ご予約・お問い合わせ電話番号、0120-053-653

院長コラムで院長を知ろう!矯正歯科専門医 河合悟が思うこと。

技術革新と品質向上院長コラム

2013/06/01 

 先日参加した舌側(裏側)矯正の講演会で矯正歯科治療も新たな段階へ突入した気がしました。講演会で紹介された矯正装置はCAD/CAMを用いて、三次元計測器でコンピューターに個々の患者さんの歯を再現し、患者さん毎にブラケットを設計し、三次元プリンターでブラケット作製すると言うシステムでした。おまけに最終的な歯並びに合わせてワイヤーも機械で曲げ、それを装着すれば自然と歯が並ぶ、話だけ聞けば歯科医にとっては夢の様な話と言えなくはありません。

コンピューター技術を応用し、人が行う作業を減らし、できるだけ簡単に一定水準の結果を得る、これが現代の技術革新ですから、矯正治療の現場にもいよいよコンピュータによる技術革命が到来したのかも知れません。

 その技術革新が術者(歯科医)が楽になるだけでなく、治療の結果を向上させ、そして患者さんの負担を減らす物であれば言う事はありませんし、私としても自分の診療の中に取り入れていく事が必要であると思います。

 しかし、そんなうまい話はなく、講師が示した症例は私が学んできた矯正歯科の基準では、とても矯正治療のゴールに達しているとは言いがたい症例ばかりでした。確かに歯の凸凹は改善していますが、上下の歯がきちんと咬み合っているとは言えなかったり、前歯が前方に位置している為に唇を自然に閉じることができなかったりと長期の安定性や顔貌のバランスに大いに問題があると思いました。

 その上、私が講師の症例以上に驚いたのは、こんな未熟でいい加減な講師に治療の内容について真面目に質問する受講者がいたことです。質問に対する講師の答えも当然いい加減で、的確な答えとは言いがたい物ばかりでしたが、それよりも受講者がこの講師の症例をいい加減と思っていないと言うことの方がとても衝撃でした。

 そこにいた受講者の大半は、私よりも若く矯正治療の経験が豊富とは言えないでしょうが、それでも矯正治療のゴール、基準を知ってが当然だと思っていました。これは何を意味するのか?色々考えてみた結果、私の結論は講師や受講者の考える矯正治療のゴールと私が思う矯正歯科の治療ゴールが違うと言う事でした。私が当たり前だと思っていたことがいつの間にか当たり前ではなくなり、新たな矯正治療のゴール、基準が一般的になっていたのではないか?いつの間にか私が時代遅れになってしまっていたのかも知れないと思わざる得なかったのです。

 その理由は、矯正歯科医を育てる大学の矯正歯科の医局の体質の変化だと思います。大学の教員の仕事は「臨床、教育、研究」の3本柱と言われますが、矯正歯科臨床の基礎を習得する場所であるはずの大学の矯正歯科の治療が基本に忠実にと言うよりは、技術革新がもたらした「簡単でそこそこの治療結果を得る」という治療方法を採用するようになってきました。その上、研究重視の風潮で医局に臨床に熱意を持った経験豊富な矯正歯科医が減り、大学の医局で本当の矯正歯科治療の基礎を学ぶことが難しくなってきてるのです。

 そして従来重要とされてきた基礎的な教育が軽視されてきたことでいつの間にか「そこそこの治療結果」が「最良の治療結果」と誤解され、それが新しい矯正治療の治療基準となっていってしまったのです。そして多くの若い矯正歯科医がこの新しい治療基準で教育されていくことで、それが一般的な治療基準となっているのでしょう。結局、技術革新は品質の向上、治療結果の向上にな繋がらなかったのです。

 そんなバカなと思われるかも知れませんが、そうした例は沢山あります。昔、家を建てるとなれば、現場で大工さんが材木を切り、切り口を加工して柱をくみ、板を張り家を作り上げていました。大工さんなら「のこぎり」や「かんな」や「のみ」を使って木材を加工できるの当たり前でしたが、今はどうでしょう?プレカットされた柱や板を金槌も使わず、釘打機で打ち付けていくだけ、いつの間にか電動工具が幅をきかせ、大工の三種の神器であるはずの「のこぎり」、「かんな」、「のみ」もまともに使えない大工さんも多くなってきています。これが技術革新なのかどうかは分かりませんが、現実に起きている変化です。

 一軒一軒顧客の注文に応じて大工さんが手作りする注文住宅とパターン化されプレカットで作られる企画住宅とどちらが高品質で顧客満足高いのかは言うに及びませんが、いつの間にか主流は企画住宅となってしまっています。技術革新が品質や顧客満足度を向上させてはいませんが、従来からの家の建て方を変えてしまったのは確かです。

 矯正歯科における技術革新も治療する側つまり歯科医は楽になるでしょうが、治療結果や患者満足度を向上させているとは思えません。しかし、いつの間にか多くの矯正歯科医が「簡単にそこそこの結果を得る」と言う方向に進み、それが主流となりつつあります。その結果、矯正治療の治療目標が「そこそこの結果」となっていくのは当然です。「簡単でそこそこの治療結果を得る」ことが、良いか悪いかは分かりませんが、矯正歯科は新たな段階へ一歩進んでしまい、もう元に戻ることはできなくなっているようです。

 しかし、私としては、今までやってきた様に手間がかかっても「最良の結果」を求める矯正治療を続けていきたいと思います。時代遅れと言われようが自分自身の信じる道を突き進むつもりです。どちらが正しいのか?どちらが良いのか?それは神のみぞ知る事でしょうし、どちらを選ぶのかは患者さん自身が決めることでしょう。

 矯正歯科の未来が心配ですし、寂しくも思いますが、私としては、自分の矯正治療に対する考えを出来る限り詳しく患者さんに伝え、最善の矯正治療を行う事しか出来ません。どんなに技術革新が行われようとも、これからも基本に忠実に自分の信念に従い、私の信じる矯正治療を行っていこうと改めてて思っています。 

おすすめ記事RECOMMEND

  • 院長ブログ
  • スタッフブログ

ページの先頭へ