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院長コラムで院長を知ろう!矯正歯科専門医 河合悟が思うこと。

生活保護はどこへ行く院長コラム

2012/06/02 

 売れっ子お笑い芸人の母親が生活保護を受給していたことが取り上げられ、これをきっかけに生活保護に関する問題が注目を集めています。この芸人は、高額な所得があるにも関わらず、母親が生活保護を受けていたとしてネット上で国会議員からも非難され、謝罪会見を開き、生活保護にの返納することを明らかにしました。
 
 母親が生活保護の受給申請をした時には、この芸人を扶養できるような所得がなく役所の担当課と相談の上で生活保護の需給を受けることになったとしていました。受給開始後も、役所の担当官と相談しながら受給を受けていたので、これが不正受給とは認識していなかったというのが芸人の言い分です。

 これに対して、非常識だと非難する声が多いようですが、芸人を一方的に責めることができるでしょうか?役所の担当官と相談した上で保護費が給付されていたのですから、当人達にとってみればお役所のお墨付きをもらっていたと思っても何の不思議もありません。非難されるべきは、きちんとした指導を行わなかった役所の担当官、そして行政だと思います。その芸人は、当地の観光大使を任命されているくらいですから、担当官が生活保護受給者の子供が芸人であることを知らなかったはずはあり得ません。結局、役人の職務怠慢が、芸人の悲劇を引き起こしてしまったのではないでしょうか?

 生活保護の不正受給に関しては、貧困ビジネスや生活保護をナマポと呼びネット上で不正受給の情報交換を行う若者達など問題が多発しています。それにも関わらず不正受給の防止に対して、行政はこれと言った有効な対策を立てているとは思えません。多少不正受給されたところで、役人達は自分の懐が痛むわけではないので、住民とのトラブルを恐れ審査、指導が甘くなっていっているが現状でしょう。

 公共事業の予算と同じ構図、親方日の丸のなせる技、公的なお金の宿命かも知れません。税金で養われている公務員が、税金で集めたお金を生活保護費として給付する。結局、給付する側の公務員も生活保護の受給者も税金で暮らしを立てているわけで、同じ穴のムジナとまでは言いませんが、税金を原資とした公的なお金をもらうことの意味、国民、社会の負担によって自分たちの生活が成り立っているのだという意識が希薄なことにはかわりありません。

 大切な税金が使われる生活保護費を適正に給付していくことは当然ですが、給付審査を厳しくすればそれで良いのかというと、そうばかりも言えません。2007年に北九州市で生活保護受給者が「就職した」と市職員に虚偽報告を強いられ生活保護を打ち切られた結果、「おにぎり食べたい」と書き残して孤独死した事件のような、悲劇を生んでしまっては何のための生活保護なのか分かりません。

 不正受給の問題や国や地方自治体の財政の悪化から、生活保護の給付額の縮小と共に親族扶養の徹底が叫ばれていますが、私は親族扶養の問題に疑問を感じてなりません。高度成長期以前日本が貧しかった時代は家長制度が一般的で、家族、親族で助け合って生活を支えていくと言った時代でした。それが高度経済成長で日本が豊になっていく過程で、家長制度は薄れ核家族が進み、親族から家族、そして個人を重視した社会制度に変化してきました。

 生活保護の制度もそれに合わせて変化し、困窮した時に家族や親族に迷惑をかけること無く、健康で文化的な生活を送れることを目指していたように私は思っていました。貧しい家庭に育った子供が、親の生活のために奉公に出る、テレビドラマの「おしん」の様なことがないように個人を単位とした最低限の生活を保障するのが生活保護だと思っていたのです。

 所が時代に逆行するような「親族扶養の徹底」がにわかに叫ばれることに違和感を持つのは私だけでしょうか?

 沈滞した日本を活性化する為には、失敗を恐れず新しい仕事や事業にチャレンジする人を増やすことが重要であり、その人達が心おきなくチャレンジできるようにするための安全網として生活保護は重要なはずです。ここで「親族扶養」を重視するなんてことになれば、親族への迷惑をかけるかも知れなと言うプレッシャーでチャレンジすることを躊躇させることにもなりかねません。

 また、行政も税制の面から見ると「親族扶養」を推進しようとしているとはとても思えません。現在の生活保護の支給額は、東京都で単身の場合住宅補助を含めて14万円弱、その上、健康保険や年金の掛け金も免除されますから、年間の受益額としては200万円近くになります。所が親族がこの人を養ったとしても、所得税の扶養家族控除はたった38万円で、おまけに健康保険料も年金の負担も必要です。そして、政府の目指す税制改革の方向性としては、税収確保と主婦などの就業、自立を目的として、扶養家族控除を減額していく傾向にあるのです。

 税制の面から扶養を減らす一方、生活保護では親族の扶養を求める、明かな矛盾です。市民から取る物はどんどん取って、給付は減らすという政府、行政にとって都合良く行政制度を変えていこうとしているのが良く分かります。政府や行政が率先して自分たちの利益を追求しようとすのですから、国民がその制度を倫理的には問題があると思いながらも自分達の都合の良いように利用しようとするのも致し方ないのかも知れません。

 生活保護の問題も人口の減少や長引く不況で国家税制が財政が逼迫し、限られた予算をどう配分するのかと言う問題の中の一つなのです。ですから、国民一人一人が税制、財源を含めて、社会福祉制度を個人を中心とした精度とするのか、あるいは家族、親族を単位とした制度としていくのか、もう一度、真剣に考えてみる必要があるのです。さもないと政府、行政に都合の良いように制度をねじ曲げられ、生活保護という最後の安瀬網を取り上げられた上、不況のまっただ中でのチャレンジを無理強いされかねません。

 本来ならば、今後の社会保障制度のあり方の議論の先頭に立つべき政治家が、お笑い芸人の名前を挙げて個人の責任を追及しているとは何とも情けないことです。こんな政治家に日本の将来を任せられませんね。次の選挙の一票を有効に使いたいものですね。

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