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院長コラムで院長を知ろう!矯正歯科専門医 河合悟が思うこと。

歯科用CT、やっぱり導入しません。院長コラム

2015/03/01 

 先日、初診の患者さんが持参されたレントゲン写真を見てビックリしました。つい最近市内の矯正歯科を初診で受診された時に無料で撮影されたレントゲンでしたが、それは何と歯科用CTのレントゲン画像だったのです。

 10年ほど前から歯科領域にもCTが導入され、時間の経過と共に価格も下がり、また、一昨年からは健康保険でも一部疾患で撮影可能になった事から、歯科用CTを導入する歯科医院が増えてきています。ですから、CTのレントゲン画像が珍しい訳ではありませんが、いきなり矯正歯科の初診で、それも無料でCT撮影とは、あまりに気軽なCT撮影、本当に驚きました。

 実は樋口矯正歯科クリニックでも一昨年、歯科用CTの導入を計画し、歯科用CTメーカーと売買契約を結び購入代金も支払い、矯正歯科専用CTの設計、試作を行っておりました。しかし、試作が思うように行かず、試作をくり返していたとき、偶然、ある知り合いの歯科医から慶応大学病院放射線科の医師近藤誠先生の”「余命3カ月」のウソ ”という本を紹介されたのです。近藤先生の著書は、現在の標準的なガン治療を否定する内容でそれについては賛否が別れるところですが、ガンの原因は遺伝子が障害されることであり、その原因として放射線の影響が大きい事と書かれており、この点については言を俟ちません。

 その時、私はハッと気づいたのです。クリニックに歯科用CTを導入すれば、「患者の医用被爆を増やすことになるのではないか」と。現在でもどうしても必要と思われる患者さんについては大学病院でCT撮影をしてもらい診断していますが、これがクリニックで直ぐに簡単に撮影できるとなれば、気になるところがあれば片っ端から気軽にCT撮影する事になるのではないか?いずれは、何かあったらいけないからと、全ての患者さんにCT撮影してしまうことにもなりかねない。「むやみなにCT撮影を行わないためにも大学病院まで行かないと撮影できないと言う位のハードルが有った方が良いのでは」と考えるようになったのです。

 振り返ってみれば、私自身2008年8月の院長のコラム「日本の医療を守るには」に人口当たりで見れば日本では世界のどこよりも多くのCTが存在し、医用放射線の被曝量も突出していると書いていたのに、すっかりその事を忘れたように歯科用CTの導入に前のめりになっていた自分が情けなくも思えました。

 そこで歯科用CTの被曝量について調べてみると2012年度のヨーロッパの「Cone beam CT for dental and maxillofacial radiology evidence-based guideline」に歯科用CTの実効線量を見つけることができました。成人相当の模型を使った実験では頭蓋部で81-216(平均135)マイクロSvとなっていて、通常のパントモ撮影(歯全体が写るレントゲン撮影)は2.7-24.3 、セファロ撮影(矯正歯科で撮る頭全体の規格撮影)は6以下となっていました。 このように歯科用CTの実効線量は、従来のレントゲン撮影に比べるとやはり被曝量が大きい事が分かります。そして同じ放射線量でも30歳を1とすると10歳以下では感受性が3倍となりますから、多くの子供が治療を受ける矯正歯科ではより一層の注意が必要です。それ故、ヨーロッパ歯科放射線学会のガイドラインでは、矯正分野でのCT撮影は、大きな撮影容積を使ったルーチンの撮影はすべきでなく、唇顎口蓋裂、埋伏歯、外科的矯正が適用される骨格的異常の大きな症例のみCT撮影が正当とされていました。

 このガイドラインに従えば樋口矯正歯科クリニックで歯科用CT使用頻度は非常に少なく、やはり樋口矯正歯科クリニックに歯科用CTを導入する必要はないとの結論に至り、CTメーカーと話し合いの上、購入契約を解除し、代金を返還してもらいました。最新の医療機器や詳細な検査が好きな日本人ですから、歯科用CTを導入すれば宣伝効果もあり、患者さん獲得には有効かも知れませんが、患者さんの健康を考えた時、私には現在の歯科用CTを導入することはできませんでした。

 しかし、医療機器の発達、改善は目覚ましく、より少ない照射線量で鮮明な画像を得るべく歯科用CTも改良が続けられていますから、被曝量が従来のレントゲン撮影よりも少ない歯科用CTが開発されるのもそう遠くはないように思います。それまでは、CT撮影が診断に必要不可欠な樋口矯正歯科クリニックの患者さんには、大学病院までご足労おかけする事にますが、放射線被曝被曝量低減のためと思いお許し願いたいと思います。

 樋口矯正歯科クリニックは、歯や歯並びだけでなく、患者さんの全身の健康、そして幸せな暮らしのお手伝ができることを目指します。

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