イギリスのEU離脱と参議院選挙院長コラム
2016/07/02 政治・経済
イギリス国民は国民投票でイギリス人の予想、EU各国の予想、いや世界の人々の予想を裏切ってEU離脱を選択しました。イギリスのEU脱退(ブレグジット)は世界の為替、株式等の金融市場を大混乱に陥れ、世界の景気は大きく落ち込む事が避けられないと言われています。
しかし、ブレグジットが世界中の景気を悪化させるとはイギリス国民も十分承知していたはずなのに、どうしてこんな選択をしてしまったのでしょうか?私が思う一番の原因は、イギリス国民の油断、離脱派が色々言っても現状が変わることはない。移民問題や景気の悪化はイギリスよりもEUの方針に問題があるのだから、ちょっとばかりEU(この場合多分ドイツとフランス)にイギリスの存在感をアピールするための脅しとして国民投票を行ったのに過ぎないのではないか?一般的なイギリス国民はきっと自分が積極的に残留を支持しなくても、あるいはわざわざ残留に投票しなくたって、結果は残留に決まっているという油断。大方の政治家、国民のまさかEU離脱なんてあり得ないという油断が、この歴史的な結果をもたらしてしまったと思うのです。
ブレグジットによって引き起こされる経済面の影響ばかりが伝えられていますが、果たしてそれだけでしょうか?EUは元々経済の発展を目的として作られた物ではありません。第二次大戦で闘ったヨーロッパ諸国が、国境をなくし一つの国となることで、国同士の利害による紛争をなくすことを目標に1946年にヨーロッパ評議会が設立され、その後様々な行政システムが統合されEC(欧州諸共同体)を経て、2007年に現在のEU(欧州連合)ができたのです。
EU設立の目的は、国境を無くしてナショナリズムの台頭を押さえて平和なヨーロッパを作る事だったハズ。これが上手く行けば、国境を無くし世界中を共同国家にする、言わば地球国家の設立という次のステップへ進めたかも知れないのですが、あえなく人類の夢は頓挫してしまいました。
そして、ブレグジットの影響は、経済問題だけには留まらないと思います。EU加盟国は、イギリスに続いてギリシャを始めEUの厳しい財政基準等に不満を抱く国々でナショナリズムが台頭しEU離脱が雪崩のように起こるのを心配しています。しかし、それ以上に心配なのはイギリスの政策です。EU離脱でイギリス経済の苦境は誰も認めていますが、これを克服するためにイギリスはどんな手段を講じるのでしょうか?
私は、中国への接近しかないと思います。昨年、中国の習近平国家主席のイギリス訪問では、過去に類を見ない程の厚遇で迎えましたし、アジア開発銀行にもイギリスはアメリカの反対を押し切ってまで参加しました。今までも経済的な利害を優先して中国に接近してきたイギリスですから、EU離脱で経済の混迷を深めれば中国にすり寄るのは明らかではないでしょう。
人権問題等で西側諸国から非難されている中国にとってもイギリスがある意味お墨付きを与える事になるので好都合で、利害が一致します。南シナ海を始とする領有権問題でも遠く離れたイギリスは、東南アジアの領有権がどうなろうと関係ありませんから、こっそり陰でイギリスの経済のプラスになるような提案(言ってみれば賄賂ですが)でもあれば、イギリスは中国の言いないでしょう。
イギリスを味方に付けた中国は一段と強気になり、アメリカを初めとする自由主義連合の国々と対立することになって行きます。ここまで書いてくると、何だか第二次世界大戦前夜の様相と似てきた気がして背筋が寒くなりませんか?
よく日本人は「平和ぼけ」と言われますが、実は先進国の若者は皆「平和ぼけ」なのかも知れません。イギリスのキャメロン首相だって1966年生まれの49才、離脱派のリーダージョン ポリスも1964年生まれの52才ですから、生まれてからずっと平和な世界で暮らしていたので、平和ぼけの可能性は十分です。EUはもともと1946年にイギリスのウィンストン・チャーチル首相が戦争の反省からヨーロッパ合衆国構想を唱えたことが始まりなのに、平和ぼけの後継政治家がその理想をぶちこわすとは皮肉です。
さて、視点を日本に移すと参議院選挙まっただ中。自民党はアベノミクスの成果初めとする経済問題を争点に争点としていますが、その鎧のうちには憲法改正が見え隠れしています。平和ぼけの日本人もイギリス人と同じように、参議院選挙で憲法改正派が三分の二の議席を取り、まさか憲法九条が改正されるようなことはないと想っているのかも知れませんが、これこそが油断大敵というもの。
前回の衆議院選挙で自民党は消費税値上げの延期を争点にしましたが、選挙の後でしたことは憲法九条の解釈を変更して集団的自衛権を認めることでした。その時なって、今まで政治に関心が無かった若者達が集団的自衛権反対を掲げてデモをくり返しましたが、所詮は後の祭りでした。今になって、イギリス議会のウェブサイトに、国民投票のやり直しを求める署名が殺到しているのと瓜二つではありませんか?
平和は空気の様にあって当たり前、ある時にはそのありがたさ実を感じることはありませんが、人類にとっても何物にも代えがたい大切なものです。しかし、平和を維持するのには不断の努力が必要です。欲望のままに生きるのではなく、個人の欲望を抑制し、公共の精神を忘れてはなりません。
今回の参議院選挙ではブレグジットを教訓に、平和ぼけに油断することなく後悔のない1票を投じなくてはと思います。
しかし、ブレグジットが世界中の景気を悪化させるとはイギリス国民も十分承知していたはずなのに、どうしてこんな選択をしてしまったのでしょうか?私が思う一番の原因は、イギリス国民の油断、離脱派が色々言っても現状が変わることはない。移民問題や景気の悪化はイギリスよりもEUの方針に問題があるのだから、ちょっとばかりEU(この場合多分ドイツとフランス)にイギリスの存在感をアピールするための脅しとして国民投票を行ったのに過ぎないのではないか?一般的なイギリス国民はきっと自分が積極的に残留を支持しなくても、あるいはわざわざ残留に投票しなくたって、結果は残留に決まっているという油断。大方の政治家、国民のまさかEU離脱なんてあり得ないという油断が、この歴史的な結果をもたらしてしまったと思うのです。
ブレグジットによって引き起こされる経済面の影響ばかりが伝えられていますが、果たしてそれだけでしょうか?EUは元々経済の発展を目的として作られた物ではありません。第二次大戦で闘ったヨーロッパ諸国が、国境をなくし一つの国となることで、国同士の利害による紛争をなくすことを目標に1946年にヨーロッパ評議会が設立され、その後様々な行政システムが統合されEC(欧州諸共同体)を経て、2007年に現在のEU(欧州連合)ができたのです。
EU設立の目的は、国境を無くしてナショナリズムの台頭を押さえて平和なヨーロッパを作る事だったハズ。これが上手く行けば、国境を無くし世界中を共同国家にする、言わば地球国家の設立という次のステップへ進めたかも知れないのですが、あえなく人類の夢は頓挫してしまいました。
そして、ブレグジットの影響は、経済問題だけには留まらないと思います。EU加盟国は、イギリスに続いてギリシャを始めEUの厳しい財政基準等に不満を抱く国々でナショナリズムが台頭しEU離脱が雪崩のように起こるのを心配しています。しかし、それ以上に心配なのはイギリスの政策です。EU離脱でイギリス経済の苦境は誰も認めていますが、これを克服するためにイギリスはどんな手段を講じるのでしょうか?
私は、中国への接近しかないと思います。昨年、中国の習近平国家主席のイギリス訪問では、過去に類を見ない程の厚遇で迎えましたし、アジア開発銀行にもイギリスはアメリカの反対を押し切ってまで参加しました。今までも経済的な利害を優先して中国に接近してきたイギリスですから、EU離脱で経済の混迷を深めれば中国にすり寄るのは明らかではないでしょう。
人権問題等で西側諸国から非難されている中国にとってもイギリスがある意味お墨付きを与える事になるので好都合で、利害が一致します。南シナ海を始とする領有権問題でも遠く離れたイギリスは、東南アジアの領有権がどうなろうと関係ありませんから、こっそり陰でイギリスの経済のプラスになるような提案(言ってみれば賄賂ですが)でもあれば、イギリスは中国の言いないでしょう。
イギリスを味方に付けた中国は一段と強気になり、アメリカを初めとする自由主義連合の国々と対立することになって行きます。ここまで書いてくると、何だか第二次世界大戦前夜の様相と似てきた気がして背筋が寒くなりませんか?
よく日本人は「平和ぼけ」と言われますが、実は先進国の若者は皆「平和ぼけ」なのかも知れません。イギリスのキャメロン首相だって1966年生まれの49才、離脱派のリーダージョン ポリスも1964年生まれの52才ですから、生まれてからずっと平和な世界で暮らしていたので、平和ぼけの可能性は十分です。EUはもともと1946年にイギリスのウィンストン・チャーチル首相が戦争の反省からヨーロッパ合衆国構想を唱えたことが始まりなのに、平和ぼけの後継政治家がその理想をぶちこわすとは皮肉です。
さて、視点を日本に移すと参議院選挙まっただ中。自民党はアベノミクスの成果初めとする経済問題を争点に争点としていますが、その鎧のうちには憲法改正が見え隠れしています。平和ぼけの日本人もイギリス人と同じように、参議院選挙で憲法改正派が三分の二の議席を取り、まさか憲法九条が改正されるようなことはないと想っているのかも知れませんが、これこそが油断大敵というもの。
前回の衆議院選挙で自民党は消費税値上げの延期を争点にしましたが、選挙の後でしたことは憲法九条の解釈を変更して集団的自衛権を認めることでした。その時なって、今まで政治に関心が無かった若者達が集団的自衛権反対を掲げてデモをくり返しましたが、所詮は後の祭りでした。今になって、イギリス議会のウェブサイトに、国民投票のやり直しを求める署名が殺到しているのと瓜二つではありませんか?
平和は空気の様にあって当たり前、ある時にはそのありがたさ実を感じることはありませんが、人類にとっても何物にも代えがたい大切なものです。しかし、平和を維持するのには不断の努力が必要です。欲望のままに生きるのではなく、個人の欲望を抑制し、公共の精神を忘れてはなりません。
今回の参議院選挙ではブレグジットを教訓に、平和ぼけに油断することなく後悔のない1票を投じなくてはと思います。