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院長コラムで院長を知ろう!矯正歯科専門医 河合悟が思うこと。

品格院長コラム

2022/10/01 社会問題

7月に安倍元首相が、8月には京セラの稲盛和夫さんが、そして9月にはエリザベス女王と連続して世界、社会に影響を与えてきた方々が、世を去られました。亡くなられた3名の生前を偲ぶ記事やニュースで、生前の言動、立ち居振る舞いを改めて見直すことになりましたが、その時「品格」という事が頭に浮かびました。

 96年のエリザベス女王の人生を振り返る映像に映る女王の立ち居振る舞いは、20代の即位前から現在に至るまで常に「品格」を感じさせる物でした。女王ですから、当たり前かも知れませんが、何者にも臆することなく、誰に対しても差別無く接する姿勢が品格を醸し出ているように思えました。

 京セラ創業者の稲森和夫さんは、鹿児島の田舎育ちで大学受験に失敗したと言う逸話もあり、若い頃はがむしゃらに働いた苦労人と言われています。エリザベス女王とは全く違う家庭環境、経済環境での90年の生涯でしたが、やはりその立ち居振る舞いは品格を感じさせる物でした。政府の要人や経済界の大物に対しても堂々と自分の意見を述べるのと同時に末端の社員とも居酒屋で議論を尽くすように、地位や肩書きに左右されることなく信念を貫き平等に人に接する姿勢に私は何時も尊敬の念を抱いておりました。

 そのお二人と比べて安倍元首相の言動立ち居振る舞いはどうでしょう?国会で自分の意見を否定する野党議員にヤジを飛ばし、自分に都合が悪い質問をされれば感情むき出しで高圧的に否定する姿を見て多くの人は何を感じるのでしょうか?安倍元首相は昭和の妖怪とも呼ばれた岸首相の孫であり、安倍 晋太郎外相の子供で、明治以来の政治家一族という華麗な家系、いわゆる育ちの良い人物ですから、稲盛さんよりもよほどエリザベス女王に近い育ちのはずですが、私にはどこを探しても品格を感じることは出来ませんでした。

 その品格を醸し出すもの、源泉は何なのでしょう?持っている財産でしょうか?あるいは肩書きでしょうか?品格がある人は、どんな時でも堂々としている事がまず第一ではありませんか?それでは堂々としているには 何が必要か?それは多分、自分に引け目がないこと、言い換えれば自分の心にやましいことがない事、これが基本だと思います。最も品格があると感じるエリザベス女王の考えを聞いてみたいところですが、女王様は自分の考えや心の内を明かすことはありませんから、残念ながらそれを知ることは出ません。しかし、名代の名経営者稲盛さんは多くの著書や盛和塾での発言から、稲盛さんの生き方、考え方について伺い知ることが出来ます。

 その中の品格を感じさせると私が思った言葉は、物事を決断するときそれが「人間としてその決断が正しいと思う」かどうか?儲かるとか、得をするとかと言う判断基準ではなく、人としてそれが正しいと思える決断をすべきと言う言葉です。正しいことをしていれば引け目を感じることはありませんから、何時も堂々としていられるので自然と品格が出てくると思うのです

 稲盛さんの晩年の活躍は何と言っても経営破綻したJALの再建でしょう。JAL再建の逸話の中で私が印象深かったのは、JALのアライアンス(航空会社の提携グループ)の問題です。稲盛さんが2010年にJALの会長に就任してすぐ、加盟するアライアンスの契約を見直さなければいけない問題があり、当時JALはアメリカン航空を盟主とするワンワールドアライアンスの傘下でした。しかし、JALの再建のため多額の資金提供を行うという条件で、スカイチームというアライアンスのトップだったデルタ航空が提携を求めてきました。スカイチームは路線数も多かったため、資金を出してもらえるならアライアンスを乗り換えた方が得という意見も多くありました。しかし、稲盛さんは「損得で言えばデルタと組んだほうが良い。だが、アメリカン航空には長年お世話になっている。」としてワンワールドへの残留を決めました。これが正に「人として正しいことをする」と言う判断基準です。その後、JALとワンワールドの提携は強化され、研修プログラムの提供などの交流が一層強化されたことで、JALは2012年に行われた顧客満足度調査で首位に返り咲いたのです。

 それに比べて安倍元首相の生き様はどうでしょう?旧統一教会との癒着問題で明らかになったように選挙で有利になるなら、社会的に問題を起こした集団も利用すると言う、損得、利害を基準とした判断。人としての正義がどこにもありません。森友学園の問題でも夫人の関与指摘されると国会で大見得切って否定して、それが引き金となって財務省職員の自殺まで引き起こしたのにも関わらず、真相を述べることさえなく、権力でねじ伏せてしまっています。「人として正しいこと」なんて、頭の片隅にもないのでしょう。そんなやましい事までして、政治家、首相の座にたどり着いたのですから、スネは傷だらけ、弱みを突かれると威圧するように虚勢を張って吠えるしかありません。そこに品格が無いのは当然です。

 私は歯科医師として社会に出てから損得よりも自分が正しいと思う事、つまり信義を何事にも優先して生きてきました。それは稲盛さんのように崇高な考えを元にしたのではなく、ただ単に自分が納得できないことはしたくないという我が儘、ある意味子供っぽさがそうさせていたようにも思います。20数年前に私が在職していた医局で前教授による研究費の私的利用が発覚した時、私は当時医局のOBの集まりである同門会の理事でした。理事会で金銭の返却よりもまず前教授に謝罪を求めることを提案しましたが、多くの理事は、矯正歯科業界での立場や子息の脅威等々の利害から積極的に問題解決を図ろうとせず、問題をうやむやに闇に葬ろうとしました。私はそんな同門会の一員でいる事を良しとせず同門会を辞めてしまいました。その時ある先輩矯正歯科医から「そんな事をして一人でこの業界でやって行けると思うな」と言われましたが、その時私は、「先生は損得の世界に生きる人ですが、僕は信義の世界に生きるのでもう二度と声をかけないでください。」と言ったのを今でも鮮明に覚えています。当時は「売り言葉」と「買い言葉」で言ってしまい、後になって本当に矯正歯科医として生きていけるのか不安になった事もないとは言えません。しかし65歳の今は、これまで矯正歯科医としてスタッフ、家族を守ってこられたのは、損得に左右されず、自分の信念に従ってきたから今があると思えるようなりました。 私の判断の基準は、自分が正しいことそして第三者が見ても正しいと思えることです。誰しも自分には甘くなりがちですから、第三者の目で自分の行動をチェックしてみることが大切だと考えているのです。歯科医としての判断基準は、この患者さんが自分の家族ならどうするか?それが全ての判断基準、家族にする治療と同じ治療をするのが正しいことと考えていますか。その基準に従うと、舌側矯正治療もマウスピース矯正も医療としての矯正治療の目標を達成できると思えないので、家族にそんな矯正治療をする事はありませんから、クリニックでは舌側矯正治療もマウスピース矯正も行っていません。

 かつてクリニックが苦しかった時に、見えない矯正装置(舌側矯正)をしないでやって行けるのかと不安が頭をよぎることもなかった訳ではありませんが、やはりそこは損得よりも自分の我が儘、正義?を優先してきました。その甲斐あって今、忙しい毎日が送れていると思っています。

 今後も自分の心に忠実に正義を貫き、エリザベス女王とは行きませんが、品格ある稲盛さんに少しでも近づけるように年を重ねていきたいと思っています。

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