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院長コラムで樋口矯正歯科クリニックの院長を知ろう!河合悟が思うこと。

矯正歯科の危機院長コラム

2016/06/01 医療・健康

先日テレビ局から矯正治療について取材の依頼が来ました。取材の内容を詳しく聞いてみると、最近、子供の矯正治療でトラブルが増えている言われているので、矯正治療のトラブルについて特集を組むとのことでした。そして私への依頼は、矯正治療のトラブルで転医して現在治療中の患者さんが居れば、その患者さんのインタビューをしたいので紹介して欲しいとのことでした。

 患者さんのインタビューも驚きましたが、矯正治療のトラブルが問題になりテレビ番組で取り上げられる迄になっているのにも大いに驚きました。確かに、トラブルになった患者さん紹介の依頼を受けた時、数人の患者さんの顔が私の脳裏に浮かびましたが社会問題になるほど矯正治療のトラブルが多いとは思っていませんでしたから。

 そしてテレビ局からの電話があった次の週、会議で東京に行った時に日本矯正歯科学会の理事でもある在京の大学の矯正歯科の教授の口からも矯正歯科のトラブルについて聞く事になりました。教授の話によれば、今歯科のトラブルで消費者庁に訴えが最も多いのは、矯正歯科に関するものだそうです。以前は、インプラントに関するものが圧倒的に多かったのですが、今ではそれを矯正歯科に関するトラブルが上回っているらしいのです。その為、消費者庁でも矯正歯科について関心も持ち、今後は日本矯正歯科学会に指導や勧告があるかも知れないとのことでした。

 悲しいことですが、医療に絶対、100%はありませんから、トラブルは付きものでしょうが、矯正歯科の治療が社会でそんなに大きなもんだになりつつあるとは、残念でなりません。

 矯正歯科医の集まりである日本矯正歯科学会では、もう30年近く前から認定医制度を作り、矯正歯科に従事する歯科医の知識技術の向上をはかってきたはずですが、それと逆行するように矯正歯科のトラブルは増え、社会の信用は低下の一途をたどると言う矛盾。その原因はどこにあったのでしょうか?

 その第一は、矯正治療に使われる道具や装置の開発、改良です。何でもそうですが、開発や改良の目的は、「より簡単」に、そして「誰にでもできる」とするのが普通です。矯正装置の開発もご多分に漏れず、より簡単に、誰にでもできると言われる装置が次々と開発されてきました。メーカーは矯正歯科の知識が乏しい一般の歯科医にでも矯正治療ができると思わせるような宣伝文句を並べ、どんどん材料を売り込もうとします。矯正歯科学会の認定医や専門医が講習会という名のメーカーの拡販セミナーの講師となり、一般歯科医に材料だけ手に入れれば、すぐにでも矯正治療ができるという幻想を抱かせてきたのです。その結果、今では矯正歯科で使われる材料の出荷額からの推測によると、日本で矯正治療を受けている患者さんの半数以上は矯正歯科の研修も受けていない、学会にも入っていない一般歯科の先生によって治療されてい事になったのです。

 そもそも、日本矯正歯科学会の認定医制度とはどんな制度なのでしょうか?認定医になるための最も基本的な条件は、歯科医になった後、基本研修機関(現在歯学部の矯正歯科の医局だけ)に2年間在籍する事です。大学での研修歴がないと認定には基本的なれません。何故大学での研修歴が重視されるかと言えば、認定医制度を作った日本矯正歯科学会が大学の先生方によって運営されているからでしょう。大学の先生の仕事は、研究、教育、臨床が3本柱と言われていますから、臨床ばかりしている開業医よりも臨床経験はずっと少ないはずですが、大学で研修しなければ認定医になれないと言うちょっと疑問を感じる制度になっています。

 おまけに矯正治療を受けている患者さんの半数以上は矯正歯科の研修も受けていない、学会にも入っていない一般歯科の先生によって治療されているのですから、今の認定制度ではどんなに素晴らしい研修制度を作っても、矯正歯科治療の質の底上げを行う事など出来るはずがありません。

 現在の認定制度は、結局、大学の矯正歯科で研修を受けた歯科医の既得権益を守る物でしかないのが現状です。ですから、試験制度もどんどんになり、本当に必要かと思うような重箱の隅をつつくような規定が増えるばかりです。その際たる物が学会誌に論文を書くことが必須なこと。患者さんの治療ができる事と学会誌に論文が書けることと何の関係があるのか疑問でなりません。

 ある大学の医局では、医局の若い先生が認定医を取得すると辞めて言ってしまうので、教授が中々論文を提出させない所もあるくらいです。認定医制度が患者さんためではなく、矯正歯科学会や大学の医局そして認定医を取得した歯科医のためにある事がよく分かります。

 そんな矯正歯科医の自己保身、権益確保のための閉鎖的な認定医や専門医の制度を30年近くもやって来たために、その制度枠の外で治療を行う一般の歯科医が増え、それに伴いトラブルも増えていったのが現状だと思います。矯正歯科治療が社会的信用を失いかけている現状をまねいたのは、実のところ矯正歯科治療の治療水準をリードするべき矯正学会やその認定医、専門医自身の責任に他なりません。

 この現状を打破するには、矯正歯科治療を行っている一般歯科の先生方に矯正歯科学会に参加してもらい、矯正歯科の知識技術を習得してもらう事しかありません。その為には一般歯科の先生方が学会に参加しようと思う様な仕組みが必要です。その為には開業している一般歯科の先生にも矯正歯科学会の認定医取得の道を開くしかありません。大学の医局の在籍歴や論文等という開業医に取って高いハードルを取り払い、矯正歯科学会が一般歯科医向けの認定取得のためのセミナーや講習会を開き、一般歯科医の認定医取得を促すしかありません。

 一般歯科医、矯正歯科認定に関わらず、矯正歯科診療を行うより多くの心ある歯科医が良質な矯正歯科治療を行えるように教育していく責務が矯正歯科学会にはあるはずです。矯正歯科学会や認定医、専門医が自己の権益を捨て、真に社会に貢献する矯正歯科医を目指すことが矯正歯科治療の社会的信用を取り戻す唯一の方法だと思います。

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