雇用のミスマッチを解消するために院長コラム
2014/03/13
景気回復に伴って、人手不足が深刻化していると言う報道を目にする機会が増えてきました。その一方で全国平均の求人倍率は1倍(1倍未満とは求人数よりも求職者数が多い状態)を下回ったままで、依然として失業者は多いという状態です。人手不足が深刻化と言いながら、ハローワークには職を求める多くの失業者が詰めかけ大賑わいです。
人手不足と就職難が同時進行する現在の状態、その原因は雇用のミスマッチに他なりません。雇用のミスマッチと言うとすぐに賃金のことを連想し、企業が支払う給与と労働者が希望する給与に大きな隔たりがあり雇用関係が成立しないと考えがちですが、問題は賃金の点だけにあるのではないのです。
今一番問題なのは、社会が必要とする人材、職種と労働者が求める職種に大きなギャップが有ることです。アベノミクスや東日本大震災の復興事業で公共事業が増え、特に東日本では建設現場の労働者が不足して、予定通りに工事が進まないような状況です。労働者の賃金は上昇し、例えば東北地方の鉄筋工の日当は4万円以上になっているらしいですが、それでも中々求人ができない状態です。現場労働者の賃金の上昇で公共事業を落札しても利益が上げられないため、建設会社が公共事業に入札しないために建設できない公共事業が山積みになっています。
つい先日、 東京都が昨年入札者がなかった豊洲新市場の建築工事3件の入札を前回の628億円から400億円超の1035億円、率にして6割超改めて公告したとのニュースが流れました。デフレがやっと収束し、物価上昇率が1~2%と言う状態なのに、建設現場では費用が60%も増加する、何でこんな事が起こるのか?それは一重に建設現場労働者の不足による物です。
人手不足は建設現場だけではありません。東京では飲食店の従業員の人手不足も深刻です。1,200円の時給でアルバイトを求人しても面接に来る人さえもいないとある飲食チェーン店の経営者はインタビューで答えていました。
私は美容室を経営していますが、美容師の求人でも大変苦労しています。福岡では美容師の求人倍率は20倍と言われています。美容師学校を卒業した美容師の2割は美容師として就職せず、また半数は2年以内に美容師をやめていっています。
結局、野外で働く建設現場や深夜まで勤務がある飲食店などの肉体的にキツイ職種、技術の習得に時間や努力が必要な職種などの現場で働く労働者がいなくなっているのです。
その一方で最低賃金ぎりぎりの低賃金で働く物販やサービス業の労働者はワーキングプアと言われながらも、空調が効いた快適な労働環境でさしたる技術の習得も必要としないことから人手不足とは無縁です。
なぜ、このような雇用のミスマッチが起こってしまったのでしょうか?その原因は日本の教育制度にあると思います。高度成長期には、技術を身につけて現場労働者、職人、ブルーカラーよりも高学歴の管理職、ホワイトカラーの方が高収入なのが当たり前でした。それは、大学進学率が低く高学歴の人材が少なかったために、希少性が高かった高学歴の人が高い賃金を得ることになっていたのです。しかし、大学進学率が5割を超えた現在、高学歴の人の割合の方が増えたわけですから、逆に現場労働者の希少性が高まりブルーカラーの賃金がホワイトカラーの賃金を超えることになっても不思議はありません。
しかし、高学歴イコール高収入が未だ多く日本人の常識ですから、親も教師も子供の資質や適正を無視して大学への進学が人生の成功者への唯一無二道であるかのように教育し、結果として雇用のミスマッチを産んでしまっているのです。
全ての子供に高学歴を目指させる日本の歪んだ教育制度に疑問を感じていたところ、先日ドイツの教育制度について知る機会がありました。ドイツでは大学進学を目指す「ギムナジウム」(7年または9年生の普通中学校)と15才で義務教育終了後に職業訓練を受けながら学校に通う「デュアルシステム」やフルタイムの職業訓練校で手に職を付けるという大きく分けて3つの道があります。そして、将来どの進路を選ぶのかを小学校4年生から能力や適性を観察しながら指導し、子供に12才までに将来の進路を決めさせています。ここで大切なのはどの進路を選んでも生涯給はは大きく変わらないというドイツの職業事情です。そのため最も人気が高いのはデュアルシステムで、ギムナジウムに進み人との比は7対3、大学進学者よりも18才で手に職を付けた人の方が安定した生活を送ることができるらしいです。
振り返って日本の教育の現状はどうでしょう。親や教師が小学生に将来の職業について子供たちが理解できるように具体的に説明し、子供たち自身に将来の進路を考えさせようとしているでしょうか?単純に将来高所得、楽な暮らしするには高学歴、大学進学がベストと決め込んで、ただ「勉強しなさい」で済ましているのではないでしょうか?
机に座って勉強するのが苦手な子供に大学に進学させてデスクワークをさせることが幸せに繋がりますか?もの作りが好き、料理が好きなら、その技術を身につける方が良いのではと考えないのは何故でしょう。好きなことなら苦労も苦になりませんから、人一倍努力して大成功する可能性は大いにあるはずです。
私自身の話をすれば、子供の頃一番好きだったのは工作、今でも実家には私が学校で作った本棚があります。将来の進路について考えたのは中学校の頃ですが、自分の意見を中々曲げられない性格だったので人に使われるのではなく自分で着きる仕事、そして何を作る仕事に就きたい思っていました。最初は町工場を作りたいと思っていましたが、現実としてどうしたらそれが実現できるの変わらず、高校生になってから自分で開業できて、人の歯を作る?細かな作業を必要とする歯科医の道、つまり手に職を付ける職人の道を選びました。いろいろ大変なこともありましたが、好きな仕事だから頑張れた、その結果として現在の暮らしがあると何時も思っています。
子供たちにも小さな頃から大人になった時、自分で生きていけるようにどんな仕事をするのかよく考えるように言い聞かせてきました。有名大学を目指すように言ったことは一度もありません。大学に進学するのは将来の仕事の為であり、そこで習得する知識や技術が重要であり大学名前なんてどうでも良いことと思っていましたから。そんな教育が良かったのか、悪かったのか子供たちは自分自身で進路を考えて進んできましたが、子供の考えることで上手くいくばかりでなく、普通なら社会人となっている年齢ですが、未だ学生のまま、目標に向かってもがいています。
雇用のミスマッチを解消し、日本を支える技術者、現場労働者を育てる事は、これからの日本の将来にも大切ですし、労働者の生活の安定と幸せにきっと繋がるはずです。画一的な教育でなく、個人の能力や適性を考慮した教育制度を構築することが必要とされていると思います。
人手不足と就職難が同時進行する現在の状態、その原因は雇用のミスマッチに他なりません。雇用のミスマッチと言うとすぐに賃金のことを連想し、企業が支払う給与と労働者が希望する給与に大きな隔たりがあり雇用関係が成立しないと考えがちですが、問題は賃金の点だけにあるのではないのです。
今一番問題なのは、社会が必要とする人材、職種と労働者が求める職種に大きなギャップが有ることです。アベノミクスや東日本大震災の復興事業で公共事業が増え、特に東日本では建設現場の労働者が不足して、予定通りに工事が進まないような状況です。労働者の賃金は上昇し、例えば東北地方の鉄筋工の日当は4万円以上になっているらしいですが、それでも中々求人ができない状態です。現場労働者の賃金の上昇で公共事業を落札しても利益が上げられないため、建設会社が公共事業に入札しないために建設できない公共事業が山積みになっています。
つい先日、 東京都が昨年入札者がなかった豊洲新市場の建築工事3件の入札を前回の628億円から400億円超の1035億円、率にして6割超改めて公告したとのニュースが流れました。デフレがやっと収束し、物価上昇率が1~2%と言う状態なのに、建設現場では費用が60%も増加する、何でこんな事が起こるのか?それは一重に建設現場労働者の不足による物です。
人手不足は建設現場だけではありません。東京では飲食店の従業員の人手不足も深刻です。1,200円の時給でアルバイトを求人しても面接に来る人さえもいないとある飲食チェーン店の経営者はインタビューで答えていました。
私は美容室を経営していますが、美容師の求人でも大変苦労しています。福岡では美容師の求人倍率は20倍と言われています。美容師学校を卒業した美容師の2割は美容師として就職せず、また半数は2年以内に美容師をやめていっています。
結局、野外で働く建設現場や深夜まで勤務がある飲食店などの肉体的にキツイ職種、技術の習得に時間や努力が必要な職種などの現場で働く労働者がいなくなっているのです。
その一方で最低賃金ぎりぎりの低賃金で働く物販やサービス業の労働者はワーキングプアと言われながらも、空調が効いた快適な労働環境でさしたる技術の習得も必要としないことから人手不足とは無縁です。
なぜ、このような雇用のミスマッチが起こってしまったのでしょうか?その原因は日本の教育制度にあると思います。高度成長期には、技術を身につけて現場労働者、職人、ブルーカラーよりも高学歴の管理職、ホワイトカラーの方が高収入なのが当たり前でした。それは、大学進学率が低く高学歴の人材が少なかったために、希少性が高かった高学歴の人が高い賃金を得ることになっていたのです。しかし、大学進学率が5割を超えた現在、高学歴の人の割合の方が増えたわけですから、逆に現場労働者の希少性が高まりブルーカラーの賃金がホワイトカラーの賃金を超えることになっても不思議はありません。
しかし、高学歴イコール高収入が未だ多く日本人の常識ですから、親も教師も子供の資質や適正を無視して大学への進学が人生の成功者への唯一無二道であるかのように教育し、結果として雇用のミスマッチを産んでしまっているのです。
全ての子供に高学歴を目指させる日本の歪んだ教育制度に疑問を感じていたところ、先日ドイツの教育制度について知る機会がありました。ドイツでは大学進学を目指す「ギムナジウム」(7年または9年生の普通中学校)と15才で義務教育終了後に職業訓練を受けながら学校に通う「デュアルシステム」やフルタイムの職業訓練校で手に職を付けるという大きく分けて3つの道があります。そして、将来どの進路を選ぶのかを小学校4年生から能力や適性を観察しながら指導し、子供に12才までに将来の進路を決めさせています。ここで大切なのはどの進路を選んでも生涯給はは大きく変わらないというドイツの職業事情です。そのため最も人気が高いのはデュアルシステムで、ギムナジウムに進み人との比は7対3、大学進学者よりも18才で手に職を付けた人の方が安定した生活を送ることができるらしいです。
振り返って日本の教育の現状はどうでしょう。親や教師が小学生に将来の職業について子供たちが理解できるように具体的に説明し、子供たち自身に将来の進路を考えさせようとしているでしょうか?単純に将来高所得、楽な暮らしするには高学歴、大学進学がベストと決め込んで、ただ「勉強しなさい」で済ましているのではないでしょうか?
机に座って勉強するのが苦手な子供に大学に進学させてデスクワークをさせることが幸せに繋がりますか?もの作りが好き、料理が好きなら、その技術を身につける方が良いのではと考えないのは何故でしょう。好きなことなら苦労も苦になりませんから、人一倍努力して大成功する可能性は大いにあるはずです。
私自身の話をすれば、子供の頃一番好きだったのは工作、今でも実家には私が学校で作った本棚があります。将来の進路について考えたのは中学校の頃ですが、自分の意見を中々曲げられない性格だったので人に使われるのではなく自分で着きる仕事、そして何を作る仕事に就きたい思っていました。最初は町工場を作りたいと思っていましたが、現実としてどうしたらそれが実現できるの変わらず、高校生になってから自分で開業できて、人の歯を作る?細かな作業を必要とする歯科医の道、つまり手に職を付ける職人の道を選びました。いろいろ大変なこともありましたが、好きな仕事だから頑張れた、その結果として現在の暮らしがあると何時も思っています。
子供たちにも小さな頃から大人になった時、自分で生きていけるようにどんな仕事をするのかよく考えるように言い聞かせてきました。有名大学を目指すように言ったことは一度もありません。大学に進学するのは将来の仕事の為であり、そこで習得する知識や技術が重要であり大学名前なんてどうでも良いことと思っていましたから。そんな教育が良かったのか、悪かったのか子供たちは自分自身で進路を考えて進んできましたが、子供の考えることで上手くいくばかりでなく、普通なら社会人となっている年齢ですが、未だ学生のまま、目標に向かってもがいています。
雇用のミスマッチを解消し、日本を支える技術者、現場労働者を育てる事は、これからの日本の将来にも大切ですし、労働者の生活の安定と幸せにきっと繋がるはずです。画一的な教育でなく、個人の能力や適性を考慮した教育制度を構築することが必要とされていると思います。