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院長コラムで院長を知ろう!矯正歯科専門医 河合悟が思うこと。

デフレ克服のカギ院長コラム

2013/04/01 

 新年度を迎え、社会人としての第一歩を踏み出した真新しいスーツに身を包み希望に満ちた笑顔で街を颯爽と闊歩する若者の姿が目立ちます。

 その影で、順調に社会人としての第一歩を踏み出すことが出来なかった学生も沢山います。昨年度の統計では、大学生約55万9000人のうち、就職したのは64%の約35万7000人、そのうち、正社員などの正規雇用に就いた人は約33万5000人です。残る2万2000人が契約などの非正規雇用で、これに、アルバイトなどの「一時的な仕事」に就いた1万9596人、「進学も就職もしていない」8万6638人を加えた約12万8200人余りが「安定した仕事」に就いていないことになります。つまり大学卒業者の約23%にもあたる大変な数の若者が社会への第一歩を踏み出すときに希に燃えるどころか、不安にさいなまれながらも社会に押し出されているのです。

 多くの大卒者が正規雇用に就けないのは、大学進学率が1990年度から2011年度の20年ほどの間に約25%から50%超えと2倍になり、進学者も10万人以上増えているのが大きな原因とされています。

 しかし、それ以上に若者の就職難の大きな原因は、社会構造の変化とも言える雇用形態の大きな変化です。バブル崩壊後の1990年以降企業は業績の伸び悩みで業績が軒並み悪化、それを補うために経費節減にまい進しました。従業員の雇用も聖域とはされず、リストラと新規採用抑制で正規雇用者を減らし、行動コストの低い非正規雇用者を増やしてきたのです。長期に渡るデフレ、不況で正規雇用者を多く抱えていた製造業は疲弊、衰退し、日本が「ものづくり」、製造業中心の社会から金融、医療等のサービス業を主体とした社会へと産業構造が変化してきたことも雇用形態にも大きな影響を及ぼしました。

 私が大学生だったのは、1980年代前半ですがその当時の大学生もアルバイトに精を出していましたが、どこの職場でも正規の職員がいて、あくまでもアルバイトは補助であり、その数も当然正規職員が多いのが当たり前でした。それがいつの間にか、多くの職場で少数の正規職員が多くのアルバイトやパートの非正規労働者を使っているのが当たり前になってしまいました。いつも行っているレストラン、買い物に行くお店、果ては子供を預ける保育所までが非正規労働者ばかりで運営されているのにいつの間にか違和感を感じなくなっています。

 これが今の社会の現状です。確実に「安定した仕事」である正規雇用、正社員の数は減り続けています。そして、この雇用形態の変化は若者の就職率だけにとどまらず、日本の未来、日本の社会の安定に大きな影響を及ぼします。

 非正規労働者は、正規労働者に比べて賃金が低く、おまけに年令の増加に伴う賃金の増加がきわめて難しいことにより生活の安定や、将来への希望が持ちにくくなります。そして、結婚して家族を持ち子供を育てることが難しいと感じる若者が増加してしまいます。結果として少子化が進行し、日本の活力は低下していきます。

 デフレの克服が日本経済復活のカギと言われていますが、デフレとは需要と供給のバランスが崩れ、供給にたして需要が不足して、モノ余りでモノの値段が下がることにほかなりません。ですから、デフレの克服には、需要を増やすか供給を減らすしか方法はないはずです。供給を減らすということは縮小均衡を計ることですから、社会は沈滞していくことになり好ましいとは思えません。ですから、できれば需要を増やすようにしたいものですが、それが難しいことはバブル崩壊以来20数年の日本の状況をみれば明らかです。その間需要を喚起するため、政府は公共事業等の財政支出をどれだけ行ってきたことでしょうか。それでも一向にデフレは収まりませんでした。公共事業中心の自民党政治に嫌気がさした国民は、「コンクリートから人へ」の民主党のスローガンを信じて民主党に政権を託しましたが、未熟さゆえの不手際続出で「コンクリートから人へ」予算が移ることなく、あえなく政権は再交代となりました。

 再び登場した自民党政権はアベノミクスと言う調子の良いスローガンで円安、株高を演出し、景気が上向くと吹聴しまくりですが、一時の円安や株高で本当に需給バランスが調整されデフレが克服できるのでしょうか?私にはそれが信じられません。

 需要を増やす最も効果的な方法は、人口の増加です。つまり子供を増やすことが最も効果的で、根本的なデフレ対策です。ですから若者が安心して家庭を持ち子育てができる社会を実現することがデフレ対策、そして日本の明るい未来に重要なのです。望ましいのは昔のように正規雇用者を増やすことでしょうが、社会構造が変化してしまった現在ではそれは非常に困難です。

 そこで、次善の策として非正規雇用でも安心して子育てができる社会を目指すのが重要です。民主党は失敗しましたが「子供手当」のように、子供を育てるのに必要とする費用を社会が負担することで、せめて子育ての費用だけは親の雇用、所得のいかんに関わらず支給されるシステムを築くのです。

 政権に復帰した自民党は以前のように公共事業を増やし不必要な道路や新幹線を再び作ろうとしています。人口減で使う人がいないインフラを整備しても無駄なだけですし、公共事業による雇用の創出という意味でも以前のようにいかない現実があります。震災復興で東北地方では建設業に従事する労働者が不足し賃金の上昇が続いているとのことですが、それでも若者は建設現場で働こうとはしないのです。公共事業を増やしたところで、かつての様に失業率が改善する状況にはないのです。

 ですから、公共事業に財政を投入するよりも子育て世代に直接お金を支給する方法を考える方が、より根本的なデフレ対策、不況対になるはずです。直接お金を渡すと言うと、直ぐに生活保護費の不正受給の様な問題を指摘されますが、それなら子供の衣料バウチャー、教育(塾)バウチャー、等々、子育てに必要とされるバウチャーを支給すれば良いでしょう。それでも不正使用による無駄は完全には防げませんが、公共事業だって贈収賄に不正入札等、無駄だらけですから、効果を考えれば公共事業よりも安心の子育てに財政を支出すべきでしょう。

 今まで何度もこのコラムで日本の未来のために社会全体が子育てを応援する必要があると書いてきましたが(子ども手当はそんなに悪い?日本の活力ある未来のための秘策「子ども手当」は高いか?)、現実は子育てが難しい社会にどんどん進んでいっているように思えてなりません。アベノミクスで目先の景気の向上に目を奪われることなく、今年新しく社会人となった若者が安心して家族が持てる社会を実現するために今なすべきことは何かを政治家も国民一人一人も真剣に考える必要があると思います。

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