あっと言う間に20年院長コラム
2021/07/01 医療・健康
2001年の7月1日に樋口矯正歯科クリニックの院長に就任してから、今日で20年。本当にあっと言う間でした。何時もバタバタしているので、実は今日が20周年だったことも、すっかり忘れていました。当時から在籍している家族のようなスタッフから花束が届いて気がついたくらいです。
思い起こせば20年前、義父の前院長と経営方針の違いから独立を決意し、長女の中学入試の結果発表の翌日に直談判に及びクリニックを買い取りました。あっと言う間と感じますが、その長女も今はもう30代、我が子の成長を思えば20年と言う時間の長さを改めて感じます。その間にクリニックにも様々な変化がありました。
目に見える変化は2004年の法人設立と2005年のクリニックの移転です。2005年はもう忘れてしまっている方も多いと思いますが、福岡が経験したことない大きな被害をもたらした福岡西方沖地震の年です。クリニックの被害は大きくありませんでしたが、開院から30年近く経ち古くささが気になっていましたので器材も全て更新して新築移転する事にしました。新築に当たって、患者さんがホッとできて治療に関係なく行きたくなる、そして私の家に遊びに来たような診療室を目指して、設計、デザイン、家具選びまで私が行いました。
診療内容についても大きく変化しています。2012年には妻の副院長が福岡口臭クリニックを開設し口臭治療を開始しました。開設当初は単に当然ながら一般的な口臭治療を行っておりましたが、治療の経験を積むに従い根本的な口臭の改善には、口腔機能、特に舌の機能の向上が重要と気づきました。これから舌運動トレーニングの方法を試行錯誤し、クリニック独自のトレーニング方法を確立することが来ました。舌運動トレーニング法は、口臭治療だけでなく矯正歯科治療の治療結果の向上、治療後の正常咬合の維持安定にも大きく役立つことになり、口臭クリニックの開設で矯正歯科治療の幅が大きく広がりました。
その後、2015年には以前クリニックに勤務していた歯科衛生士からの要望を受け、訪問診療部を開設しました。私は一般的な歯科治療の経験が乏しいため訪問歯科治療の経験豊富な歯科医師を探して、歯科治療と言うよりも「食べる」と言う口腔機能の維持を主眼とした訪問診療を行っています。矯正歯科治療と手法は違いますが、口腔機能の向上という目的からすると、矯正歯科治療や口臭治療で口腔機能向上について学んだことが、訪問歯科でも大いに役に立っています。
そして最後は矯正歯科の治療内容についての変化です。私が院長に就任した当時は、「矯正治療は子供が受けるもの」と言うのが一般的な認識で、ほとんどの矯正歯科医院は住宅地の一般歯科からお子さんの患者さんを紹介してもらうことで成り立っていました。しかし、少子化に加えて共働き世帯の増加で遠くの矯正歯科まで通院する時間的余裕がなくなったこと、そして小児歯科の増加で家の近くでも矯正治療が受けられるようになった事で、繁華街の矯正歯科から子供達の姿が消えて行きつつありました。
そんな時知り合いの一般歯科医から中年の歯周病の患者さんの矯正治療を依頼されました。放置すれば直に抜歯が必要になるとのことでしたから、従来の矯正歯科の常識では治療が症状を悪化させる可能性が高いとされていましたが、私なりの考えに従って矯正治療を行ったと所、咬み合わせの改善に伴い歯周病も大きく改善して歯を長持ちさせることが出来ました。そしてクリニックは子供の矯正治療から大人、中高年の矯正治療へと治療対象の年齢層を大きく広げ、それに伴い受診者数も増加していきました。当時中高年の患者さんの治療は私にとって大きなチャレンジでしたが、今では歯周病の治療に矯正治療が必須だと考えています。そして歯科領域でも矯正治療で正常な咬み合わせを作り、歯を支える歯槽骨への正常が咬合力を伝える事が歯周病の改善に有効である事が認められつつあります。
多くの中高年の患者さんの矯正治療を経験していく中で、次に目に付くようになったのが骨格的な不正咬合、特に下顎が小さく後ろに位置している小下顎症の患者さんです。小下顎症の患者さんは、下顎骨に付いている舌が後方にあるために気道が細くなり呼吸機能障害を起こしやすいのです。息がし難いため上を向いて寝ることができず、眠気がひどく、気道を開くために顎を突き出すので猫背でストレートネックになり、体力が落ちる中高年では高頻度で睡眠時無呼吸症候群を発症します。
中高年の患者さんは虫歯や歯周病で既に歯を失っていて矯正治療に最適な歯を抜歯できなかったり、歯周病の進行で歯槽骨が弱くなっていて歯を大きく移動することが難しい等で矯正治療が難しい症例が多くなります。そこで中高年の矯正治療では骨格的な異常を若年者の矯正治療のように歯を移動することで補うのではなく、外科手術を併用して骨格異常を改善する外科的矯正治療をしばしば行う様になりました。
そして外科的矯正治療で下顎骨を前方に移動し骨格が正常になると、気道も広がり呼吸機能が大きく改善し、「よく眠れるようになり元気になった」と感想を多くの患者さんから頂きました。この経験を重ねるに従い、骨格的異常がある患者さんを無理して矯正治療だけで治療するよりも、異常な骨格を手術で正常な骨格にする方が形態的にも機能的にもより正常になり、外科手術の大変さやリスクよりも患者さんの享受するメリットが大きいと思うようになりました。その結果、外科的矯正治療を行う患者さんの割合は年々増加し、現在では約40%の割合を占めるようになっています。
20年の間にクリニックの矯正治療の重心は、子供から大人、中高年へ、そして外科的矯正治療へと治療対象、治療方法も多く変化しています。しかし、その変化の源は論文や学会で見聞きしたものではなく、全て患者さんの「口の中」、診療の現場で私が自ら感じ、全力で問題点を改善するべく努力した結果、そこに導かれたのです。全ては患者さんのおかげです。私は診療の問題の答えは「患者さんの口の中にある」と常々言っていますが、自分の行った治療、処置の結果を真剣に見れば、それが良かったのが、改善の必要があるのかは自分が一番よく分かります。自分の診療能力の向上には、患者さんを真剣に診ることをくり返すことしかないのです。今はエビデンス、エビデンスと過去の実績、データを重要視する時代ですが、私は「患者さんに学ぶ」の方が大切と信じています。過去に結果通りにしているだけでは、発展はありませんから。
クリニックも含めて人も企業も社会情勢に合わせて変化していかなければ生き残ることは出来ません。変化は重要ですが、変化の激しい社会だからこそ道を誤らないために、人も企業も根底にある人として、企業としての不変の理念を持つことが一層重要です。20年の院長経験から不変の理念に従って、社会情勢に合わせて、躊躇なく大胆に変化していくことが、社会の荒波を乗り越え生き抜く秘訣と悟りました。
今後も樋口矯正歯科は「誰もが一生自分の歯で物を食べ、本当に健康で長寿を全うできる社会の実現に矯正歯科治療を通して貢献していく」という理念の元、スタッフ一同たゆまぬ努力、改善を行っていくつもりです。
思い起こせば20年前、義父の前院長と経営方針の違いから独立を決意し、長女の中学入試の結果発表の翌日に直談判に及びクリニックを買い取りました。あっと言う間と感じますが、その長女も今はもう30代、我が子の成長を思えば20年と言う時間の長さを改めて感じます。その間にクリニックにも様々な変化がありました。
目に見える変化は2004年の法人設立と2005年のクリニックの移転です。2005年はもう忘れてしまっている方も多いと思いますが、福岡が経験したことない大きな被害をもたらした福岡西方沖地震の年です。クリニックの被害は大きくありませんでしたが、開院から30年近く経ち古くささが気になっていましたので器材も全て更新して新築移転する事にしました。新築に当たって、患者さんがホッとできて治療に関係なく行きたくなる、そして私の家に遊びに来たような診療室を目指して、設計、デザイン、家具選びまで私が行いました。
診療内容についても大きく変化しています。2012年には妻の副院長が福岡口臭クリニックを開設し口臭治療を開始しました。開設当初は単に当然ながら一般的な口臭治療を行っておりましたが、治療の経験を積むに従い根本的な口臭の改善には、口腔機能、特に舌の機能の向上が重要と気づきました。これから舌運動トレーニングの方法を試行錯誤し、クリニック独自のトレーニング方法を確立することが来ました。舌運動トレーニング法は、口臭治療だけでなく矯正歯科治療の治療結果の向上、治療後の正常咬合の維持安定にも大きく役立つことになり、口臭クリニックの開設で矯正歯科治療の幅が大きく広がりました。
その後、2015年には以前クリニックに勤務していた歯科衛生士からの要望を受け、訪問診療部を開設しました。私は一般的な歯科治療の経験が乏しいため訪問歯科治療の経験豊富な歯科医師を探して、歯科治療と言うよりも「食べる」と言う口腔機能の維持を主眼とした訪問診療を行っています。矯正歯科治療と手法は違いますが、口腔機能の向上という目的からすると、矯正歯科治療や口臭治療で口腔機能向上について学んだことが、訪問歯科でも大いに役に立っています。
そして最後は矯正歯科の治療内容についての変化です。私が院長に就任した当時は、「矯正治療は子供が受けるもの」と言うのが一般的な認識で、ほとんどの矯正歯科医院は住宅地の一般歯科からお子さんの患者さんを紹介してもらうことで成り立っていました。しかし、少子化に加えて共働き世帯の増加で遠くの矯正歯科まで通院する時間的余裕がなくなったこと、そして小児歯科の増加で家の近くでも矯正治療が受けられるようになった事で、繁華街の矯正歯科から子供達の姿が消えて行きつつありました。
そんな時知り合いの一般歯科医から中年の歯周病の患者さんの矯正治療を依頼されました。放置すれば直に抜歯が必要になるとのことでしたから、従来の矯正歯科の常識では治療が症状を悪化させる可能性が高いとされていましたが、私なりの考えに従って矯正治療を行ったと所、咬み合わせの改善に伴い歯周病も大きく改善して歯を長持ちさせることが出来ました。そしてクリニックは子供の矯正治療から大人、中高年の矯正治療へと治療対象の年齢層を大きく広げ、それに伴い受診者数も増加していきました。当時中高年の患者さんの治療は私にとって大きなチャレンジでしたが、今では歯周病の治療に矯正治療が必須だと考えています。そして歯科領域でも矯正治療で正常な咬み合わせを作り、歯を支える歯槽骨への正常が咬合力を伝える事が歯周病の改善に有効である事が認められつつあります。
多くの中高年の患者さんの矯正治療を経験していく中で、次に目に付くようになったのが骨格的な不正咬合、特に下顎が小さく後ろに位置している小下顎症の患者さんです。小下顎症の患者さんは、下顎骨に付いている舌が後方にあるために気道が細くなり呼吸機能障害を起こしやすいのです。息がし難いため上を向いて寝ることができず、眠気がひどく、気道を開くために顎を突き出すので猫背でストレートネックになり、体力が落ちる中高年では高頻度で睡眠時無呼吸症候群を発症します。
中高年の患者さんは虫歯や歯周病で既に歯を失っていて矯正治療に最適な歯を抜歯できなかったり、歯周病の進行で歯槽骨が弱くなっていて歯を大きく移動することが難しい等で矯正治療が難しい症例が多くなります。そこで中高年の矯正治療では骨格的な異常を若年者の矯正治療のように歯を移動することで補うのではなく、外科手術を併用して骨格異常を改善する外科的矯正治療をしばしば行う様になりました。
そして外科的矯正治療で下顎骨を前方に移動し骨格が正常になると、気道も広がり呼吸機能が大きく改善し、「よく眠れるようになり元気になった」と感想を多くの患者さんから頂きました。この経験を重ねるに従い、骨格的異常がある患者さんを無理して矯正治療だけで治療するよりも、異常な骨格を手術で正常な骨格にする方が形態的にも機能的にもより正常になり、外科手術の大変さやリスクよりも患者さんの享受するメリットが大きいと思うようになりました。その結果、外科的矯正治療を行う患者さんの割合は年々増加し、現在では約40%の割合を占めるようになっています。
20年の間にクリニックの矯正治療の重心は、子供から大人、中高年へ、そして外科的矯正治療へと治療対象、治療方法も多く変化しています。しかし、その変化の源は論文や学会で見聞きしたものではなく、全て患者さんの「口の中」、診療の現場で私が自ら感じ、全力で問題点を改善するべく努力した結果、そこに導かれたのです。全ては患者さんのおかげです。私は診療の問題の答えは「患者さんの口の中にある」と常々言っていますが、自分の行った治療、処置の結果を真剣に見れば、それが良かったのが、改善の必要があるのかは自分が一番よく分かります。自分の診療能力の向上には、患者さんを真剣に診ることをくり返すことしかないのです。今はエビデンス、エビデンスと過去の実績、データを重要視する時代ですが、私は「患者さんに学ぶ」の方が大切と信じています。過去に結果通りにしているだけでは、発展はありませんから。
クリニックも含めて人も企業も社会情勢に合わせて変化していかなければ生き残ることは出来ません。変化は重要ですが、変化の激しい社会だからこそ道を誤らないために、人も企業も根底にある人として、企業としての不変の理念を持つことが一層重要です。20年の院長経験から不変の理念に従って、社会情勢に合わせて、躊躇なく大胆に変化していくことが、社会の荒波を乗り越え生き抜く秘訣と悟りました。
今後も樋口矯正歯科は「誰もが一生自分の歯で物を食べ、本当に健康で長寿を全うできる社会の実現に矯正歯科治療を通して貢献していく」という理念の元、スタッフ一同たゆまぬ努力、改善を行っていくつもりです。