が上昇していけば、近い将来、銀座で天神で路上に物乞いが溢れる、あの時に見たアメリカの光景が現実になるのでは思うと私はゾッとしました。
岸田首相は、首相就任前「分配型社会」を目指すと言っていたのに、就任後は「分配」はどこへやら、「成長のための投資と改革」といつの間にか発言は大きく変わってしました。その際たる物が新NISA(少額投資非課税制度)です。収益を非課税で投資できる年間投資額を360万円に拡大して、投資を促し老後を見据えた資産形成を計ると言うのですが、そもそも投資する原資がない低所得者には何の役にも立ちません。庶民の味方を演じる為の言い訳、資産家に不利な金融資産課税強化を避ける為の目くらまし戦法でしかありません。
日本の社会を牽引する経済界の大立て者や政治家も自分一人だけの力で現在の地位を築いた訳ではないことを忘れないでほしいものです。元を辿れば、一般庶民の日々の暮らし、活動、努力の結果の分配あるいは搾取で築いた財産のはずです。それなのに先進国最悪の貧困率と言う不名誉な事実を突きつけられても、何一つ解決への行動を起こさないとは何と情けないことでしょうか。海外では貧困対策などの社会奉仕活動に巨額の寄付をする資産家の話を良く聞きますし、アメリカの「愛国的な百万長者」を名乗る超富裕層の団体は自らに格差是正のために「富裕税」の導入を求めるくらいです。しかし日本で資産家が寄付や増税で格差是正に進んで協力ししょうした話を聞いたこともありません。今からでも遅くはありません、今こそ大立て者、成功者が、経済的弱者に手を差し伸べる行動を起こしてもらいたいものです。
それと同時に、資産や権力を持たない弱者は持てる者に対抗する手段として選挙での投票を活用することが重要です。経済的勝者集団の経団連も大企業労働者集団の連合も医師や歯科医や薬剤師もそれぞれの団体から政治献金を行い、自己利益の拡大に政治を利用しようとしています。しかし、何の後ろ盾もない庶民、経済弱者も選挙の1票だけは、株長者や大立て者と対等に持ち、使えますから、これが弱者の唯一の対抗手段。その事を忘れず、投票所に足を運び一票を投じる事が貧困脱出の第一歩だと思います。