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院長コラムで院長を知ろう!矯正歯科専門医 河合悟が思うこと。

プレミアムフライデーの前に院長コラム

2017/03/01 現代社会

2月24日の金曜日に初のプレミアムフライデーが実施されました。政府や経団連が提唱する月末金曜日は午後3時(15時)に仕事を終えることを奨励する働き方改革ですが、目指すところは消費の拡大です。ニュースでもプレミアムフライデーを当て込んだ様々なお店のセール等の消費喚起の取り組みが盛んに報じられていました。

 しかし、政府や経団連の目論みどおりには事は運ばず午後3時退社行う企業も少なく、残念ながら飲食店や小売業者も大繁盛とはいかなかったようです。今後も毎月プレミアムフライデーを実施していくとのことで、徐々に午後3時退社を行う企業が増え、消費が拡大してことを企業は期待しているようですが、私は大いに疑問です。

 プレミアムフライデーで月に1回数時間労度時間を減らしたところで、労働者の生活パターンが変わり、消費が喚起されるなんてどう考えても虫が良すぎます。それよりも今必要なのは、抜本的な労働時間の短縮です。電通の月100時間を越える残業による過労死をきっかけに長時間の残業やサービス残業など労働時間の問題が注目されている中でのプレミアムフライデー、政府や企業が何とな長時間労働の問題から国民の目をそらそうとしているではないかと勘ぐりたくもなります。

 数年前までの就職難がウソのように有効求人倍率はバブル期を上回る程になり、人手不足が深刻化して、長時間労働が一層深刻化しそうな気配です。24時間営業してきたファミリーレストランやファーストフードも人手不足で深夜の営業をやめる位ですから、過去に類を見ない人手不足と言えるのかも知れません。

 そう言えば樋口矯正歯科クリニックの入っているビルの駐車場でも以前はフリーターと思われる若い係員が係員が車の出し入れをしてくれていたのですが、最近はネクタイをした普段は営業をしている正社員の方がジャンパーを着て作業に当たっているのをよく見かける様になりました。事情を聞いてみると、時間労働(アルバイト)社員をいくら募集しても人が集まらないので、普段は営業をしている正社員が作業に当たっているとのことでした。

 また、派遣社員として販売の仕事をしている患者さんから聞いたところ現在の何と時給は1,200円ですが、次の派遣先では1,400円になるとのことでした。東京では時給が1,000円を超えると聞いていましたが、地方都市の福岡でも時給1,000円を軽々と越える様になっているのに驚きましたし、それだけ福岡でも人手不足が深刻化している事が分かりました。

 この人手不足で一層の長時間労働、過労が加速される心配ですが、政府も産業界も「働き方改革」が必要とは言いながら、実際の残業時間制限となると及び腰です。政府が提案し、経団連が大筋で妥当だとしたのは1カ月100時間までの残業を認める規制案ですが、月100時間と言うのは一日平均5時間近くです。9時から昼休み1時間を挟んで5時までの8時間勤務、その後5時間の残業となれば退社は10時以降となります。通勤時間を1時間程度としても帰宅時間は11時過ぎ、翌日の出社を8時とすれば家を出るのは7時、家にいるのは多くても8時間、その間に夕食、入浴、朝食、そして睡眠、余裕は全くありません。

 これが、政府や経団連が提案する残業時間規制です。これで規制の意味があるのか、不思議でなりません。毎晩10時、11時に帰宅するのでは、家族で夕食を取ることも難しいですし、、家族の会話もままならないのが実情ではないでしょうか?これが政府や大企業の経営者が目指す労働者の暮らしなのでしょうか? これが現代日本人の健康的な生活と言うのでしょうか?私には納得できません。

 もう一例、これを裏付ける様な患者さんの勤務状態を紹介しましょう。20代の女性で1年間の産休を取った後に大手企業に復職されたのですが、子育てをしながらの勤務が以下に大変さに驚かされました。出勤前の8時にはお子さんを保育所に預けに行き、残業をこなして保育所にお迎えに行くのは10時近くなってしまうそうです。お子さんは夕食も保育所で食べることになり、家に連れて帰ってお風呂に入れて寝かせるのが精一杯とのことでした。これでは、親子で過ごし、愛情を深める時間がいくら何でも少なすぎるでしょう。

 保育所が足りない、足りないと大騒ぎしていますが、保育所をいくら作ったところで、親子が時間が増える訳ではありませんから、過剰労働で子育てに費やす時間もないようでは少子化が進むのもたらり前です。労働時間を制限して家族が家庭で一緒に過ごす時間を増やす方策が必要と思えてなりません。

 結局、長時間労働が少子化を引き起こし、少子化が人手不足を聞き起こす、そして人手不足が長時間労働を助長すると言う悪循環がいつの間にか起きているのです。そして、少子化による人口減少と長時間労働による個人の自由な時間の減少が消費の抑制へと繋がり、結果としてデフレが進行しているのではないでしょうか。

 この負のスパイラルを止めるには思い切った長時間労働の制限と賃上げしかありません。今必要なのは小手先のプレミアムフライデーではなく、根本的な長時間労働の制限です。

 企業は賃金の抑制と労働力の酷使でバブル期を上回るほど利益を上げていますが、これと言っためぼしい投資先がないため、かつてないほど内部留保をため込んでいます。企業の投資と言えば設備投資考えるのが当たり前ですが、発想を転換して賃上げや新規の雇用を増やす事を投資の一つと考えるのです。かつて民主党政権で「コンクリートから人へと」のスローガンで公共事業等の物への投資から、、子ども手当等の人への投資へ転換しようとしたように、企業も人件費を人への投資と捉えることで経済成長を促すと言う発想の転換です。そして深刻な人手不足で企業も労働環境を改善しないことには求人することもできませんから、今こそが労働時間短縮を図るチャンスです。

 アベノミクスが政府の財政出動により経済の発展を促したように、今度は企業が内部留保を賃金雇用を増やすことで萌出して経済の発展を促すのです。そのきっかけを作るのが政治家の仕事です、残業時の制限を大幅に縮小し月30時間、一日平均1.5時間以内とすれば、インパクトは絶大です。働く側も時間制限がある訳ですから、いかに効率よく仕事をするかを今まで以上に考えない訳にはいきません。結果として効率が上昇し、時間当たりの生産性も必然的に向上するはずです。欧米に比べ長時間労働が当たり前の日本は、時間当たりの生産性が低いのですが、残業時間の制限でこれも改善する可能性があります。

 そして何よりも労働者の大半は午後8時前には家に帰れますから、家族で夕食をとり、家族で過ごす時間を確保することが可能となります。憲法第二十五条:に 「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」とありますが、残業時間の制限から始まる「働き方改革」こそが、健康で文化的な生活実現のカギだと思います。

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