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院長コラムで院長を知ろう!矯正歯科専門医 河合悟が思うこと。

STAP細胞騒動に思う院長コラム

2014/05/01 

 理化学研究所の小保方晴子研究員騒動のSTAP細胞騒動は、ネイチャーの論文に使われた画像データー疑惑が報じられてから2が月以上経過した今も、騒動は終結していません。小保方研究員は会見を開きSTAP細胞は存在したと明言し、今後再現実験でそれを証明すると言う事なのでそれで全て終わり良いと思いましたが、マスコミはそれで終わりにはしてくれなかったようです。

 テレビの情報番組では、医学的な研究については素人同然のコメンテーターが色々勝手な事を言っていますが、その原因は研究に従事したことない人が医学や生物学の研究や論文を高く評価しすぎていると言う事に由来するのではないかと思います。

 私も若い頃、大学の研究室で研究し、学会発表をし、論文を書いてきました(院長の業績)。学会に行けば、歯科の中の矯正歯科という細分化された学会でさえ、日本の中のだけでも数百の発表があり、学会誌には毎年数十の論文が記載されました。大学病院で診療の傍ら、あるいは学生の教育の傍ら、毎年幾つかの学会で発表し論文を書くのですから、時間にも限りが有りますから、そんな大層な研究ができるはずもなく、できる範囲でそれなりの研究成果を出し、論文を書く訳です。片手とまでは言いませんが、研究に全勢力を注ぐ訳ではありませんから、医学論文は一般社会の人が思っている程、時間をかけて丁寧に書かれている物ばかりではありませんし、そして論文の数も沢山あるのが真相です。

 それだけ沢山の論文が発表されますから、後になって実は間違っていたのではないかという論文も沢山有るのが真実です。小保方研究員の論文が載った世界に冠たるネイチャーに記載された論文でも、後の再実験で再現性のなかった論文も多数ある事は研究者は知っています。

 しかし、このような大した事がないかも知れない沢山の研究の積み重ねが、医学の進歩をもたらしてきたのです。決してノーベル賞に値するような大発見だけが医学の進歩を支えてきた訳ではありませんし、研究者を大発見へと導くのはそれまでの名も知れない研究成果だと私は思います。

 かつて研究者の端くれだった私が、STAP細胞騒動を見て、一番腹立たしいのは小保方研究員の上司、指導者の対応です。小保方研究員は疑惑の発端である画像データーについて取り違えたと言っていますから、重大かも知れませんが単純なミスです。大きな組織で研究費も滑沢な理化学研究所ですから、小保方研究員もユニットリーダーとして多くの研究に関わり自分の研究のみならず、後輩の研究等々、忙しい中で画像の取り違いが有っても不思議ではありません。

 論文にミスがあっても研究の結果が正しいのであれば、それは正しい論文であり、それを主張し、部下を養護するのが上司、指導者の責任ではないでしょうか?自分が指導し、内容をチェックした上で投稿した論文に疑惑が持たれたのであれば、論文の筆頭者でなくてもそこに名を連ねた共著者は同じ責任を負うのが当たり前です。

 論文を書いたことがある人なら、誰でも幾つかミスがあっても仕方がない、いやあるのが当たり前と心の中で思っているはずです。今回の騒動でも、これぐらいのことで何で大問題になるのかと思っている研究者は沢山いると思います。それなのにマスコミに登場し、コメントを述べる大学教授達は揃いも揃って、「画像の取り違いは考えられない」、「そんなミスをするはずがない」コメントして、さも医学論文が一点の間違いもない崇高な物のように主張しているは、偽善者としか思えません。

 それからもう一つ気になるのが、小保方研究員の早稲田大学博士論文についてのコピペ疑惑です。博士論文とは大学院の博士課程を終了する時に書く論文で、私をこれを書いた時やっと自分で研究ができる人間だと認められたと思ったのを覚えています。つまり、研究者として独り立ちできる事の証明のような物です。ですから、これを書く時点では、指導教官に一から十まで指導を受けるのが普通で、下書きを何度も、何度も修正させられ、やっとの事で書き上げると言った感じでした。

 私の時代と違って小保方研究員の学位論文は英語で書かれていましたが、いくら優秀な小保方研究員と言えども、学位論文以前に英語で論文を幾つも書いていたとは思えませんから、これはまた一段とハードルが高かったことでしょう。日本人が英語で論文を書こうとする時、最初にするのは同じような研究論文を探してどんな文章が書いてあるかをチェックすることです。そして、その中で自分の論文に使えそうなフレーズをまねして、論文を書いていく訳です。小保方研究員の博士論文でコピペが指摘されていたのは、論文の緒言の部分つまり研究に至る経緯をその分野の以前の研究報告などを列挙して説明する部分です。言わば研究の歴史みたいな物ですから、実は誰が書いても同じようなことになるのは必然、コピペと言われてもし方がないし、逆のその内容に間違いないならコピペでも何ら問題ないと思います。その程度のことなので早稲田大学、あるいはその博士論文を指導した指導教官や論文の主査が論文の結果に間違いがないので学位論文として問題ないと言えばすむことでしょう。それなのに早稲田大学は小保方研究員だけでなく、同じ学部の博士論文にコピペがなかったかチェックすると発表しました。論文で大切なのは結果であり、論文の体裁ではないはずなのに、大学の権威や世間の評判を気にする早稲田大学、そして指導者としての責任を果たさない早稲田大学の教授達に私は失望しました。

 こうして自己保身に走った研究を主導する立場の教授や研究組織の責任者ですが、やはり神様は見ていました。まず、小保方研究員のSTA論文に不正が有ったとした理化学研究所の調査委員の責任者の石井俊輔氏の論文に小保方研究員の画像と同様の疑惑がある事が発覚し、調査委員を辞任することになったのです。しかし、それで騒動は終わらず、何との昨年ノーベル賞を受賞したあのES細胞の京大の山中伸弥教授の論文にも疑惑がある事が発覚し、山中教授が謝罪会見を開くことになってしました。

 何度も書いたように医学論文で大切なことは結果でしか有りません。画像や論文の体裁などの細かなミスのない医学論文なんてこの世に存在しないかも知れないくらいです。こんな事で若い研究者が萎縮してしまったり、研究の心の目的である新奇な事実の追求、研究、実験よりも論文の体裁を繕うことにエネルギー注ぐことになったら、それこそ日本、いや世界の損失になってします。

 小保方研究員のかつての指導者ハーバード大のチャールズ・バカンティ教授が来日し、講演で教え子である小保方研究員の論文につて単純なミスで、結果に疑いはないのだから、もう一度ハーバード大学へ戻り研究を続けるように話されたとのことですが、これが真の研究者、指導者の姿ではないでしょうか?

 日本の研究者、指導者とのあまりの落差に驚きました。ノーベル賞受賞者である野依良治博士が理事長を務める日本を代表的する研究機関、理化学研究所や歴史と権威を誇る早稲田大学が、30歳になったばかりの若い研究者小保方晴子氏をスケープゴートしてしまった事実は、これからの日本の発展に大きな痛手となる気がしてなりません。

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