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院長コラムで院長を知ろう!矯正歯科専門医 河合悟が思うこと。

マイナ保険証の末路院長コラム

2023/04/01 医療・健康

マイナンバーカードを健康保険証として利用するマイナ保険証を医療機関で利用できる様にする為、医療機関へのマイナ保険証データ読み取り装置の設置期限が3月31日迄だったので、本来なら原告の全ての医療機関、薬局でマイナ保険証が利用できるハズでした。しかし、現状はどうなっているのでしょうか?樋口矯正歯科クリニックでは、申し込みから1年8ヶ月の歳月を経て昨年11月に読み取り装置の設置が完了し、マイナ保険証の利用が可能な体制になりましたが、現在マイナ保険証が利用可能な医療機関、薬局は全体の半数以下のようです。

  マイナ保険証の導入は一昨年から進められていましたが、昨年10月河野デジタル大臣が「2024年秋に現在の健康保険証の廃止を目指す」と表明した事から、にわかにマイナ保険証が注目を集めることになりました。それ以前は国民も医療機関も現在の保険証と併用するのですから、マイナ保険証の取得もマイナ保険証読み取り装置の設置も急ぐ必要は無いと思っていた感じでした。しかし、保険証廃止となると話が違います。医療機関は読み取り装置設置が必須となり大騒ぎになりました。

 しかし、医療機関約180,000施設、薬局約60,000施設に3月31日までに設置が完了するのは容易なことではなく、結局厚生労働省は12月に届け出をすれば設置義務を延期する通達を出す羽目になりました。

  何とかクリニックに設置できたマイナ保険証読み取り装置ですが、設置から4ヶ月でマイナ保険証を持参され得た患者さんは10名未満で有効活用とはほど遠い現状です。しかしマイナ保険証読み取り装置を導入すると同時にオンライン資格確認が行える様になりました。これは、患者さんが持参された保険証や保険請求用パソコン(レセコン)から患者さんのデータを入力するとその保険証が有効かどうかをオンラインで確認でき、正しいデータをレセコンに取り込めるシステムです。

 導入当初これば便利とレセコンからオンライン資格確認を行いオンライン資格で示されたデータをレセコンに取り込んでいました。ところがここで問題が発生したのです。患者さんの持っている保険証のデータとオンライン資格確認で得られたデータの食い違いです。勤務先が変わり新しい保険証を持参されたのにも関わらず、オンライン資格確認で得られたデータは以前の保険証のデータままだったのです。保険証が更新されているのにオンラインのデータの更新が行われていないのです。もし、オンライン資格確認のデータを信じて、このまま保険請求すれば、該当なしで請求が返戻される事になってしまいます。それ以来、クリニックの受付ではオンラインで資格確認を行うと同時に従来通り保険証のデータの確認もする事が必要となり、効率化どころか手間が増えることになってしまいました。

 そしてもっと驚いたのは、患者さんが持参された保険証のデータを入力してオンライン資格確認を行ったところ、該当なしと表示されたことでした。それが最近勤務先が変わったのなら、まだ仕方がないとも思いますが、もう何十年も同じ保険証を持っている方でした。そしてその保険者は、何と何と厚生労働省の公務員共済でした。おまけにそれがお一人でなく、数名の厚生労働省公務員共済加入の患者さんは全て該当なしと表示されました。つまり、マイナ保険証を推進している本家本元の厚生労働省の公務員共済が保健所データの入力を行っていないと言う事実が判明したのです。その後、文部科学省の公務員共済も同じように該当なしと表示されることが分かり、国家公務員共済がデータの入力をきちんと行っていないことが分かりました。

 保険証データが不正確になる根本的な原因は、健康保険制度の複雑さが原因です。健康保険と一口に言いますが、それを運営しているのは大企業勤務者が加入する組合健保、中小企業従業員が加入する協会健保、公務員が加入する公務員共済、自営業者などが加入する国民健康保険、そして医師や弁護士等の同業者を組合員とする国民健康保険組合と数多くの組織が健康保険を運営しています。そしてそれぞれの保険者が加入者のデータを管理しており、それを社会保険支払基金、国保中央会が運営するオンライン資格確認システムに登録する事になってしまいます。この登録は個々の保険者任せですから、データのくいちがいが起こっても不思議はありません。

 国民皆保険、国民皆年金の制度が出来上がったのは、どちらも私が生まれた昭和30年代。当時は労働者は終身雇用が前提でしたから、終身雇用を前提として年金や社会保険の制度設計が行われました。しかし、その後の高度経済成長、そしてバブルの崩壊を経て日本人の労働環境は大きく変化し、終身雇用が大幅に減少して転職が一般的になりました。その結果、制度発足時には想定されていなかった健康保険や年金の加入先の変更が頻繁に行われるようになり、加入者情報の変更増加に体制が追いついていないのです。

 転職が一般になった現在、転職の度に年金や社会保険の加入先を変更するのは労働者社も大変ですし、年金保険の運営機関の負担も大きく増加しています。このような不合理を解消するには、やはり年金及び社会保険の一元化しかありません。労働者にも保険者側にもメリットは多いはずです。しかし一元化すれば当然合理化が進み、健康保険組合の雇用の削減が起こり、同時に健康保険に天下りにしていた役人達の行き場所がなくなります。保険者の組織防衛が原因で一元化は現在まで論議すらされていまん。行政の不利になるような保険者一元化の問題を放置したまま、いかにも行政のデジタル化が進んでいるように国民に見せるために、政府がパフォーマンスに使ったのがマイナ保険証の導入と保険証の廃止と言う訳です。

 政府のパフォーマンスの犠牲となるのは、国民です。紙の保険証がなければ、オンライン以外で保険情報を確認できませんから、もしも情報が正しく更新されておらず非加入となっていたら、診療を受けられない事態が発生します。もしその方が重病だったら、命に関わります。命を保証するとも言える保険証を簡単に廃止して本当に大丈夫でしょうか?このまま本当に保険証を廃止して、公務員加入の官僚が病院の窓口で無保険者として診療を拒否され命を落とすことなったら、自業自得、とんだブラックジョークです。

 今のところマイナ保険証やオンライン資格確認を利用している患者さんも医療機関も少ないのでトラブルの報告も多くはありませんが、利用が増えるに従ってトラブルも飛躍的増加して、マイナ保険証、オンライン資格確認のシステムの欠陥が社会問題となる日が近々やってくるハズです。その結果、印刷されたアナログの保険証の発行は今まで通り続けられ、いつしかマイナ保険証は忘れられていく運命だと私は思います。

 役立たずのマイナ保険証に投入された予算は600億円以上!!費用対効果を無視した政治家や役人のパフォーマンスには、毎度のこととは言え呆れて物が言えません。

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