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院長コラムで院長を知ろう!矯正歯科専門医 河合悟が思うこと。

目指せ最低賃金2,000円院長コラム

2014/06/01 

新聞によれば、厚生労働省が30日発表した4月の有効求人倍率は1.08倍となり、17カ月連続で改善して、バブル言われている頃の1992年7月以来の高い水準になったと報じています。

 20数年前のバブル崩壊で企業業績は悪化し、企業は業績維持の為にリストラを断行、その結果求人倍率は下がり続けて、長い間有効求人倍率は1倍を下回ったままでした。この20数年間は、常に職を求める人の方が求人する企業よりも多い、企業にとって有利な買い手市場が続いていました。結果として、賃金は下がり続け、 年間賃金は10%以上下がってしまいました。 それが昨年からアベノミクスと震災の復興そして2020年の東京オリンピック開催の為の建設需要などで景気が上向き求人が増えたことと高齢化の進行で 生産年齢(15~64歳)人口が減少した事が相まって、反対に人手不足に転じました。特に労働条件が厳しい飲食業や建設業では、賃上げにも関わらず人出が集まらず、店舗の閉鎖や営業時間の短縮、工事の延期や中止など人手不足による企業の活動への影響も叫ばれるくらいに、その変化は急激です。

 これで労働者の雇用環境が一転し、労働者の売り手市場となり賃金の上昇が続けばデフレも脱却出来、景気も上昇していくことが理想のシナリオですが、この理想のシナリオの実現は、デフレと低賃金を前提にして成立している企業経営の経営者が賃金上昇を受け入れる覚悟があるのかに掛かっています。

 先日、私が小学校低学年の頃から治療していた患者さんが7年ぶりに受診してくれました。7年前は大学を卒業したものの就職が決まらずフリーターをしながら、就職活動に励んでいる時でした。当時私は彼に何度失敗してもあきらめずチャレンジすることが大切だと何時も励ましていました。そして苦労の末、何とか非正規雇用でしたが就職することができ、就職したことで忙しくなり通院が遠のいて、気がつけばあっという間に7年間が過ぎていました。7年ぶりに会った私の第一声は、まだ同じ職場で働いているかでした。非正規雇用での就職だったので、厳しい労働環境に負けず同じ職場で働いているのかが心配でならなかったのです。しかし、その心配は杞憂でした。真面目な彼は、同じ職場で7年間働き続けていました。それを聞いてホッとしましたが、その次の彼の言葉に私は言葉を失うくらいに驚き、そして怒りが湧いてきました。何と彼は、7年間同じ職場できちんと働いていたにも関わらず、未だに非正規雇用だったのです。

 彼の会社はコンビニエンスストアの棚卸しを専門にしており、大手Fコンビニの関連子会社です。彼の仕事は、数人でFマート店舗に赴き半日から1日かけて店の棚卸しを行うことで、遠方の店舗の場合には早朝から出かける必要があり勤務時間も長時間にわたります。同じ業務に7年間従事していますからその業務に精通し、今では彼よりも長くその業務に携わっている人はいないとのことでした。それでも正規雇用にはなれないのです。もう彼も30才、家庭を持ち、家族を養ってもよい年齢ですが、非正規雇用では将来が見通せませんから家庭を持つ何て、考えも及ばない様子でした。
これがデフレ社会の現状です。

景気が少し良くなり雇用情勢が改善したと言っても、低賃金の非正規労働者がいてこそ成り立っているのが今の社会です。低価格で店舗を拡大し 日本国内店舗数最多の牛丼チェーン店「すき家」は、低価格実現の為、何と「ワンオペ」と呼ばれるアルバイト店員一人でお店を営業させることで低価格を実現させ収益を上げているのです。その労働環境の厳しさから人手不足の影響をもろに受け、休業に追い込まれる店舗も多数、今後はどうやって運営していくのか、次の一手が見物です。

 私たちの周りを見回せば、非正規雇用のパート、アルバイトなしでは業務を遂行出来ない企業がどれだけ多いかよく分かります。飲食や物販の業種では、従業員の主力はパートやアルバイトというお店が大半です。そうして人件費を切り詰めて実現したのが低価格、働く人の犠牲の上に成り立つ低価格です。物価が下がるデフレですが、電化製品や車などの品物は世界中で流通していますから、国によって大きな違いは無いはずです。それなのに世界中で日本だけがデフレなのは、流通することができない飲食や物販などのサービス業の値段の低下によるデフレだからです。

 例えばプレナスが展開する定食チェーン「やよい軒」、日本では鯖の塩焼き定食は税込み590円が、シンガポールでは約950円で5割以上高いのです。食材の調達コストや家賃等は大きく変わりませんから、そのほとんどは人件費の違い、さみしい話ですがシンガポールよりも日本の方が人件費が安いと考えるしかありません。

 昨年、日本に訪れた外国人観光客が1,000万人を超えましたが、それが実現出来たのは実は日本の物価安。日本の食べ物は安くておいしい、そしておもてなしの心でサービス満点と大評判です。つまりはパート、アルバイトが支える観光立国日本、それが現実です。

 労働者の犠牲の上で何とか生き延びてきた日本経済ですが、そのしわ寄せはどこに行ったのでしょうか?一番影響を受けたのは出生率の減少でしょう。結婚、出産年齢の若者の雇用不安から、出生率は減少し、それが20年近く続いてきたことでついには生産人口が減少に転じて、いよいよ日本経済は転落の淵にたたされているのが現実です。アベノミクスによる景気回復は、実は線香花火が散る前の最後の爆発かも知れません。

 今、日本の未来の為に本当に必要なのは、目先の景気回復の為の公共事業の増加や金融緩和による小手先の景気の刺激ではありません。本当に必要なのは低賃金で働かされている若者達が安心して家庭を持ち子供を育てる事が出来る社会の実現です。その為に国は補助金で保育所を増やすと行ったチマチマした政策ではなく、もっと思い切った政策を行う必要があります。民主党政権では子ども手当で国民に直接お金を支給するという大胆な政策を実行しようとしましたが、財政に余裕がなく中途半端な金額の支給だった為に国民の支持を得られず頓挫しました。(子ども手当に対する私の考え

 そこで私が提案するのは、最低賃金の大幅な増額です。先月スイス議会で最低時給2,000が提案され、残念ながら否決されましたが、これを日本で行うのです。最低時給2,000円が無理なら、公務員の初任給を最低賃金にするのです。国民の税金から禄を食む公務員の初任給が基本ですから誰も文句を言えないでしょう。最低賃金を上げても財政には影響はないので財務省も文句を言う理由がありません。目指すところは、労働者を低賃金で働かせることで高収益をあげ過去最高の内部保留をため込んだ企業から、労働者に収益を還元させることです。最低賃金が上昇すれば当然物価も上がりもデフレ解消し良い事ずくめです。政治家は景気を回復させて賃金が上昇するのを待つつもりでしょうが、逆に最低賃金を上げることでデフレの解消、目指すのです。それを可能sにするだけのお金を日本の企業は内部保留としてため込んでいます。設備投資でなく人材に企業の投資を振り向けるのです。

 安倍首相も集団的自衛権で中国の侵略から日本を守ろうと主張していますが、人口減少で日本人がいなくなってしまっては、元も子もありません。今、首相として第一に為すべき事は、日本の未来を支える子供を育ててくれる若者達を経済的に豊にすることだと思います。

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