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院長コラムで院長を知ろう!矯正歯科専門医 河合悟が思うこと。

治療ガイドラインと診断院長コラム

2015/02/01 

 新年早々、近親者に相次いで腫瘍が見つかり悪性腫瘍の治療についていろいろ考えさせられました。いずれも自覚症状は有りませんでしたが、偶然健康診断などで悪性腫瘍の可能性を指摘されました。

 その後は次々と検査が行われ、検査の結果が全て出そろう前に手術の日程までが決められてしまうと言う手際の良さ。患者が自分自身治療についてゆっくり考える時間をお与えないと言うか、自分自身の病状をきちんと理解する間もなく、どんどん治療いや治療という名の作業が進んで行ってしまう感じです。

 当然、様々な説明がありますが全て決められたことを誰にでも同じように説明するというよりただ「述べる」、そして書類を渡して、説明を受け、同意したと署名させるだけで患者に安心して治療を受けてもらうという気持ちはとても感じられません。飛行機に乗ったときのシートベルトなどの安全設備の説明のように本当は重要だけど、乗務員にとってはいつもの決められた作業でマニュアル通りするだけ、お客が聞いていようといまいが関係なし。これと同じような感じで、人に命を左右する医療が行われているのです。

 そして、一番肝心な診断と治療法の決定についても、これ又画一的で検査結果のデーターからガイドライン沿って治療方法が機械的に決まります。検査データーが同じなら卒後研修医が診断しても、経験豊富なべベテラン医師でも診断しても結果は同じ、これがガイドラインに沿った治療方法です。そして、そのガイドラインに沿っていれば治療結果が不幸なことになったとしても、医師はその責任を問われることはありません。ある意味、医師個人の責任逃れの免罪符ともなり得るのが、治療ガイドラインです。

 機械的に導き出される診断や治療方法それが医療と言えるでしょうか?データーが全てであれば医師が診断する必要はなり、コンピューターにさせた方がよほど効率的で間違いがなくなります。しかし、私は検査データーが診断に必要な情報の全てとは思いません。本来は患者さんのデーターに表せない情報、例えば顔色や精神状態あるいは生活環境等々も診断に必要不可欠な情報です。そうしたデーターに表せない情報を医師が十分考慮した上で、その患者さん一人病状にあった治療方法を考えるのが診断だと思います。ですから、診断する医師の経験や考えで同じ患者さんに対しての診断が違うの当然です。その違いがあるからこそ、セカンドオピニオンを聞く意味も有ると言うものです。

 現代の医療では、数値データーが非常に重視され、医師の経験や勘に左右される数値化されない患者さんの情報は軽視されがちです。矯正歯科の領域でも規格された条件で撮影したレントゲン写真を計測し、平均値から導き出された正常値と比較して、骨格や歯の異常診断するセファロ分析が非常に重視されています、しかし、矯正歯科治療では数値化できない患者さんの顔の軟組織や年齢による変化等々、様々な要因を考慮に入れて治療方針を決定する必要があるので、セファロ分析の分析結果が同じとしても治療方針が違う事があるのが普通です。

 本来、正しい診断とは患者さん個人個人について行われるべき物なのに、ガイドラインと言う、一見正確そうな基準を示して誰でも簡単に同じ診断、治療方針を立てられるようにするのが、医療の進歩なのでしょうか?こんな事で、患者さんが心から納得して医療を受ける事が出来るのでしょうか?

 しかし、こんな医療が行われていたのでは、医療を受ける側の患者さんと医療を行う側の医師やパラメディカルスタッフの信頼関係を築けるはずもなく、相互不信は増大し質の高い医療は行えなくなりますし、又トラブルの増え医療訴訟とも増加し良い事は何もありません。

 それなのに何故、画一的な医療が行われるようになってきてしまったのでしょうか?その一つの原因は国の財政のが厳しくなったことによる、医療費の抑制政策だと思います。患者さん一人一人に時間をかけていたのでは、採算が合わないのが現状です。入院期間も2週間を境に、診療報酬が大きく下げられますから病院としては、何とか2週間でさっさと退院してもらいたい訳です。検査も手術も手早く終わらせるためには、ゆっくり患者さんの気持ちを確かめてなんて事をしている時間的余裕もないのです。

 そこで、誰でも納得できるガイドラインで、患者にグズグズ言わせず突き進むそれが、国が推し進めてきた現代医療の真の姿なのです。患者さんの治療に心血を注ぎ、多くの経験を積んできたベテラン医師もガイドラインを無視すれば責任を問われることになり、多くの経験を生かし、患者さん一人一人に最適な言わばオーダーメイドの医療を行う事は至難の業なのかも知れません。

 幸いにも私の専門分野である矯正歯科は健康保険が適応されませんから、国の財政の都合に左右され制約を受けることもありません。費用も患者さんとの契約で自由に決められますから、自分が患者さんにとって本当に必要と思う時間や設備をまかなえる料金を頂くことができます。国からの援助がないことで本当に自分がよいと思う治療を追求する事が出来るのです。ある意味すごく恵まれた環境で医療を行う事が出来るのですから、私はデーターやガイドラインに惑わされることなく、自分自身の経験と勘そして五感(見て、聞いて触って、専門用語で言う視診、問診、触診)を駆使して、患者さん一人一人に最もふさわしい矯正治療を行っていきたいと改めて思いました。   

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