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院長コラムで樋口矯正歯科クリニックの院長を知ろう!河合悟が思うこと。

歯並びに個性は必要か?院長コラム

2013/08/01 

 先日、1ヶ月前に矯正装置を撤去した患者さんから「個性がなくなった」と言うクレームを頂きました。矯正治療前の方が顔貌?口元?に個性があって、治療しなかったら良かった、できることなら以前の状態の戻してほしいとまで言われました。その患者は前歯の凸凹に加えて、前歯の前突があり唇が閉じにくい状態でした。そこで、小臼歯を4本抜歯して約2年間矯正装置を装着して治療を行い、私としては十分満足できる治療結果だと思っていましたから、患者さんからこんなクレームを頂き青天の霹靂でした。

 患者さん自身も装置撤去時に書いてもらっている感想に「矯正治療を受けて良かった。」と書かれていたから、その時点では治療結果に満足されていたのだと思うが、その後の周囲の人達の反応等で、気持ちが大きく変わってしまったのでしょう。

 それにしても「歯並びに個性」を求められたことに私は大いに驚きました。私は、新しい患者さんのカウンセリングの時に「歯並びはキレイにならない、歯並びは正常になるのです。」と常々話していますから、この患者さんに対しても矯正治療の結果、正常な歯並びになりますと説明していたはずです。正常であれば基準がありますから、ある程度客観的に治療目標が決まりますが、「歯並びをキレイにする」では、「キレイ」と言う言葉自体の意味が主観ですから、治療目標も主観的ではっきりしたものでなくなります。

 それと同じように歯並びに「個性」を求めれば、治療の目標は全て主観的になってしまい、一体何を目標に治療を行うのか分からなくなってしまいます。患者さんが望む個性は患者さんごとに違いますし、それを治療する側が十分に理解することは不可能です。おまけに患者さんが歯並びに求める個性が歯並びの安定や、歯の寿命を長くするとは限りません。個性を求めることで、歯を失うことになっては、何のために矯正治療けるのか分かりませんし、そんな治療が果たしてそれが医療なのか疑問です。

 矯正治療はあくまで医療ですから、正常を求めるのが当然です。正常になってできるだけ長く自分の歯で食べられるようにするの矯正治療の本来の目的です。一般的に矯正治療受けて「歯並びがキレイになる」と言うのは、異常だった歯並びが正常になるのですから、見かけも普通になるだけの事なのですが、異常と正常を見比べれば正常の方が見かけも良いので「キレイになる」と言うに過ぎません。本当は「歯並びが普通になった」だけのことなのです。

 こんな事を患者さんに時間をかけて説明しましたが、なかなか納得して頂けず、「それじゃ、明石家さんまが治療に来たら前歯を引っ込めるか?」と質問されてしまいました。私は、当然さんまさんの様な出っ歯の状態では年齢共に前歯がどんどん前に出て来て、いずれは歯周病で歯を失うことになりますから、一刻も早く矯正治療を受けて前歯がきちんと噛め、唇が自然に閉じられるようにすると答えました。患者さんはやはりそれには納得せず、「それじゃ、さんまじゃなくなるじゃないか」との主張です。

 このやり取りを客観的に考えてみると、問題の本質は、歯というものが何のためにあるのかと言う事になります。患者さんは歯は見かけのために存在するものと考え、歯科医である私は歯は咀嚼器官として咬むために存在するものと考えている、この違いが相互に理解できない原因です。

 歯以外の人の臓器や器官なら機能が最優先されるのが当たり前ですが、歯の場合は見かけの為に機能や寿命が犠牲にされることが珍しくありません。審美歯科という診療科目が存在することが何よりの証拠でしょう。乱れた歯並びやくすんだ歯の色を変えるため歯を削ったり、場合によっては歯の神経を取ってしまう事までしてしまうのが審美歯科です。これは例えば指が曲がっていて、見かけが悪いから指を切って義手にするのと同じ事でしょう。しかし、見かけのために指を切り落とす人はいませんが、歯の場合には多くの患者さんも多くの歯科医も見かけのために歯を削ることを当たり前のように行っています。

 このあたかも歯が見かけのために存在するような意識が、「歯並びに個性」を求める遠因になっていた様に思います。つまり「歯並びに個性」を求める患者さんを作っていたのは、実は歯科医自身だったのかも知れません。

 「歯並びに個性」のおかげで、私自身がもっと、もっと歯の役割、存在意義を患者さんに伝える必要を痛感致しました。今後は、この教訓を生かし、患者さに矯正治療を受ける意義が一生様自分の歯で食べ、健康で生きて行くためにあると言う事をして理解もらえるよう一層、努力していくつもりです。

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