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院長コラムで院長を知ろう!矯正歯科専門医 河合悟が思うこと。

病院紹介業にご注意院長コラム

2004/05/20 

 最近、私の所に企業の歯科検診の一環として矯正歯科相談を受け付けてほしいと言う依頼がありました。企業の健康保険組合から歯科検診を引き受けているTMAと言う名の企業からでした。内容が良く分からないので、資料を送付してくれるように頼みました。送付された資料に目を通して行くと、このTMAが無料で契約健康保険組合の組合員の歯科検診を提携歯科医院に紹介し、歯科医院も無料で検診を行うとなっていました。つまり、健康保険組合も組合員も一切の経済的負担をすることなく検診が受けられるとなっていました。資料を読んでいる間に、私は、歯科医院は社会貢献の一環として地域住民の健康増進のために無料検診を行うとしても、TMAと言う企業はどのようにして利益を得ているのかが気になってきました。そして、最後のページを開いた時この疑問は一瞬にして解消されました。そこには、一段と大きな文字で「システム利用料 年間 180,000円」と書いてあったのです。つまり、この健康保険組合による歯科検診は、歯科院が年間180,000円を払ってTMAから患者さんを紹介してもらうと言うシステムだったのです。
 自分の勤める会社の健康保険組合が歯科検診を委託している歯科医院は、実は広告料とおぼしき料金を負担した上で、無料で検診していることを知っているのでしょうか?これで、健康保険組合は組合員の健康を本当に守れると思っているのでしょうか?
 この疑問をはらすため、私は、契約健康保険組合と記載されている日本IBMの健康保険組合に電話で問い合わせました。日本IBM健康保険組合の回答は、 TMAとは無料で歯科検診を委託する契約を結んだだけで、TMAがどのような形で歯科医院と契約しているかは、関知していないとのことでした。つまり、健康保険組合としては、業務の効率化と経費の節減のために委託しただけで、そこには組合員の健康を守という意識は全くありませんでした。
 これと同じような例として、私が開業している福岡市にも、良い歯科医院を紹介すると言ったチラシを配ったり、タクシーの中に広告を置いたりしている、あたかも非営利を装った医院紹介企業があります。それらは、皆医療機関が別に企業を設立し、医療機関とは無関係を装って患者さんを医療機関に紹介すると言った物です。このような行為は、詐欺に近いのではないでしょうか?法律には触れないかも知れませんが、医療に携わる者が行うことでしょうか?このような広告に惑わされるのは、以前「無料商法にご注意」の中にも書きましたように患者さん自身の認識不足とも思いますが、大企業の健康保険組合でさえも詐欺まがいの検診委託企業と契約してしまうくらいですから、一般の患者さんが惑わされてしまうのも無理からぬ事かも知れません。
 現在の厳しい競争社会では、うまい話ほど大きな落とし穴があることを肝に銘じておく必要があることを痛感しました。

ところで、この検診の委託ですが、TMAは歯科医院がシステム利用料を負担する契約であることを健康保険組合、組合員に明かすことは出来ないとのことだったので、当然無料検診はお断りしました。

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