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院長コラムで院長を知ろう!矯正歯科専門医 河合悟が思うこと。

ワーキングプア院長コラム

2007/09/01 

 ”ワーキングプア 日本を蝕む病 ”NHKスペシャル『ワーキングプア』取材班/編 を読みました。昨年NHKで放送された番組の内容を補完した内容でした。ネットカフェで生活する人、北海道の僻地にで鬱病の父親の面倒を見ながら暮らす姉妹等々、様々な理由でまじめに働いても豊かになれない、明日への希望を持てないワーキングプアの人々の姿を客観的に描いていました。読めば読むほど、暗く思い気分になっていきました。どうしたらそうした暮らしから抜け出せるのか、そこにはその答えや解決に向けた示唆もありませんでした。問題の提起だけの内容に読み終わった後味の悪いこと。
 その中で特に私が切実に感じた事例がありました。秋田県の地方都市のテーラーを営むお年寄りの話です。このテーラーのご主人は、農家の子供として生まれ、まだ洋服を着ることが珍しかった時代に仕立屋にあこがれ、住み込みで東京のテーラーで働きながら、1級技能士の資格を取って長い間町一番の仕立屋として、多くの従業員を雇い店を切り盛りしてきました。しかし、ここ10年くらいの間に中国からの安い紳士服がどんどん入ってきたことでスーツを作る人は激減し、ここ数年は年に一人もいない状態になってしまったとのことでした。今では従業員も解雇し、たった一人でサイズ直しなどの補正で細々と暮らしているとのことです。しかし、その所得は生活保護のレベルにも達せず、本当に質素でした。唯一の楽しみは、認知症の症状がある奥さんをホームに見舞いに行くことだそうです。長い間一生懸命働き、一時は従業員を雇うほど成功した、仕立屋のご主人は、怠けたから自助努力が足らなかったから、あるいは目先の利益にとらわれ儲けすぎたために、ワーキングプアになったのでしょうか?そうでないことは、明らかです。社会の構造的な変化が、地方都市でのテーラーという職業を無くしてしまったのです。
 そこで私の心配です。歯科医師が毎年2000人以上の増え続け、人口が減り、医療費は抑制される。こうした社会構造の変化が歯科医師としての仕事が今後も存在するのか、ブログにも書いたように、もう現在でも歯科医師のワーキングプアが増えてるとの報道があるぐらいですからこの際どうなる事やら。今は何とか、家族や従業員の生活を支えていますが、いつテーラーのご主人にようになってもおかしくないと、私には思えてなりません。実のところこの本を読んでから、よく眠れないくらいです。
 この本に登場するワーキングプアの人たちに共通するのは、個人の努力不足とか能力の不足とかで貧困になったのではなく、グローバル化や国の財政問題、雇用形態の変化等、個人の力ではどうにもならない社会構造の急激な変化の犠牲者だと言う事です。個人の努力で克服できそうにないこのワーキングプアの問題を解決する手だてが有るのでしょうか?今こそ、この難問を克服する政治の力が問われているのです。参議院選挙で示された民意もそこに有るのではないでしょうか?

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