インプラントは万能か?院長コラム
2009/06/05
歯科医院の過当競争による経営難が叫ばれ、先日発売された週刊誌のタイトルには歯科医の5人に一人は年収200万円と書かれていました。日本有数の歯科医院激戦区と言われる福岡市では歯科医院の閉院、転売が日常茶飯事となり、先月には経営に失敗した歯科医師が自殺したと言った噂までささやかれていました。
そんな歯科医医院の救世主として注目を集めているのがインプラントです。来院患者数の減少に加えて、改訂の度に下げられる保険点数の影響で、健康保険の治療だけで歯科医院の経営を安定化させることは最早困難。そこで自由診療で料金を自由に設定できるインプラントが収益の切り札として注目を集める訳です。
インプラント治療が始まった当初は、炎症などの為に良好な治療結果が得られずトラブルも多く、大半の歯科医はインプラント治療を敬遠していました。しかしインプラントの治療が行われるようになってから30年近くが経ち、器材の改良で比較的容易に満足できる治療結果を得ることができるようになったことで、多くの歯科医院でインプラント治療が行われるようになっています。
インプラント治療が広く行われるようになったことで、トラブルも良く耳にするようになりました。これは、治療技術が低下したとか言ったことではなく、治療が上手く行かない割合が減ったとしても全体の数が増えたためにトラブルになるケースが増えたと言うことでしょう。トラブルの多くは、術者の未熟さ、あるいは無理な治療つまり本当ならインプラントに耐えられないような顎骨にインプラントをしてしまう事による物です。患者さんの入れ歯よりもインプラントを望む気持ちと高額な治療費を手にできる誘惑でついつい無理な治療をしてしまう、その結果がトラブルとなると言ったことです。
しかし、最近もっと驚くような患者さんに遭遇しました。30代の女性で右下の奥歯を抜歯してインプラントをしないと骨が溶けて歯がダメになると一般歯科で言われたの事でした。診察させていただきましたが、その歯は以前に虫歯で神経を取って治療してあるのと少し内側に倒れているだけで痛み等の自覚症状もないし、このまま放置しても、じきに歯がダメになるとはとても思えませんでした。もう少し詳しく聞いてみると「上の歯もこのままにしておくと骨が溶けてダメになるのでそれも早く抜いてインプラントをしないといけない」と言われたとのことでした。その歯も虫歯の治療で神経を取って治療してありましたが、痛み等の自覚症状もなくこのままで治療の必要があるとは思えない状態でした。その上、患者さんが言われるのには、ご主人はもっと沢山の歯を抜いてインプラントの必要があると言われたとのことでした。
神経を取って治療してある歯は、確かに健康な歯に比べて寿命は短いかも知れませんが、それを抜いてインプラントをしないといけないというのは大いに疑問です。自覚症状もない、まだまだ使える自分の歯を抜いてインプラントに変える、本当に必要でしょうか?痛みが出たり、炎症を起こしたり、動揺してたりしてどうしても自分の歯を残すことができずに抜歯した後に、インプラントを入れるなら、何本入れようがそれは治療として妥当な物でしょう。しかしこの場合妥当な医療と言えるでしょうか?例えば、人工心臓が改良され実用に耐えるようになったとして、心臓に動脈硬化が認められるからと言って、いきなり心臓を取り出して、人工心臓に交換しますか?あり得ないことでしょう。いろいろ治療を行った上での最後の手段として選ぶのが人工心臓ではないでしょうか?インプラント治療もこれと同じだと思います。果たしてこれが医療と言えるのでしょうか?インプラントは失った歯を補う素晴らしい治療法ですが、あくまでも最後の手段としての治療法だと思います。
次々と歯を抜いてインプラントを勧めた歯科医院のホームページには、立派な経歴の先生が高額なCTを導入し高度なインプラント治療を行っていると書かれています。しかし、その実態は高額な器機をペイする為に、何でもかんでもインプラントを行い収入を上げる歯科医院ではないのかと思われて仕方ありません。
本来必要でないインプラント治療を行うことを歯科医のモラルの問題と言って片付けるのは簡単ですが、そこまで歯科医を追い込む歯科医師過剰、歯科医院過当競争、この問題を解決しない限り、国民が良い歯科医療を受けられるようにはならないと思います。
そんな歯科医医院の救世主として注目を集めているのがインプラントです。来院患者数の減少に加えて、改訂の度に下げられる保険点数の影響で、健康保険の治療だけで歯科医院の経営を安定化させることは最早困難。そこで自由診療で料金を自由に設定できるインプラントが収益の切り札として注目を集める訳です。
インプラント治療が始まった当初は、炎症などの為に良好な治療結果が得られずトラブルも多く、大半の歯科医はインプラント治療を敬遠していました。しかしインプラントの治療が行われるようになってから30年近くが経ち、器材の改良で比較的容易に満足できる治療結果を得ることができるようになったことで、多くの歯科医院でインプラント治療が行われるようになっています。
インプラント治療が広く行われるようになったことで、トラブルも良く耳にするようになりました。これは、治療技術が低下したとか言ったことではなく、治療が上手く行かない割合が減ったとしても全体の数が増えたためにトラブルになるケースが増えたと言うことでしょう。トラブルの多くは、術者の未熟さ、あるいは無理な治療つまり本当ならインプラントに耐えられないような顎骨にインプラントをしてしまう事による物です。患者さんの入れ歯よりもインプラントを望む気持ちと高額な治療費を手にできる誘惑でついつい無理な治療をしてしまう、その結果がトラブルとなると言ったことです。
しかし、最近もっと驚くような患者さんに遭遇しました。30代の女性で右下の奥歯を抜歯してインプラントをしないと骨が溶けて歯がダメになると一般歯科で言われたの事でした。診察させていただきましたが、その歯は以前に虫歯で神経を取って治療してあるのと少し内側に倒れているだけで痛み等の自覚症状もないし、このまま放置しても、じきに歯がダメになるとはとても思えませんでした。もう少し詳しく聞いてみると「上の歯もこのままにしておくと骨が溶けてダメになるのでそれも早く抜いてインプラントをしないといけない」と言われたとのことでした。その歯も虫歯の治療で神経を取って治療してありましたが、痛み等の自覚症状もなくこのままで治療の必要があるとは思えない状態でした。その上、患者さんが言われるのには、ご主人はもっと沢山の歯を抜いてインプラントの必要があると言われたとのことでした。
神経を取って治療してある歯は、確かに健康な歯に比べて寿命は短いかも知れませんが、それを抜いてインプラントをしないといけないというのは大いに疑問です。自覚症状もない、まだまだ使える自分の歯を抜いてインプラントに変える、本当に必要でしょうか?痛みが出たり、炎症を起こしたり、動揺してたりしてどうしても自分の歯を残すことができずに抜歯した後に、インプラントを入れるなら、何本入れようがそれは治療として妥当な物でしょう。しかしこの場合妥当な医療と言えるでしょうか?例えば、人工心臓が改良され実用に耐えるようになったとして、心臓に動脈硬化が認められるからと言って、いきなり心臓を取り出して、人工心臓に交換しますか?あり得ないことでしょう。いろいろ治療を行った上での最後の手段として選ぶのが人工心臓ではないでしょうか?インプラント治療もこれと同じだと思います。果たしてこれが医療と言えるのでしょうか?インプラントは失った歯を補う素晴らしい治療法ですが、あくまでも最後の手段としての治療法だと思います。
次々と歯を抜いてインプラントを勧めた歯科医院のホームページには、立派な経歴の先生が高額なCTを導入し高度なインプラント治療を行っていると書かれています。しかし、その実態は高額な器機をペイする為に、何でもかんでもインプラントを行い収入を上げる歯科医院ではないのかと思われて仕方ありません。
本来必要でないインプラント治療を行うことを歯科医のモラルの問題と言って片付けるのは簡単ですが、そこまで歯科医を追い込む歯科医師過剰、歯科医院過当競争、この問題を解決しない限り、国民が良い歯科医療を受けられるようにはならないと思います。