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院長コラムで院長を知ろう!矯正歯科専門医 河合悟が思うこと。

チャイルドファースト、ファミリーファーストの社会へ院長コラム

2019/11/05 現代社会

 2019年10月2日の日経新聞に「専業主婦世帯に忍び寄る貧困 離職食い止めが急務」という記事が載っていました。「貧困専業主婦」(新潮社)の著者である周燕飛(しゅう・えんび)氏のインタビュー記事です。独立行政法人の労働政策研究・研修機構(JILPT)による2017年の統計調査で 18歳未満の子供がいる専業主婦世帯で貧困率が約1割に上ると発表された事を根拠に議論を進めています。

 周氏は、経済的にゆとりがないと、家族の食生活や健康、子供の教育などに悪影響が及ぶと指摘して、高い世帯所得を得ることが子どもの幸せであると述べています。そして認可保育園の利用料は所得に応じて決まる仕組みで貧困世帯だと負担額は少ないので、貧困世帯の親は保育園の利用で本来、有利な立場にあるのだから、子供を保育園に預けて働くべきと指摘します。その上で貧困世帯であるにも関わらず専業主婦をしているのは、「 損得計算ができていないのではないか」とまで言っています。

 調査の中では貧困専業主婦の3人に1人は自分を「とても幸せ」と捉えているとも書かれていますが、そんな個人の思いは完全無視でとにかく経済的に豊かになるとが家庭や子供の幸せであるというのが周氏の意見です。

 そして、貧困を克服する手立てについて 「最も重要なのは、離職する女性を減らすことだ。女性の場合、新卒時の就職先で働き続ける方が好条件といえる」と結論づけています。結局、周氏の求める幸せの条件は、「高収入」という事なのです。

 さて、この記事と前後して聞いた2歳のお子さんがいる夫婦ともにフルタイムで働く(それこそ奥さんは新卒時の就職先で現在も勤務中)患者さんの生活は、私の想像を超えた大変な物でした。平日は出勤前の9時頃に保育所に子供を預けて、保育所の閉園時間19時に契約したベビーシッターさんにお迎えに行ってもらい、自宅で前夜に作っておいた夕食をシッターさんに食べさせてもらいます。そして、入浴もシッターさんにお願いし、21時頃帰宅、それから子供を寝かしつけて、翌日のお弁当と夕食の準備をするそうです。週休二日ですが、日曜日も仕事があるのに保育所がお休みですので、日曜日は終日シッターさんに子供の面倒を見てもらっているそうです。

 この生活が、先程の周氏の推奨する幸せな子育て世帯の実態です。子供が起きている時間で親子が一緒いる時間は、一日に1時間そこそこでしょう。共働きで休日が一緒とは限りませんから、家族が揃って夕食を食べるの月に何日有るのでしょうか?これで子供は本当に幸せと言えるでしょうか?家族って、なん何でしょうか?

 育児休業の1年間が終わり1歳の子供を保育所に預け職場に復帰して、経済的に豊かになる事が良いことであるとする社会の流れ、風潮ですが、子供の気持ちや家族とは何かと言う視点が欠落してしまっている気がしてなりません。

 共働きで経済優先の家庭と言えばアメリカ社会がその代表と言えるでしょうが、日本とは仕事の仕方が違います。(実は私も昨年、息子がニューヨークの設計事務所に就職してアメリカの勤務の実態が日本と大きく違う事を初めて知りました。)勤務は基本的に9時から17時まで、早出や残業もほぼありません。おまけに仕事の後のつき合いもなく、即帰宅です。ニューヨークは地価が高いので通勤時間に1時間以上かかっている人も多いらしいですが、ほとんどの人は19時前にには帰宅して、家族で夕食を摂っているとのことです。夕食を作る時間がないのでデリの惣菜の簡単な夕食ですが、それでも毎日家族で食卓を囲むのですから、家族で過ごす時間がちゃんとあります。

 社会の仕組みが違うのに共働きを無理に推し進めれば、子供は親の愛情を享受できないためにコミュニケーション能力を十分習得しないまま大人になり、安心な社会が脅かされることにもなりかねません。また親は疲弊し子育てを楽しむ余裕などなくなり、引いては出生率も一段と減少し、人口が一段と減少してしまいます。少子高齢化社会を乗り切るために女性の社会進出を促し労働力を確保しようとしたはずが、逆に少子化を促進するという皮肉な結果が待っているのです。

 それではそうすれば、貧困の心配なく家族で子育てを楽しむような暮らしが出来るのでしょうか?そのヒントはNHKテレビの「家族に乾杯」にあります。この番組は笑福亭鶴瓶とゲストの芸能人が田舎の家庭を見て回るという物ですが、いつ見ても田舎暮らしの豊かさを感じてしまいます。田舎では2世代3世代同居の大家族で子育ても一緒に支え合い、そして仕事は農業や漁業などの第一次産業ですから残業などなく家族で夕食の時間を過ごしています。農業や漁業の収入は都会暮らしよりも少ないかも知れませんが、生活コストが田舎では安いですから、実は経済的にも豊かなのかも知れません。テレビの画面写る人々の笑顔に精神的な余裕が伝わってきます。

 ですから、私の解決策の第一は、子育て世代の田舎への移住です。昔は移住しても職の心配がありましたが、今は跡継ぎがいない農家の耕作放棄地や跡継ぎがいない漁師の漁業権の放棄も沢山有りますから心配は要りません。(これ又テレビ番組で申し訳ないのですが、「ポツンと一軒家」という番組を見ればその実態がよく分かります。)物の格差もアマゾンが解消してくれましたし、教育の格差もネットでの学習塾ありますから、生活環境の格差は少なくなっていますから、田舎ぐらいのハードルは高くないと思います。

 それでもやはり都会で子育てしたいと言う方達への為の政策は、ずっと前から提案している「子育て手当月額10万円」です。保育所に子供を預ける人がけが得をする保育所の補助金ではなく、直接家庭に手当を支給する事で、その手当で保育所に子供を預けても良いですし、仕事をしないで専業主婦として子育てに専念しても良い、個人の価値観を重視した公平な制度にする訳です。それに加えて、子育てが終わってからの育児休業前と同じ条件での職場復帰の保証です。休職中のキャリアアップは出来ないのでずっと働き続けた人と差は出来るかも知れませんが、子育ての経験を生かして復帰後に飛躍できる可能性も十分あるはずです。企業側としても新卒で優秀度判断して使用した社員が職場に復帰して戦力となるのですから、求人難の今は特にメリットとなるのではないでしょうか?

 周燕飛氏の記事で私が一番問題だと思うのは、「子育て」、「親の役目」をお金を稼ぐことよりも軽視していることです。動物の一番の生きる目的は子孫を残すことですから、人間だって子孫を残すことが重要なことのはずです。そして、未来を託す子供を育てる事は、大きな喜び、やり甲斐のある、人生の一大仕事だと思います。

 経済至上主義が蔓延する「マネーファースト」の社会から、個人個人の価値観を尊重した子供中心、家族中心の「チャイルドファースト」、「ファミリーファースト」の社会へ転換が明るい美来へのカギだと思います。

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