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院長コラムで院長を知ろう!矯正歯科専門医 河合悟が思うこと。

天神ビッグバンの未来はゴーストタウン?院長コラム

2023/09/01 政治・経済

 つい先日まで、サンフランシスコの学校に通っている息子が夏休みで帰ってきていました。サンフランシスコの様子を聞くと、サンフランシスコはもうダメ、父さんが知ってるサンフランじゃなくなったと強く断言しました。どう言う事と詳しく聞いてみると、コロナが収束したにも関わらず街に人が戻らないため 、デパートやアパレルショップは言うに及ばずレストランも閉店してしまっていると言うのです。コロナウィルス感染拡大の時期ならいざ知らず、収束したのに何でそんなことに?の疑問に対して、コロナでオンラインでの業務が普通になり、全米一高いと言われるサンフランシスコに住む必要がなくなって街から遠くに引っ越してしまったと言うのです。サンフランシスコはテック産業の総本山とも言えるシリコンバレーも近く、最先端のテック企業で働く高収入の人が多く住んでいたので家賃も高かったのですが、コロナで働き方が変わったために、一気に街の雰囲気が変わってしまったようです。

 コロナウィルス感染拡大が続いていたときには、リモートワーク環境整備にデジタル機器やソフトが大量に必要とされテック企業は隆盛を極めていました。しかしコロナの収束と共にデジタル器機やソフトの需要も減りテック企業の業績は悪化し、大幅なリストラが行われたこともサンフランシスコから人がいなくなった事の原因の一つでしょう。

 それにしても、息子の言う「もうサンフランシスコはダメ」は、いくら何でも言い過ぎだろうと私も思っていた所、ネットニュースで「《ドラッグ蔓延も深刻化》被害額950ドルまでの窃盗は「軽犯罪」扱い…“万引き天国”サンフランシスコに広がるディストピアの闇」と言う記事を見つけました。そこには、「東京で言えば、銀座のような街一番の高級ショッピングエリア・ユニオンスクエアでビルの壁に立ちションベンしている」とか「おしゃれな高層オフィスビルが立ち並ぶエリア(東京で言うと、大手町のような場所)が、ほぼゴーストタウンのような状態」とか息子から聞いた話がそのまま書かれていたのです。

 それに加えて驚いたのは、コンビニ等での窃盗が白昼堂々と日常的に行われているというのです。その原因はカリフォルニア州では被害額950ドル(約13.5万円)以下の窃盗は「軽犯罪」扱いとなっている上に、サンフランシスコは前述のように家賃が高すぎて警察官の給料で暮らしていくのは大変な為に慢性的な警察官不足で、軽犯罪である少額の窃盗犯を警察は捕まえないのです。つまりは、コンビニやスーパー程度の盗みはおとがめなし、万引きをするか?しないか?は一重にその人の良心に任されていると言う、ある意味、微笑ましいと言うかポエムな街になっているわけです。

 そしてもう一つの大問題がドラッグの蔓延。これはコロナ以前から指摘されていましたが、コロナ禍において「フェンタニル」という500円程度で手に入る中毒性の高いドラッグが全米で広がり、サンフランでもホームレスのドラッグ中毒者が溢れて、それを見かけるのは日常茶飯事でもう誰も気にしていないと息子は言っていました。

 人気が無くなり、店舗が閉まり、窃盗とドラッグ中毒者が蔓延するサンフランシスコの街ですが、それでも最先端のテック産業の街ですから無人タクシーが走っていたり、無人の宅配ロボットが動き回っていたりして、何が何だか?摩訶不思議な街になっているというのが息子の現状認識でした。

 2021年の夏にニューヨークからサンフランシスコに転居して2年間、こんな街で暮らした息子がくだしたのが「もうサンフラシスコはダメ」という結論だったのです。私は偶然にもコロナ禍の前年2019年の院内研修旅行でスタッフと一緒にサンフランシスコを訪れていました。サンフランシスコの中心、ケーブルカーの終点近くのオンスクエアには人が溢れ、レストランの間には行列ができ、ブランドショップのウインドーはきらびやかに輝いていました。それがたった数年でゴーストタウンと化してしまうとは、本当に驚くべきことでした。

 20代の後半から矯正歯科の講習会や学会参加を言い訳に全米の多くの都市を訪れましたが、その中の一番好きな街がサンフランシスコ、そして2番目がニューオリンズと言っていたくらいステキな街だったのに、息子の言うようにもう元に戻ることはないかも知れないと思うと、本当に寂しく感じます。

 そんなサンフランシスコの惨状を聴きながら、自分が毎日仕事をしている天神の街を眺めると、今はそこら中にクレーンが立ち、天神ビッグバンで再開発の建設ラッシュ。空港が近いので航空法による高さ制限が厳しく超高層ビルは建てられませんが、それでも以前とは比べものにならない大型ビルが次々と出現する予定です。中国や経済発展著しい東南アジアに近い立地条件を活かした国家戦略特区となっている福岡市は、海外企業の進出も続いていますから、オフィス需要も今のところ増加しているようなので、それを当て込んでのオフィスビルの建設ラッシュなのでしょう。

 しかし、サンフランシスコのゴーストタウン化でも明らかなように、リモートワークの普及でオフィス需要は確実に減少しているはずです。東京に本社を構える大手企業ではフルタイムで出社を義務づけている方が少数派となっています。フルタイムの出社が必要なのは、リモートワークに必要なシステムの整備を行う余裕のない中小企業です。結局立派なビルに入居できるような企業からオフィスが必要なくなっていくのが現状です。将来的にオフィス需要が減少していく中で、本当にこの天神ビッグバンで増加するオフィスビルが満室になるのか?私は大いに疑問です。

 天神ビッグバンが完成した時一大オフィス街となるハズだった天神の中心地が、ゴーストタウンとなってしまうかもしれません。現在の再開発ビルは、低層階に店舗、高層階はオフィスあるいはホテルにするのが定番で画一的で、そこに人の暮らしはありません。遠くの住宅から人が街にやって来ると言う従来と変わらない発想で再開発が行われています。しかし、リモートワークとオンラインショッピングで人が街に出かけてくる必要が減っているのですから、発想を変えて人が街に暮らす再開発がこれからの再開発だと思うのです。つまりオフィスの代わりに住居を作り、街の中心部の住民を増やしていくのです。

 経済発展に伴って街が大きくなり、住居は郊外へ郊外へと広がって行きましたが、働き方や購買方法の変化に対応して、今後は住居を街の中心に移していく逆転の発想が必要だと思います。家賃の高騰を抑え、高所得者でなくても街の中心に暮らせるような政策が活気に溢れる街を維持していく秘訣でだと思えてなりません。そんな視点で現在の天神ビッグバンを見た時、ゴーストタンと化した天神の姿が頭をよぎってしまいました。

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