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院長コラムで院長を知ろう!矯正歯科専門医 河合悟が思うこと。

Tweed FoundationのMeeting参加して院長コラム

2010/11/06 

 10月22日からアリゾナ州ツーソンで開かれた Charles H.Tweed International Foundation for Orthodontic Research & Edcationの28th Biennial Meetingに参加してきました。Tweed International Foundationは、私が矯正治療で行っているTweed法を習得した矯正歯科医の集まりです。Tweed法は、Charles H.Tweed先生が考案した治療方法で現在行われているブラケットを用いたほぼ全ての矯正治療の方法の基礎となっている治療方法で、このTweed法を学ぶための講習会がTweed先生の診療室が有ったアリゾナ州ツーソンで行われています。初めて講習会が開かれたのが1941年で、それ以来Tweed先生亡き後も講習会を受けた先生達がそれを受け継ぎ年に2回開かれ、開催回数は100回を越え、受講者数も10,000名を越えています。

 私も大学病院に勤務していた1987年に妻と共に2週間の講習会に参加しました。それから2年に1回アメリカ各地で開かれるMeetingに1988年にワシントンD.C.で初めて参加し、その後アーカンソー州リトルロック、アリゾナ州ツーソン、ミズーリ州セントルイスと大学勤務時代は2年に1回開かれる度に欠かさず参加していました。しかし、大学勤務を辞めてからは、長期の休みを取ることは難しく、久しぶりに2006年にテキサス州サンアントニオでのMeeting参加し、そして今回のツーソンでのMeetingに参加しました。

 私がこのTweed Foundationを大切にしているのは、Tweed法が優れた治療法であることだけでなく、組織や講習会が全てボランティアによって運営されていることです。本来、医療に関する治療法は無償で公開するのが原則と言われていたにも関わらず、一般的に歯科領域の講習会は、矯正材料の拡販と営利を目的として歯科材料業者が講師を捜し高い講習会費用を取って行っています。これに対してTweed法の講習会は、講習会でTweed法を取得した矯正歯科医が、2週間という長い期間にも関わらず文字通り手弁当で講師を務め、受講者が支払う講習会費用は組織の運営費用に充てられます。講師の先生方は、矯正歯科医として活躍できているのはTweedの講習会のおかげと思う感謝の気持ち、そして少しでも恩返しがしたい、社会に貢献したいと言う気持ちからボランティアで講師をされているのです。私は講習会に参加した時にTweed Foundationのボランティアによる運営を知り、この事に感激すると共に私もその一員となりたいと強く思いました。

 Meetingに関しても大多数の矯正歯科勉強会は材料を販売したい歯科材料業者がお膳立てして開かれますが、Tweed Foundationの場合はMeetingも当然会員が全ての運営を行います。まあ言ってみれば、手作りの組織、講習会ですが、それだけにそこに集まる矯正歯科医の矯正歯科に対する思いは強く、そしてその人柄は優しさに溢れています。Meetingに参加すると、世界中から集まる矯正歯科医と会うと十分会話ができるとは言えない私にも、その誠実さ優しさが伝わり本当に心が安らぐ、楽しい時間を過ごすことができます。

 しかし、今回のツーソンでのMeetingでは、Tweed Foundationの置かれている厳しい現実を感じました。初めての講習会から70年後の現在でも講習会参加者は年間300名近くおり、その多くはアメリカ人です。それなのに今回のMeetingの参加者はたった94名で、日本からの10名やアジア、ヨーロッパ、南米からの参加者もいましたから、アメリカ人の参加者は50名程度ではなかったでしょうか。なぜ、毎年300名近くの受講者がいるのにMeetingの参加者がこんなに少ない、特にアメリカ人が少ない事をとても寂しく思いました。その原因はTweed法が患者さん一人一人に治療の度ごとに歯科医がワイヤーを曲げる必要があり、大変手間がかかると思われていることにあります。Tweed法を元に開発された様々な治療法はストレートワイヤーテクニックと呼ばれ、ブラケット自体が平均的な歯の厚みや傾きを調整するように作られており、矯正歯科医はこれまた平均的な大きさに作られたワイヤーを装着するだけで良く、一見手間がかからないように思えます。アメリカで矯正専門医の資格を得るのには、一定時間講習を受けることが義務づけられてから、短期間に沢山の講習時間を得ることができるTweedの講習会は大人気ですが、受講者の多くは、実際の治療はストレートワイヤーテクニックで行っているのが実状なのでしょう。そのために、Tweed法で治療した症例の模型や資料を展示し、お互いに評価し合うMeetingの参加者が少ないのです。

 日本では、手間のかかるTweed法で治療している矯正歯科医が少ないのは分かっていましたが、Tweed法発祥の地アメリカでもTweed法が少数派になってきている現実に大変寂しい思いをしました。忙しく、効率の追求を最優先する現代社会の中では、手間のかかるTweed法が、時代にマッチしていないと考えられるのも分かります。しかし、平均を元に作られた装置を患者さんに装着するだけで、本当に多くの人が満足できる治療結果を得ることができるでしょうか?平均を元に作られた既製服が、オーダーメイドの服と同じように、体にフィットしますか?私は、手間はかかりますがオーダーメイドでなければ、個人個人の体にフィットした服は作れないのではないかと思います。既製服は、オーダーメイドの代用でしかないのではないでしょうか?

 矯正治療に於いては、患者さん一人一人に合わせて矯正歯科医がワイヤーを曲げるTweed法は、いわばオーダーメードの矯正治療です。私は、より良い結果を得るためには、多少手間がかかってもオーダーメイドの矯正治療を行いたいと思い、Tweed法をずっと実践してきまし、これからも続けていこうと思っています。

 私に矯正歯科の基本的な治療法だけでなく、矯正歯科医としての心がまえを教えてくれたツーソンのTweed Foundationは、私にとって矯正歯科の故郷、聖地です。その矯正治療の故郷、聖地を守り、Tweed法が何時までも続くよう、恩返しの意味も含めてTweed Foundationに私なりにできるだけの事をしていきたいと、今回のMeetingに参加して改めて思いました。

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