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院長コラムで院長を知ろう!矯正歯科専門医 河合悟が思うこと。

医療費抑制と社会保障院長コラム

2013/12/01 

 来年度予算案の作成が近づき、今年もまた医療費の抑制策が色々と新聞紙上を賑わせています。その中で私が一番気になったのは、 医療費の自己負担に上限を設ける高額療養費制度の負担額変更についてです。「能力に応じた負担」への転換を掲げた政府の社会保障制度改革国民会議の報告に沿う形で、年収770万円以上は負担が増え、210万円以上370万円未満は減るように変更するとのことです。一見すれば、低所得の弱者救済で良い事のようにも思えますが、よくよく内容を見ると高額所得者を狙い撃ちにした、高額所得者いじめのように思えます。

 高額療養制度の月額負担額は、以前から徐々に引き上げられて2002年迄は高所得者(年収770万円以上)の負担限度額が121,800円でしたが、現在では150,000円になっています。病気になり入院したりすれば、最低限1日当たり5,000円が必要となっているのです。

 所が今回の厚生労働省案では、年収1,160万円以上は252,600円に大幅に引き上げることになっています。その代わり、低所得者の負担額を引き下げるようにはなっていますが、高額所得者にこの大きな負担を強いる事が高額療養制度の本来の目的、社会保障制度の目的に適った事でしょうか?

確かに高額所得者はそれなりに豊かな暮らしをしている事は確かでしょう。蓄えも低所得者に比べれば多いかも知れません。しかし、病気になって働けなくなった時の不安は、高額所得者であろうが低所得者であろうが変わりはありません。また、高額所得者の中には給与所得者ではなく、自分で事業を行い自分が働けなくなった時点で収入を失う人も多くいます。いくら前年度に高額所得だったからと言っても、病気で収入を絶たれたら不安でたまらない事でしょう。家族の生活にもお金が必要ですし、その上、医療費に月額25万円以上が必要となれば病気の治療に専念しろと言われても、とてもそんな事を言っていられるとは思えません。

 病気になれば、低所得者も高額所得者も不安に変わりはありません。その不安を少しでも和らげる為の制度が高額療養制度のはずではないでしょうか。安心して暮らせる社会の最後砦とも言える高額療養制度は社会保障の根幹のはずですが、それが前年度の所得の高低によって差別されるような事が許されるのでしょうか?それでは社会保障の根幹が揺るぎ、安心して暮らせる社会とはとても言えません。

 高齢化で医療費を始とする社会保障に必要な費用が増え、国家財政に大きな負担となっているのは分かります。財政再建のためには、国民の費用負担の増加を行うか、給付の抑制のどちらかしかありません。今回の高額療養制度の変更は高額所得者への給付抑制ですが、前述したように社会保障の本質的意味を考えるなら、この場合高額所得者への費用負担の増加を行った方が理に適っています。

 健康で仕事ができ、所得が十分にある高額所得者の健康保険の掛け金を増やす方が合理的という事です。現在でも健康保険の掛け金は所得に比例して増える仕組みとなっていますが、上限がありますからその上限を引き上げるなり、累進性を高める(所得が高くなると急激に掛け金が高くなるようにする)様にするのです。

 費用負担の増加は毎月の事なので国民の反発が激しい事から、政治家や官僚ができるだけ避けたいのでしょう。そこで一般に広く知られているとは言いがたい、そして健康な時には他人事と誰もが思う高額療養制度の変更という安易な手段を選んだとしか思えません。結局の所、官僚や政治家のご都合主義で社会保養の根幹である高額療養制度の改悪が行われようとしているのです。

 安倍政権が「安心、安全」な国を目指すのなら、まず、所得の高低に関わらず安心して医療を受ける事ができる医療制度を構築してもらいたいものです。

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