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院長コラムで院長を知ろう!矯正歯科専門医 河合悟が思うこと。

日本、バーゲン中!院長コラム

2021/08/02 政治・経済

オリンピックが開幕しましたが、コロナウィルスの感染拡大で無観客での開催となり海外からの旅行者の姿はなく、オリンピックで景気浮揚を狙った政府のもくろみは無残に打ち砕かれました。

 2012年の第二次安倍内閣の発足以来、自民党政権は景気浮揚策の柱に観光立国を挙げ、ビザ発給要件の緩和措置をはじめとして官公庁の設置やクールジャパンプロモーションを積極的行い、外国人観光客は2012年の約800万人から2019年には約3,200万へと約4倍に増加しました。外国人観光客の増加による経済的影響は大都市圏ばかりでなく、地方にも及びインバウンド消費が地方経済の活性化の切り札と言われるまでになっていました。そしてその総仕上げがオリンピックと言うのが安倍元首相の構想だったわけです。

 政府の観光立国政策で外国院観光客が増加した面も確かに有りますが、私は四季の移り変わりが見せる日本の自然の素晴らしさ、そして「おもてなし」の心が外国人を日本に引きつけたのだと思っています。しかし、それにも増して外国人観光客が激増した原因は日本の物価の安さです。この事は2015年5月のコラム「円安とグローバル化」にも書いていますが、外国人から見た日本は全てが安い国、衣食住、全てがバーゲン中の国、外国人が年中バーゲン中の日本へ行きたいのは、ある意味当たり前です。

 しかしインバウンド消費が増えて景気が良くなった様に見えていましたが、コロナ禍でインバウンド消費が一気に消失したことで、日本のバーゲンの問題点が目立ってきました。その第一が低賃金です。内閣府によると2021年の最低賃金はフランスと英国が1302円、ドイツが1206円、米国は州平均で1060円、これに対して日本の最低賃金は約800円、主要先進国の中では断トツの低さです。日本と同じように輸出中心の産業構造で何かと比較される韓国よりも、いつの間にか安い労働力になってしまっています。日本人は先進国と思っていますが、外国人の目には日本人が安い労働力、労働者と写っているのかも知れません。

 賃金が安いですから、それで暮らしていけるために当然物価も安くなります。特に外食の安さは、ビックリ、ビックリ。博多ラーメン店を海外展開している一風堂のラーメンの各国の値段を調査したニュースをテレビで見ましたが、ニューヨークやフランスだけでなく東南アジアでも1,700円でした。その一風堂のラーメンが日本なら800円程度で食べられるのですから、外国人にしたら嬉しくてたまらないでしょう。世界の物価を比較する時によく使われるマクドナルドのビックマックの価格を比較したビックマック指数で2021年現在日本は25位、390円、アメリカは620円(5.66ドル)、先進国の中ではこれ又断トツの安さで、韓国(430円)よりも安い状況です。

 先程の一風堂のニュースでニューヨークのセントラルパークを散歩している人にラーメン値段が高くないかとインタビューしたところ、逆にリーズナブルと皆さん答えていました。そしてその次に所得を尋ねると皆さん10万ドル以上、日本なら1,000万円以上の収入と答えていました。

 物価が安いから所得も低いのか? 所得が低いから物価が安いのか?卵が先かニワトリが先かは分かりませんが、とにかくどちらも安いのが日本の現状です。それでも日本がエネルギーも食料も自給率100%で輸入の必要がないなら何も困りませんが、エネルギーも食料も自給率が低く輸入に頼っているのですから、実は安さが大問題です。

 輸入される食料品例えばサーモンや海老は中国と取り合いになり、安い日本は買い負けて公賓非綱商品は中国に取られてしまっている有様です。エネルギーにしても円安が続いていますから、ガソリンの価格もアメリカの倍以上です。海外の国々は物価が上昇していますが、日本はデフレ物価が上がらないので、年々輸入品は高くなっていく事になってしまいます。。

 輸出で稼ぐ大企業は海外生産を増やし、為替の変動が収益に影響しないように対策を採っていますが、中小企業や庶民の暮らしは為替の影響をもろに受けてしまします。この20年で日本人平均年収は約100万円下がったと言われていますが、輸入品をどれだけ買えますか?身近な例ではルイヴィトンのバックを年収でいくつ買えるかを比べたら、それはビックリ仰天だと思います。円安の影響と海外の物価上昇で、多分ブランドのバックの値段は2倍近くなっていますから。

 まだまだ安なったのは所得だけででははありません。庶民のなけなしの資産も海外から見れば大幅に安くなっているのです。少し前の東京のタワーマンションを中国人が買いあさっていると言われていましたが、それだけではなく外国人から見ると風光明媚な立地にある日本の別荘の価格はもうただただバーゲン価格。高齢化で売りに出される北海道や軽井沢、箱根の別荘を沢山の外国人が買い込んでいます。

 苦労して築いてきた財産も海外から見ればどんどん目減りしている状況です。その元凶は二つの過去のトラウマに囚われている政府です。一つは高度成長期の物価上昇のトラウマ、もう一つは1985年のプラザ合意による急激な円高で輸出産業がダメージを受けたトラウマです。どちらも昭和の時代話ですが、この経験が日本政府の政策に大きく影響しているのです。

 この二つのトラウマから未だに日本では、「円高は悪」との認識が共有され、為替が少しでも円高に振れるとニュースでも大騒ぎしています。もう発想を転換して、円高になればガソリンも食料品も安くなりますし、海外から見たら自分が住んでいる家の価値も上がると言う発想にならなくてはいけません。個人個人がグローバルな発想になるのです。

 その一方政府も物価の上昇、賃金の上昇に真剣に取り組んでもらいたいと思います。政府は最低賃金を上げていると主張していますが、前述の通り上昇率は海外に見劣りします。コロナ禍にも関わらず大企業は昨年過去最高利益を上げた企業が続出していますが、従業員給与が過去最高という報道を見ることはありません。儲かっている企業が物価が上がらないことを理由に労働者に正当な賃金を支払っていないために大企業の内部留保、資産はどんどん積み上がりこれも過去最高です。言ってみれば庶民を搾取して大企業が利益を上げている構造です。本来なら、労働組合が力を発揮するところでしょうが、日本の労働組合は大企業となれ合い、労働組合の総本山の連合会長は経団連からちやほやされて経営者サイドとまともに向かった事もありません。

 この状況を打破して賃金を開けるのはやはり法律に頼るしかありません。企業は株主に利益のどれだけを配当として支払うかの配当性向を示して投資を促しますが、従業員に収益に対する人件費の割合である労働分配率を提示するのを見たことがありません。現在、法人税率は企業の規模によって決まりますが、法人税率を労働分配率とリンクさせて労働分配率が低い企業の法人税率を上げるようにします。それに加えて所得格差の元凶である金融所得を抑えるため株主への配当が多いつまり配当性向が高い企業の法人税も上げます。法人税を労働分配率と配当性向にリンクさせることで、企業の経営方針を株主重視から労働者重視へと転換させ、所得を底上げしていくのです。 

 個人のグローバル思考と企業の労働者重視への経営方針の転換で賃金と物価を上昇させ一刻も早く低価格志向の日本のバーゲンを終わらせるべきです。高品質な日本製品、サービスを適正価格で提供する日本のブランド化戦略こそが、国民の幸せな未来へのカギだと思います。

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