本質を追究する院長コラム
2014/10/03
先日、車好きの私にはちょっと驚きのニュースがありました。日産の代表的車種スカイラインのエンジンが、何とメルセデスベンツ製になってしまったのです。技術の日産と言って、広告していた会社の体表的車種であるスカイラインのエンジンが外注とは驚きを超して、開いた口がふさがらないと言った感じです。
三つ星レストランでディナーを食べたら、メインディッシュが食材業者から仕入れたレトルトだったようなものでしょう。それを知ったら、道理の分かった人なら絶対にそんなレストランに行かないでしょう。車だって同じ事。車のことがちょっとでも分かった人なら、メルセデスベンツ製のエンジンが良いなら、メルセデスベンツの車を買うでしょう。
では、なぜ日産はそんな事をしたのでしょうか?それは開発や生産のコストの問題につきます。日本国内ではハイブリッドばかり売れ、普通のガソリンエンジンの車は販売が低迷しているのが現状で、燃費の良い新しいガソリンエンジンを開発しても売れる保障がありませんので、手っ取り早く外部から調達したわけです。日本と違ってヨーロッパでは小排気量のガソリンエンジンをターボで加給して、大きな力と良い燃費を目指してエンジン開発が沢山行われていますから、コスト面からだけ見ればこれは確かに正しい判断でしょう。そして、燃費効率の良い新しいガソリンエンジンを自社で開発している日本のメーカーよりも販売面でも当面は有利でしょう。
しかし、私はこの判断が日産が将来を暗いものになる引き金のように思えてなりません。車の主要部品であるエンジンを外部から調達すれば、エンジン開発を行ってきた技術者の志気は当然下がり、今後の技術開発に熱意を失うのは当然です。その結果、自社での技術開発能力が低下し、それを補うために次々と外部からの部品調達を余儀なくされます。そして気が付いてみれば、外部から調達し部品を組み立てるだけの企業となり、他社と差別化できるような製品を製造できなくなっていくのです。
製造業も資本主義社会の企業ですから収益を上げるのが使命なのは当然ですが、目先の利益にこだわる?あるいは目先の利益に幻惑されると企業の存続を左右する状況にもなりかねません。業績不振の企業の再建の時によく「原点回帰」と言われるように、どの企業にもその企業の発展の元になった大切な技術、ノウハウがあり、それを見失った時企業は衰退していきます。
ですから企業の経営者は目先の収益にばかりこだわるのではなく、その企業の中核技術、中核となるノウハウを高めることで収益を上げる努力をすべきだと思います。それは短期的な収益から考えると無駄も多いかも知れませんが、長期的な視点で見れば必ず企業は発展していくはずです。
ですから、企業を長期的に発展させるには企業のトップが長期的視点で経営判断をする事が必要ですが、この点で先程の日産には大きな問題があるように思います。ご存じのようにかつて経営不振だった日産はフランスのルノーの子会社となり、カルロスゴーン氏を社長として受け入れました。カルロスゴーン氏は色々な企業を渡り歩く、いわゆるプロの経営者。プロの経営者とは一つの企業で色々経験を積んだ上でトップに就くのではなく、ビジネススクールで経営手法を学び、短期的に企業の業績を上げ、超高額なサラリーを得て、次の企業へ移って行く経営者のこと。つまりは短期的に利益を上げれば良く、長期的な企業の発展とは無縁な経営者なのです。
最近まで日本企業のトップほとんどはその企業の生え抜きでしたが、自社のことしか見てこなかった生え抜き経営者は経営環境の急激な変化に対応できず、業績不振を招いてしまうことも多々ありました。そこで日本でも、経営のプロを企業のトップに迎える企業が増えてきましたが、果たしてそれが企業の長期的な発展や従業員の幸せに繋がっているのでしょうか?
私はそれの大いに疑問があります。最近で言えばその失敗の代表例はソニーです。経営のプロであるハワードストリンガー氏がソニー初の外国人経営者になりましたが、一時的に高収益を上げたものの、現状は惨憺たるもの。外国人でなくともアップルコンピューターの社長から日本マグドナルド社長になり、今はベネッセの社長の原田 泳幸氏もハーバードビジネススクールで学んだプロの経営者と言われていますが、マグドナルドでの業績を見れば、結局短期的な収益を上げたに過ぎないことは明らかです。
リストラや価格調整等の小手先の改革を行うばかりで、その企業が社会に必要とされた本質的な価値、例えばソニーなら映像や音響技術、マグドナルドならハンバーガーの美味しさを追求し続ける事を怠った結果が企業を窮地に追いやったのです。
ジャパン・アズ・ナンバーワンなんて言われた80年代、日本の企業は年功縦列で企業の経営者は生え抜きばかりで井の中の蛙だったのかも知れませんが、自社の技術にコダワリ、ある意味長期的視点で企業の経営を行っていたのです。所がバブルによる地価の高騰で、本業よりも財テクで手軽に利益を上げ、経営の本質を見誤ったのが間違いの始まりでした。業績の悪化で日本全体が今までの日本的経営に自信を失い、米国流の短期的な経営手法に走ってしまったのです。
しかし、ここに来て米国流の経営手法の限界が露呈してきているのです。今一度、企業の経営者は基本に立ち返り、従来日本の企業が大切にしてきた長期的な視点での経営、そして独自技術の追求を目指す時なのです。
私の仕事、矯正歯科の分野でもこれと同じ事が起こっているように思えます。簡単に、誰にでもできる矯正治療方法が色々考案され、基本的なトレーニング、例えばしかし自身がワイヤーを曲げるなどのトレーニング行う事もなく治療を行っている矯正歯科医も増えてきました。しかし、そのような矯正歯科医は矯正材料を供給する業者から仕入れた装置を患者さんに売っているようなものですから、自分自身で治療方法を改良することもできず、結局治療の技術も向上することはありません。
どんな仕事も結局、基本を大切に、日々、知識の探求、技術の向上を追い求める事でしか成功はあり得ない訳です。私も長期的視点で、基本を大切に矯正治療の技術の向上を目指していきたいと思います。
三つ星レストランでディナーを食べたら、メインディッシュが食材業者から仕入れたレトルトだったようなものでしょう。それを知ったら、道理の分かった人なら絶対にそんなレストランに行かないでしょう。車だって同じ事。車のことがちょっとでも分かった人なら、メルセデスベンツ製のエンジンが良いなら、メルセデスベンツの車を買うでしょう。
では、なぜ日産はそんな事をしたのでしょうか?それは開発や生産のコストの問題につきます。日本国内ではハイブリッドばかり売れ、普通のガソリンエンジンの車は販売が低迷しているのが現状で、燃費の良い新しいガソリンエンジンを開発しても売れる保障がありませんので、手っ取り早く外部から調達したわけです。日本と違ってヨーロッパでは小排気量のガソリンエンジンをターボで加給して、大きな力と良い燃費を目指してエンジン開発が沢山行われていますから、コスト面からだけ見ればこれは確かに正しい判断でしょう。そして、燃費効率の良い新しいガソリンエンジンを自社で開発している日本のメーカーよりも販売面でも当面は有利でしょう。
しかし、私はこの判断が日産が将来を暗いものになる引き金のように思えてなりません。車の主要部品であるエンジンを外部から調達すれば、エンジン開発を行ってきた技術者の志気は当然下がり、今後の技術開発に熱意を失うのは当然です。その結果、自社での技術開発能力が低下し、それを補うために次々と外部からの部品調達を余儀なくされます。そして気が付いてみれば、外部から調達し部品を組み立てるだけの企業となり、他社と差別化できるような製品を製造できなくなっていくのです。
製造業も資本主義社会の企業ですから収益を上げるのが使命なのは当然ですが、目先の利益にこだわる?あるいは目先の利益に幻惑されると企業の存続を左右する状況にもなりかねません。業績不振の企業の再建の時によく「原点回帰」と言われるように、どの企業にもその企業の発展の元になった大切な技術、ノウハウがあり、それを見失った時企業は衰退していきます。
ですから企業の経営者は目先の収益にばかりこだわるのではなく、その企業の中核技術、中核となるノウハウを高めることで収益を上げる努力をすべきだと思います。それは短期的な収益から考えると無駄も多いかも知れませんが、長期的な視点で見れば必ず企業は発展していくはずです。
ですから、企業を長期的に発展させるには企業のトップが長期的視点で経営判断をする事が必要ですが、この点で先程の日産には大きな問題があるように思います。ご存じのようにかつて経営不振だった日産はフランスのルノーの子会社となり、カルロスゴーン氏を社長として受け入れました。カルロスゴーン氏は色々な企業を渡り歩く、いわゆるプロの経営者。プロの経営者とは一つの企業で色々経験を積んだ上でトップに就くのではなく、ビジネススクールで経営手法を学び、短期的に企業の業績を上げ、超高額なサラリーを得て、次の企業へ移って行く経営者のこと。つまりは短期的に利益を上げれば良く、長期的な企業の発展とは無縁な経営者なのです。
最近まで日本企業のトップほとんどはその企業の生え抜きでしたが、自社のことしか見てこなかった生え抜き経営者は経営環境の急激な変化に対応できず、業績不振を招いてしまうことも多々ありました。そこで日本でも、経営のプロを企業のトップに迎える企業が増えてきましたが、果たしてそれが企業の長期的な発展や従業員の幸せに繋がっているのでしょうか?
私はそれの大いに疑問があります。最近で言えばその失敗の代表例はソニーです。経営のプロであるハワードストリンガー氏がソニー初の外国人経営者になりましたが、一時的に高収益を上げたものの、現状は惨憺たるもの。外国人でなくともアップルコンピューターの社長から日本マグドナルド社長になり、今はベネッセの社長の原田 泳幸氏もハーバードビジネススクールで学んだプロの経営者と言われていますが、マグドナルドでの業績を見れば、結局短期的な収益を上げたに過ぎないことは明らかです。
リストラや価格調整等の小手先の改革を行うばかりで、その企業が社会に必要とされた本質的な価値、例えばソニーなら映像や音響技術、マグドナルドならハンバーガーの美味しさを追求し続ける事を怠った結果が企業を窮地に追いやったのです。
ジャパン・アズ・ナンバーワンなんて言われた80年代、日本の企業は年功縦列で企業の経営者は生え抜きばかりで井の中の蛙だったのかも知れませんが、自社の技術にコダワリ、ある意味長期的視点で企業の経営を行っていたのです。所がバブルによる地価の高騰で、本業よりも財テクで手軽に利益を上げ、経営の本質を見誤ったのが間違いの始まりでした。業績の悪化で日本全体が今までの日本的経営に自信を失い、米国流の短期的な経営手法に走ってしまったのです。
しかし、ここに来て米国流の経営手法の限界が露呈してきているのです。今一度、企業の経営者は基本に立ち返り、従来日本の企業が大切にしてきた長期的な視点での経営、そして独自技術の追求を目指す時なのです。
私の仕事、矯正歯科の分野でもこれと同じ事が起こっているように思えます。簡単に、誰にでもできる矯正治療方法が色々考案され、基本的なトレーニング、例えばしかし自身がワイヤーを曲げるなどのトレーニング行う事もなく治療を行っている矯正歯科医も増えてきました。しかし、そのような矯正歯科医は矯正材料を供給する業者から仕入れた装置を患者さんに売っているようなものですから、自分自身で治療方法を改良することもできず、結局治療の技術も向上することはありません。
どんな仕事も結局、基本を大切に、日々、知識の探求、技術の向上を追い求める事でしか成功はあり得ない訳です。私も長期的視点で、基本を大切に矯正治療の技術の向上を目指していきたいと思います。