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院長コラムで樋口矯正歯科クリニックの院長を知ろう!河合悟が思うこと。

矯正治療のゴール院長コラム

2018/04/03 医療・健康

 先日、大阪の弁護士さんから矯正治療の訴訟に関して面談を申し込まれました。私の患者さんのお姉様がマウスピース矯正を受けたのですが治療が上手く行かず、治療途中で違う矯正歯科医に外側からの矯正治療を受けることになり、訴訟になったのです。私は直接その患者さんを診察したことはなかったのですが、患者さんである妹さんからお姉様がマウスピース矯正を始めると聞いて、上手く行かないからやめた方が良いとアドバイスしていたのですが、見えない、簡単、安いという甘い言葉に負けてしまった結果が訴訟です。

 偶然、再矯正治療を受ける矯正歯科医も私の昔からの知り合いだったので、今度の治療は満足な結果が得られることは間違いないと思いますが、マウスピース矯正の後始末で治療は大変難しい状態ですから、治療期間も費用もかかり失ったモノは大きかったと思います。


 弁護士さんに面談し訴訟資料の中の治療前後の噛み合わせの写真を見て驚きました。治療前は上下の前歯が前突していますが奥歯の咬み合わせは、ほぼ正常だったのに治療後には下の奥歯が歯を抜いたスペースに大きく傾き、咬み合わせが大きくズレてしまっています。矯正歯科を専門的に勉強した歯科医でなくても、歯科医師なら誰でも、歯科の基本的な知識を持っている歯科衛生士や歯科技工士が見てもマウスピース矯正での治療が失敗だった事が分かるはずです。


 そんな治療結果にも関わらずこの治療を行った歯科医師は、治療は失敗していない、今まで4,000例を超える治療実績があり治療の失敗やトラブルはないと言い張るそうです。そこで弁護士さんは、矯正歯科学会等にこの治療に関する評価を求めると共に他にも治療が失敗し再矯正治療を行っている患者さんを探して私を訪ねてこられたのです。


 幸いかどうか分かりませんが、偶然このマウスピース矯正で治療が上手く行かなかった患者さんの二人を私が再矯正治療してしていたので、その患者さんの治療の状況を説明しました。そして患者さんからも、以前のマウスピース矯正の治療について弁護士さんに話してもらうようにしました。


 このマウスピース矯正で失敗した患者さんを再治療するに当たってカウンセリングをさせて頂いた時に患者さんが言われた言葉が忘れられません。歯科医にいつになったら医療が終わるのかと質問したところ「患者さん自身がこれで良いと思えば、それが治療の終わり」とこのマウスピース矯正をした歯科医師が答えたそうです。つまりこの歯科医師の頭の中には矯正治療のゴールがない、あるいはゴールを知らないと言う事です。


 そこで問題となるのは矯正治療のゴールはどこか?と言う事です。一般的に矯正治療を受ける患者さんは「歯並びがきれいになりたい」と希望して治療を受けますから、矯正治療のゴールは「きれいな歯並び」と言いたいところですが、「きれい」は主観的な言葉ですから人によってゴールは違ってしまいます。きれいな景色と言っても人によって思い描く景色が違う様なものです。私が若かった頃「八重歯」はカワイイと言われ、八重歯のアイドルが沢山いました。その当時は「八重歯」もある意味「きれいな歯並び」だった訳です。


 そこで私が言いたいことは「歯並びはきれいにならない」、矯正治療のゴールは「きれいな歯並び」ではなく、「正常な歯並び」であると言う事です。歯並び以外の治療を受ける時、治療のゴールが正常であるのは誰でも知っています。血圧にしろ、血液検査にしろ、画像診断にしろ診断や治療結果の判定基準は全て正常です。正常であれば、そこには必ず基準があります。矯正治療も医療ですから、そのゴールが正常であるのは当たり前のはずですが、どうもそれが一般の人だけでなく歯科医師にも十分理解されていないのが現状の様な気がします。


 「正常な歯並び」とは、奥歯が歯車のように山と谷が咬み合い(1歯対2歯の咬合)、前歯は自然に唇が閉じられ、外側から唇が内側から舌が押し合い力が釣り合った場所(ニュートラルゾーン)に位置する状態です。これが矯正治療のゴールです。


 そこで前述のマウスピース矯正を行った歯科医についてその経歴を調べてみると、大学卒業後は高齢者の歯科治療や訪問歯科診療に携わっており、矯正歯科に関する専門的な勉強をした事はないようです。矯正歯科に関する基礎的な知識が欠如されているために、この歯科医は「正常な歯並び」がどんな状態であるのかさえも知らなかった可能性があります。


 しかし、現在の歯科医師法では歯科医師であれば矯正歯科の専門的なトレーニングを受けなくても矯正歯科治療を行う事が可能ですから、トレーニングを受けていない歯科医師の診療を禁止するような法律的な手段で矯正歯科治療の質を向上させる事は出来ません。そこで矯正歯科学会等では専門医や認定医制度を作っていますが、その目的が治療技術が優れているいる歯科医師を選び宗でないし開始を排除すると言う排除の理論で成り立っているのです。根底にあるのは矯正歯科医療への多くの歯科医の参入阻止するため、専門医や認定医を既得権益としようとする矯正歯科医の姿勢です。


 本来なら、矯正歯科の専門的な知識を習得を目指す歯科医師に対して学会が主導して研修の場所を整備するべきだと思いますが、認定医や専門医の取得条件に大学の医局での研修が義務付けられていたりして、実際の医療現場にいる開業医が専門的なトレーニングを受けて認定医の取得をすることは事実上不可能な制度になっています。


 専門的な知識が無いまま矯正治療を行っている歯科医師を非難することは簡単ですが、今日本中で治療を受けている患者さんの内、認定医や専門医が治療しているのは半数になりません。大半の患者さんは、矯正歯科の専門的な知識が無い歯科医師の治療を受けているのです。矯正歯科治療の犠牲者を減らすのには、より多くの歯科医師に矯正歯科の知識を身につけてもらう事が重要であり、そのための手段として講習会等を企画、運営することが矯正歯科学会に求められている社会的責任と思います。


 今回、図らずも矯正歯科治療の訴訟を目の前にして、今後このようなトラブルが頻発すれば「矯正歯科治療は治らない」と言った誤解が広まり、矯正治療自体が社会の信用を失いかねないを心配になりました。


 しかし、しがない開業である私には、樋口矯正歯科クリニックを受診してくださった患者さんに「矯正治療をして良かった」言われるように診療することしか出来ませんから、以前にも増してスタッフと共に日々の診療に全力を尽くしていこうと改めて決意しました。

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